第41話 種族間っていう感覚
各種族の
まずオーク達に、といってもオークはまだペイトン一家しかいないので、いつものように俺やゴブリン達がいる穴倉に来たタイミングで聞いてみただけなのだが。
「ペイトン、オークは苦手とする種族とか嫌悪してる種族、敵対してる種族とかはいないの? アラクネとハーピーみたいな。そういうのがあるなら教えてほしいんだけど」
ペイトンや、その話を隣で聞いていたパメラ、ペトラも少し考えている。パッと出てこないという事はあまり思い浮かぶ相手がいないという事なのだろうか?
「我々オークはゴブリンと共生する事があるくらいで、他の種族にはどちらかといえば無関心ですね。揉め事の種になりやすいですし、その他の種族とは関わりを持たない、というのが我らの常識です」
「そうなの?」
パメラやペトラに視線を向けて聞いてみると、彼女達も即座に頷いて俺に言葉を返してくる。最初に話してきたのはペトラだ。
「はい、私はここに来るまで殆ど山菜や薬草を採る為に山へ行くだけでしたが、ゴブリンさん以外の他の種族といえば行商をしていた亜人を見たくらいです。なので、ここにいると他の種族と話す事ばかりなので、緊張するときもありますよ」
「私も夫に付き添い、他のオーク達の村に行くくらいでしたから、殆ど会った事はありません。一度小さい時にオーガの一団に会ったくらいでしょうか? あの時は幼心に少し怖かった記憶があります」とパメラも続けた。
うーん? じゃあ今のこの拠点ってかなり異常なんじゃないの? 既にかなりの種族が集まっているし、例外はあるけど基本仲も悪くない。敗戦後で緊急時だし、それでなのかな?
「それだと、前の戦争とかどうしてたの? 殆ど協力もできないんじゃ……」
ペイトンが頷いている。
「ええ、というより種族によっては好き放題やりたいようにやり、戦いたいように戦うといった感じですよ。魔族にも種族全体で血の気の多いような戦闘民族はいますし。まぁそういった者達はかなりの数を先の戦で亡くしていると思いますが」
なるほど、協力的な種族もそうじゃない種族も、ごっちゃになった連合軍で戦ってるみたいな物だったのか、先の戦争は。
統率もとれず、どうしようもなくなった後始末を魔王がつけたって感じとか? もしそうだとしたら大変だなぁ魔王。今度魔王が来たら、顔怖いなんて思わずに労ってやろう。
よし、他の種族にも同じ事を聞きに行ってみるか。
「そっか、ありがとう。参考にさせてもらうよ。役立てられるかはわからないけど」
「ええ、それでは私とペトラはこれから土を見てきます。パメラはアラクネのレリーア殿のところへ行き、やってみたい事があるそうなので……」
そうなのか、やってみたい事というのも気にはなるが、オーク一家にはかなりの負担を強いている気もするな。
「いつも色々やらせちゃってごめんね三人共。なんか労いたいけど、特に思い浮かばないや。何かない?」
「特には……、あっ! ホリ様、それなら私は槍がいいです!」
う、それまだ諦めてなかったのか。ペイトンが槍持ってたら今度はゼルシュとベルが欲しがるのが目に見えてる。それは諦めてもらおう。せめて砥石やそれに代わる代替品が見つかるまでは……。
それを伝えたら、あからさまに落ち込むペイトン。何故そんなにも欲しがるのか? 今の槍もかなりいい品の筈なんだが……。
「私はそうですね、ホリ様さえよければなんですが……」とパメラが切り出してきた。何だろう? あまりお酒以外で彼女が主張する事は少ない気がする。大工仕事は何故かやる気に満ち溢れているけど。
「大浴場を作ってもらえたら嬉しいです、今は各種族毎で別れて入る事が主ですが、一緒に入れたら結果的には燃料の心配も減ると思うんです」
「そうだね。ケンタウロスさん達はどうしても入れない事が多いみたいだし、私達がお風呂に入る時にウォックさんが『出来ればでいいんだが、お湯で体を流してくれないだろうか?』って頼みにくるもんね」
ああ、裸の付き合いっていう奴か……。ペトラがやったアナスタシアの物真似が少し似ててつい笑ってしまった。
