第164話 コレットの書~真実・4~

「いやいや! 出て来たのはスケルトンじゃないですか!」


 ケビンさんに会えると思ったらこれだよ!

 何でいっつも邪魔ばかりするのかな!?

 もう怒った、今日という今日は許さないんだから!


『カタ! カタカタカタ!』


 このメイスに、私の怒りを乗せ――。


「武器を下げろ」


 ――てっ!?

 なんで止めるのよ!


「どうやら、そのスケルトンがケビン……って、何で前歯が1本無くなってんだ、お前……」


 ……え? 目の前にいるスケルトンがケビンさんですって?

 いやいや、グレイさんってば何を言っているのよ……そんな冗談……。


「……」


 グレイさんが今まで見た事もない真剣な顔をして、スケルトンを見ている。

 とても、冗談を言っている様には見えない。

 

『カタ? ……カタカタカタ! カタカタカタカタ!!』


 あのスケルトンも、グレイさんの言葉に反応して前歯を触っているし。

 嘘……まさか……本当にそうなの? あのスケルトンが……ケビンさん?

 これって夢じゃないわよね?


「……いふぁい」


 ほっぺを引っ張ったら普通に痛いという事は夢じゃない。

 え? これはどういう事なの? これはどう状況なの? 全然頭が纏まらない。

 てか、こんな時にスケル……もといケビンさん? の歯を気にしているグレイさんも何を考え……ん?


「……歯? ……あっ!」


 あの時、体にくっ付いていた歯って……まさか。


「どうした、コレット」


「イッイイエ、ナニモ! アハ、アハハハハ!」


 いやいや、あの1本の歯くらいでそうと決まったわけじゃない。

 それにあの歯はジャイアントスネークに食べられた後に付いた物のはずだし、そんな事が――。


『カタカタ! カタカタカタカタカタカタカタ!?』


「ん? ヘビに食われた後じゃな。ポチはちゃんと全部拾ったらしいのじゃが……」


『カタカタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ!?』


「お前は物を食べないし、前歯1本無くても問題はないじゃろが」


「……ヘビに食われた後?」


 ――あった。


「……ああ、やっぱり……」


 ケビンさん? もジャイアントスネークに食べられていたのと、何故か嫌な予感だけはよく当たる私の感で考えると、あの埋めた歯はケビンさん? の可能性が非常に高い。


「やっぱりって……どういう事だ?」


「うっ!」


 どっどうしよう! ケビンさん? にとって歯はとても大事にしていたみたい……あのドラゴニュートに向かって文句を言っていたみたいだし、だとしたら「歯は私が地面に埋めちゃいました」なんて言えるわけがない。

 かと言って、このまま追及されるのも辛いし……ええい、こうなったら。


「そっそれよりも! あのスケルトンがケビンさんってどういう事なんですか?」


 話題を変えてしまおう! どっちにしろこれは重要な事だしね、うん!

 ……で事が終わり次第、街に戻って、こそっと歯を掘り出して、こそっとどこかに置いておこう。


「ああ。この手紙によるとだな……」


 ふむふむ。


「ケビンはここ数日前に目覚めたそうだ……」


 なるほど。


「で、どういう訳かスケルトンになっていたんだとよ」


 そういう事……って。


「えっ!?」


 それで終わり?

 何の解決にもなってないし!


「その話――」

「――その話は本当の事ですかな!?」


 ジゴロ所長さん、お願いだから最後まで言わせて下さいよ。

 しかも、そのままケビンさん? の方へ走って行っちゃったし。


「ほうほう! ふむふむ! んーこの目は見えているのですかな!? 私の声は聞こえているのですかな!?」


 ケビンさん? の周りを目を輝かせながらウロチョロしている。

 まるで新しいおもちゃを買ってもらったばかりのヘンリーみたい。


「この関節の部分は――」


「そこまでだ。――よいしょっ!」


 グレイさんがジゴロ所長さんを捕まえた。


「なっ何をするですな!? これをほどくですな! まだ調べないといけない事――もがっ!」


 そして、体をロープでグルグル巻きにして猿轡まで……さすがにやりすぎの様な気もするけど、これくらいしないと止まらないからね、この人は。


「これでよし、すまんが今は大人しくしていてくれ、じゃないと話が前に進まん。……さて、この手紙の字は間違いなくケビンだが、内容についてはまだ半信半疑なんだ……お前は本当にケビンでいいのか?」


 グレイさんは全てを信じきっていなかったのね。

 それに比べ私は夢じゃなかったからって、ほとんど信じきってしまっていた……。


『カタ、カタカタ』


 ……。


「……本当に、ケビンなのか?」


『カタカタ、カタカタカタカタ』


 うん、カタカタ言っているだけでまったくわからない。


「……」


『カタカタ、カタ……』


「だあああああ! さっきからカタカタと鳴らしやがって! ちゃんと俺の質問に答えろ! やっぱりお前は偽物か!?」


 ちょっグレイさんがキレた!


『カタ!? カタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ! カタ、カタカタカタカタカタカタ……カタッ』


 質問に答えろって、骨だから声が出ないと思うんだけど。

 もしかしてグレイさんってば、見た目ではわからなかったけど内心はこの状況に動揺していて、そんな簡単な事にも気付いていないんじゃ。


「あの~グレイさん……ケビンさん? はスケルトンですから、声が出ないと思うんですけど……」


「……あっそうか……」


 やっぱりそうだったみたい。

 歯は気になったくせに、声には気がついていないって……。


『――!』


 あ、ケビンさん? が両手で丸を作った。

 思った通り……じゃなくて見た目通りのままね。


「どうやら当たりみたいだな、ケビン? が両手で丸をしていやがる。お前、そんな大事な事はちゃんと書いておけよ!」


 いや、その前にわかるでしょ!


『カタカタカタ!』


 それよりも、これは困ったわね。こっちの言葉は通じても、ケビンさん? の言葉がこっちに通じないんじゃ結局はわからないまま……どうすればいいのかしら。


「じゃあ何か? この手紙みたいに筆談で会話しろってか?」


 あっなるほど。

 その手があったか。


「……勘弁してくれ……解読しながらだと時間がかかるぞ」


 それは嫌だ。

 いい案だと思ったんだけどな~私もその解読が出来ればよかったんだけど……う~ん、やっぱりこの字は読めない。


「そんな面倒くさい事をせずとも、ケビンの声がお主等に聞こえる様には出来るのじゃ」


 えっそんな事が出来るの?


「……そういえばお前は会話しているものな。それはどうやるんだ?」


 確かにケビンさん? とドラニュートは普通に会話してたわね。

 にしても、私達にも聞こえるようにってどうやるんだろ? 例えば私達がゾンビ化させるとか?


「……」


 うん、想像するだけで恐ろしいから止めよう。

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