「そうだな、一度検討してみようか? 大浴場を男女で分けて作っておいて、問題は燃料なんだよな、魔法でお湯を沸かせられないかな? 火の魔法でボワワって」
魔法に一番詳しいシーの方を向いてみると、彼は首を軽く振っている。やはり難しいのか? アリヤがシーの言葉を代弁してくれる。
「今イル種族ニ、火ノ魔法ニ長ケテイルノガ、イナイカラ難シイミタイデス!」
それを聞き、パメラとペトラが続けてくる。
「可能性があるならアラクネ達かと。魔法に関して言えば魔族の中でも指折りの種族ですから」
「でもお母さん、トレニィアが前に『火は……、糸が燃える……。嫌い』って言ってたよ? アラクネでもいないんじゃないかなぁ?」
トレニィアの物真似もできるんだな。というかペトラはトレニィアと仲良いんだな、パメラとスライム君に料理を教わってるから、それで会話する事も多いのかな。
「一度ラヴィーニア辺りに聞いてみるか。正直言うと衛生的な面でも風呂に恒常的に入れるのは絶対プラスになると思うし、種族間で仲良くなれる手段になるならこれ程ありがたいものはないよね」
「ええ、ですので一度ご検討お願いしますね。楽しみにしてます」
「ホリ様! 私も! 作る際は絶対手伝いますよ!」
ペトラの元気な声にゴブリン達も元気に合わせてきた。検討から作る事が確定になってきてないか……? 確かに肉体労働が主な仕事になるここじゃあ、風呂みたいに体を休める事が出来る場所は必須だと思うし、近々大きいのを作るか。お湯問題はまだ残っているけど。
その後、俺は皆と別れそのままト・ルースの所へ行き話を聞かせてもらう事にした。
久々にリザードマン達の住居に来たけど、やはりここは涼しい、むしろ寒い。俺はそのまま手前のト・ルースの部屋へ顔を覗かせた。
「やあト・ルース。お邪魔させてもらってもいいかい? ちょっと話を聞きたいんだけど」
「おお、ホリ殿。どうぞどうぞ、あたしも今暇しとったところですわ。今リザードマンの村名物の魚茶を出しましょう」なんだそのやばそうな代物は。
「いや、水でいいよ水で」
「そうですかい? じゃあ水にしときましょうかね。ヒッヒッヒ」
魔女かよ。そういえば、以前に頼まれた杖も大事に使ってくれてるみたいだ。少し作るのに苦労したから嬉しい。
さてと、本題を聞いてみよう。彼女なら色々な種族の事にも詳しそうだけど、何か知っている事があれば教えておいてもらってもいいな。
「実はさ、各種族の対立っていうのかな。そういう諍いがこれから起きやすくなると思うから、嫌いな種族がいるか聞いてみたくて来たんだ」
「ヒッヒ、アラクネとハーピーの娘っ子達がやりあってたみたいでしたからねぇ。生活圏が同じになりやすい他種族は、仲がええという話はあまり聞きません。どうしても奪い合いのような事になりますしねぇ」
大体ここに来た理由も察してくれている。ありがたい。
「リザードマン達にもそういう相手がいるのかな?」
ト・ルースは水を俺に差し出しながら、自分も一口水を飲んだ後に話を続ける。
「ええ、ええ。あたしらリザードマン、殊更リザードマンのメスには、ラミアっちゅう種族が嫌悪されとりますね。
うん? 彼女にしては何か、随分と歯切れの悪い言い方だな……。何か理由でもあるのかな?
「どうしたの? 他に何か理由あるのかな?」
彼女は少し顎の辺りを爪で掻くようにしている。
「ちょっと種族の恥を晒すような、お恥ずかしい話なんですがねぇ。ラミアっちゅうんは、メスしかおらんのです。それも年重ねてもあまり老けないバケモノですわ。奴らは他種族のオス、特に人族、亜人、リザードマンから種を取るんですわ。うちの族からも一時期被害が出たりしましてねぇ」
その時、通路の方から大きな声がして部屋に入ってくる。ロ・リューシィが俺達の話を聞いていたみたいだ。
「ホリ! ラミアの事を聞きたいの!? ダメよあんな奴らの話をしたら! 沸いて出てくるわよ!」
そんな虫じゃないんだからさ……。随分な言い草だが、何かあったのだろうか?
「ヒッヒ、リューシィ? 盗み聞きとは関心しないねぇ。ホリ様すいませんね、この子の想い人が以前ラミアに連れて行かれそうになったのを根に持ってるんですよ」
「ち、ちがわい!! そんなの関係ないわい!! おばあちゃんやめてよ!!」
おっと、これは中々遊び甲斐のある話ではないか。俺は多少表情がにやついてしまっているのが自分でもわかったが、彼女にシンプルに聞いてみた。
「へえー? 違うのぉー?」
リューシィは俺に威嚇音を出しながら、牙を剥き出しにしてきた。
「あいつらは他種族を攫うから! それで! それで嫌いなの! 好きな奴とか関係ないから! わかった!?」
関係ないからね! とドシドシと音を出す勢いで部屋から出ていったリューシィ。何しにきたんだあいつは。
ト・ルースは大きく笑っている。
「ヒッヒッヒ、ホリ殿。リューシィをいじめんでくだされ。あの子も長い事恋慕の情を抱いておりますから、見守ってやってくださいな」
そういえば酒の席で、ト・ルースは子供を戦いで死なせ、同じ様に両親を亡くした彼女を孫のように思っていると言っていたな。あまり意地悪すると怒られそうだ。
「フフフ、わかったよ。俺の国にも人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死ぬって言葉があるし、頭の片隅にしまっておくよ」
「ヒッヒ、感謝しますよ。そういう訳で、あたしらにはラミアの印象が兎角悪いっちゅう事だけ覚えててください。ただ、もしラミアがここに来ても極力問題を起こさないようにさせますわい。この頼りない老骨でも、役立ちたいですからねぇ」
「ありがとうト・ルース。いつも貴方を始め、リザードマン達にお世話になってるから、これ以上面倒をかけたくないんだけど」
俺は彼女に頭を下げる。これから先ラミアが来ることもあるだろう、問題が起きる事もあるだろうが、それでも善処してくれると言ってくれる彼女には何度お礼を言っても言い足りないくらいだ。
ト・ルースは俺に頭を上げるように言いながら、注意を促してきた。
「ラミアの連中は薬学や催眠の力に長けとります。記憶を消したり、操ったり、人格を壊したりして自分らの都合にええようにしてしまう事もありますで、ホリ殿も注意してくだされ」
リューシィの想い人もその時の事をまるで覚えておりませんしね。と彼女は教えてくれた。というか人格破壊まで出来るって怖すぎるでしょ……?
ト・ルースはヒッヒと少し笑った後に、口を開いた。
「それと注意ついでに言えば、オーガ達ですかねぇ」
「オーガ?」
そういえば、さっきパメラが子供の時に見て怖かったっていってたな。
「鬼の一族なんですがね。なんちゅうか、大多数が戦闘狂の戦闘民族なんですわ。血の気の多い連中ばかりで種族としてもあんまり好かれておりませんねぇ。ただその中でも例外の部族がいて、姫巫女の一族っちゅう連中はマトモな頭してるらしいですわい」
「そうなんだ? なら話を聞いてはもらえそうだね。その部族の人には」
戦闘民族とか言うから、オラワクワクしてきたぞ! とかシュインシュインと効果音上げながら戦う人たちが頭に浮かんできてた。
「ええ、ええ。ただその部族は滅多に姿を見せません。どちらにしても、オーガを見かけたら警戒と逃亡を優先した方がええですよ。奴らは力だけなら魔族でも有数ですしねぇ。頭が伴ってないからタチが悪いんですわ」
確かに俺は弱いから、そんな連中に絡まれたら酷い目に遭うのは目に見えてるな。もしそれらしい者達を見かけても、警戒して逃げておいた方がよさそうだ。
「ありがとうト・ルース、参考にさせてもらうよ。時間取らせて悪かったね」
「ええんですよ。年寄りは暇しておりますから、こんな話なら何時でもして差し上げますよ。ヒッヒ」
そのまま、話を切り上げて次へ向かう。
最後に魚茶というのを振る舞われそうになったが、なんとか回避はできた。
そのままの流れで、リザードマン達の住居から程近いハーピー達の巣に行き、話を聞いてみた。
イェルムはまだ羽毛布団の魔力にルゥシアと共にハマっているようで、俺の応対をしてくれたのは健康飲料早飲み勝負をした時の緑髪のハーピー、エンツォと呼ばれる女性だった。彼女に話を聞いてみたがアラクネ以外にそういった敵対種族はいないらしい。
ただ、ここでもやはりオーガの事が話に出る。
「アイツラはとにかくうるさいんです。声がでかいし、物は壊すし! ホリさんも見かけたら石ぶつけて逃げてやればいいですよ!」
「いやそれ揉めるし、捕まったら俺死んじゃうでしょ……」
ハーピー達にもかなり嫌われているようだ。
「エンツォさん、オーガに何か嫌な事でもされたの?」
「私が捕まえて、木に刺しておいた獲物を木ごと燃やして食べられました! 許せませんよね!」
彼女は怒りそのままに両腕の翼をバサバサとはためかせている。食べ物の恨みか、根に持つだろうなそれは。
俺も会社の冷蔵庫に、自分用に買っておいたお高いプリンをお局様に食われた事をいまだに許していないし。名札まで貼っておいたのに。
「わかる、いざ食べようと少しワクワクしていたところにその食料がなくなっている絶望感といったらもうね……」
「でしょう!? あいつらなんて大嫌いです! 仲良くしたい種族なんていませんよ!」
あら、そこまで言っちゃうのか。ううーん、もし仮に仲間になってもかなり揉めそうだな。悩ましい。
エンツォを
ここの家屋こんなにデカかったっけ? 厩舎のようになってはいるが、それぞれが個室のようにされていて、中でもアナスタシアの部屋は一番奥の一番大きい部屋。更には剣やタペストリーが壁に……。何だこのハンティングトロフィーは! どこの貴族の館だ!?
「ターシャ、今いいかな?」
「おお、ホリか。いいぞ。丁度槍の手入れも終わったところだしな」
彼女は俺があげた槍を砥ぐように、短刀のような物で穂先を磨いていた。摩耗は大丈夫なのだろうか? 硬いぞ? 鉱石。
「ん? どうした?」
出来を確かめるように確認をして、槍を立て掛けた彼女は、俺の方を振り返りそう聞いてきた。いかん、鉱石槍に気を取られていた。
というかアナスタシアの私服姿はレアだな。前に風呂上りを見た時も防具つけてたし。今日は白いブラウスみたいな服に大きな紺色のスカート……、やはりスカートでかいな。俺が中に隠れられるぞそれ。
「いや、槍大事にしてくれてるんだなって。よかったよ」
「ああ、使えば使うほど手に馴染んでいく、それが堪らなく楽しい。それに手入れをすればするほど輝くように感じる。もう何があっても手放せないな!」
そんなにいい物なのか、それなら他にも槍とかを欲しがってる子達にもあげたいけど、やっぱりまだ厳しいよなぁ。
そこから腰を落ち着かせ、ここに来た理由を軽く説明しながら話を聞いてみた。
アナスタシアの部下がお茶を持ってきたが、これ大丈夫な奴だろうか? 最近緑色の液体にトラウマ抱えかけてるから手が伸びない。
「つまり、我らケンタウロスにとって好ましくない、もしくは敵対する種族の話が聞きたいと? 何だそんなことか」
「やっぱりいるの? そういった種族が」
彼女は一口お茶を飲み、一つ頷いた。あ、このお茶大丈夫な奴だ。俺も飲んどこう。
「ああ、いるぞ。ミノタウロスという種族が一番に思い当たるな。戦争の折によく揉めていたしな。奴らも大地に生きる民だ、我らの種族とよく小競り合いのような事をしている」
おっと、ここに来てまた有名な名前を聞いてしまった。俺の知ってるその名前を冠するモンスターは狂暴で力自慢で、牛の頭に体が人のバケモノってくらいしかないな。
「小競り合いとは……? お互いの領土が被ったりとか?」
「まぁそうだな。私達は基本草食で食肉文化はあまりない。非常時は別だが……。だから食関連の事が原因で揉め、争う事はある。優れた土地や恵みの多い自然の多い場所だとそれが顕著になるな」
有限な資源を奪い合うという事かな。場所によっては食べれる物の栽培量も変わるだろうし、食べ物に恵まれた土地に住み着きたいのはどの種族も一緒だろうし。
「ターシャ達もミノタウロスも草食なら、農業をやれば共生できそうだけど……?」
彼女は少し眉間にシワを寄せて首を振った。
「難しいな、その農業についてが問題なのだ」
あれ? 農業で問題ってどういう事だ? 彼女の次の言葉を、苦みの強いお茶を頂きながら待つ。意外とうまい。
「例えば、収穫だな。我らが適正と思う時期と、奴らが思う適正時期が少し異なる。それが野菜の品種一つから違う。細かい文化の違いが積み重なるとどうなるか。それはわかるだろう?」
なるほど、からあげ食べる時にレモンかけるかかけないかの極限の形か。もしくはもんじゃのソースか醤油。あるいはご飯の固さ柔らかさ。
違うかな? 違うか……。
「それにな……!」
彼女は歯を食い縛り、眉を上げて怒気を強めていく。
手にも力が入っていたのか、木のカップが悲鳴を上げている。どうしたのだろう。
「アイツラ、我らの事を見てこう言い放ってくるんだ……! 『ケツのデカさだけは一丁前だ』とな……ッ、あの乳だけバカでかい糞雌牛共がァ……!」
アナスタシアさんも立派な物を胸部に二つお持ちですよ? 今日の私服の感じで推測するに、OPI特別鑑定士的にはD……! いや何がとは言いませんがね? お尻の方もよくはわかりませんがですが立派ですよ! いつも何か履いてたりして直接見た事はありませんが! とは言えないな。
セクハラ案件で魔族警察に捕まる。そして魔族に血祭りにされるだろう。
そんな事を考えていた時、バァン! とドアが開かれた。
幾人かのメスのケンタウロス……? アナスタシアの部下と言われる白の馬蹄の人達だ。多少イラついているような。
「ウォック様! 糞牛の話などしたら湧いて出ます! お気をつけ下さい!」
なんで虫のような扱いをしてるの、ここでも……。彼女達は上がった怒気をそのままに俺に意見をぶつけてきて、それは暫く続いた。
リザードマンもそうだったけど他種族のメス同士は仲が悪い事が多そうだな。あのト・ルースすら難色を示していたし、ケンタウロスの中でも、初対面の人間の俺に柔軟に対応できるほど冷静なアナスタシアですらこうなのだし。
一気に姦しくなってしまったので、早々に退散しておこう。
アナスタシアにも、彼女の部下にもお礼を言ってその場を後にする。帰りの案内でお茶を持ってきてくれた子に素朴な疑問を聞いてみた。
「そういえばさ」
「はい? なんでしょうホリ様」
「なんで俺達の会話聞いてたの? それも、あんな人数で?」
彼女は少し無言で俯いて、歩みを早めるようにしつつ、こちらに言葉を返してきた。
「え? すいません。私少し耳が悪い物で」
「いや、なんで会話を……歩くの早くない?」
「すいません、私耳があまりよくないもので」
彼女はすたすたとペースを上げる、軽く小走りで追いかけるが早い!
「ねえ、ちょっと……!?」
「ホリ様、では、今日のところはこれで失礼します!」
そう言い残して、彼女は何処かへ走り去っていった。流石ケンタウロスだ、早い。
蹄の音は優雅だなぁ。
一息つきつつ、アラクネ達のところへ向かう。
時間も良い感じにラヴィーニアが目覚める頃合いだろう。毛布の魔力に魅了されてなければ……だけど。
オーガとラミアに、ミノタウロスか……。
アラクネとハーピーの問題は何とかなったけど、争いの種は根の深い問題だろうな。文化の違いとか大きなものでもそうだし、細かい物を上げたらキリがないくらいあるもんだし。
ラヴィーニアとイェルムの両名には感謝しておこう。問題を起こす事もなく、平穏にしてくれているのは凄い事なんだろうな。
そういえば、ゴブリン君達に話を聞いていなかったな。
帰ったら聞いてみるか。
とりあえず、今重要なのは。
この眠りから覚めるつもりのないアラクネのハンモックに乗り込んで一緒に寝てやろう。失礼します。
起きたら殴られそうだが、注意しても羽毛布団にハマっている奴が悪いのだ!
ありがとうございます!
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