第54話 ケビンの書~びっくり箱・7~

 俺のを合わせてコアが6個、これを全部コレットにプレゼント出きれば理想なんだが……。

 果たしてナシャータはこのコアをくれるだろうか。


『なぁナシャータ、このコアを貰ってもいいか?』


「そのコアをか? 別に構わんのじゃ、ミスリルゴーレムは作る予定もない事じゃし」


 よし! コアを6個もプレゼント出来るなんてかなり大きいぞ。


『ほれ、宝箱の中身を見たんじゃからもういいじゃろ。話の続きをするのじゃ」


 おっと、そうだった。


『ああ、そうだったな。えーと……あ、ちょうどいいからこの宝箱を使って実際に見てくれ。――よいしょっと』


 実行に移す時もこの宝箱を使うとするか。

 この場所にあった宝箱なんだしな。


「? 宝箱の中に入って、どうするつもりじゃ?」


『まぁ見てろって』


 後は、こうやって縮こまってしゃがめば……。


『――どうだ、骨の体だから宝箱の中に簡単に収まっただろ』


 数少ないこの体の長所だな、考えれば宝箱に収まる以外にも骨が引っかからなければ狭い通路も通れる。

 もしかしたら今後の役に立つかもしれん。


「……いや、どうだと言われてもじゃな……ただただ宝箱に骨が詰まっているとしか言えんのじゃ。そんな異様な物を見せられても……」


 異様な物って酷いな、おい!

 これはかなり重要な事なのに!


「そうですか? ポチにはエサがつまっていておいしそうにみえますけど……」


 エサって! ワーウルフになったんだから骨は卒業してくれよ!


「ポチ、ケビンをエサと見るのも駄目じゃ。エサなら木の実があるじゃろ」


「ええ……あれってまずいだよね……」


 あの木の実って不味かったのか。


「むっ!? 今何か言ったか!?」


「なにもいってないです!!」


「まったく、後ケビンもいつまで宝箱に入ったままなのじゃ? いい加減出てきたらどうじゃ、それとも宝箱に収まっている方がいいのか?」


『え? はっ! そっそんなわけあるか、今から出ようと思っていたんだよ』


 俺からしたらこの状態はただ座っていただけだからな、特に違和感なんか感じなかった……。

 言われなかったら、この状態でずっと傍観していたかもしれない。


「ならいいのじゃが、それでその宝箱にお前が入れるという芸は分かったのじゃ。じゃがそれと何の関係があるのじゃ?」


 芸って、そんな特技があってもな……。


『まぁ待て、そんなに焦るな。今まで失敗続きだったから今度は成功させたいんだ。だから改めて俺らがやる事を整理しながら話すぞ。あ、ポチは喋らないように、ややこしくなりそうだから』


「む~! ほねのくせにめいれいするな!」


「いいからポチは黙っておるのじゃ」


「そんな~……」


 そう、今度こそ成功させなければならん。

 次に目の前にいるのはドラゴニュートでもワーウルフでもない、コレットだ!


『ごほん、まず1つ目はナシャータの存在で今後コレットがここに来なくなる可能性がある、つまりこの遺跡にナシャータがいない者としなければならない』


「それはケビンが小娘の記憶を消す前に割って入るからそうなったのじゃ、後わしは出て行かんぞ。なぜ自分の家なのに出て行く必要があるのじゃ」


 そんな事を言われてもしょうがないじゃないか、コレットが襲われると思ったんだから。


『それは悪かったってば。後、誰もお前に出て行け何て言ってないだろ』


「ならいいのじゃが」


『そもそもナシャータの存在は、急に遺跡に住み着いたモンスターになっているはずだ、でなけれ今更この遺跡に調査をしに来るのはおかしい。今日は成果無しで戻ったから恐らく明日もまた来ると思う』


 そしてコレットも、もう一度来る事になる……はず。


「やはり明日も来るかもしれんというわけじゃな……はぁ……」


『そう落ち込むなって……今後そうならない様にするのが目的なんだからな。次、2つ目は【母】マザーの存在がバレてはいけない事』


 まぁこれに関したら四つ星の親父が策にはまってくれれば一瞬で解決出きるがな。


『四つ星の親父が魔力感知の羅針盤を持っていたからナシャータと【母】マザーの2つの魔力に反応していたはずだ、だからそれも調査の対象になっているだろう』


「よく考えたら、それも大本を辿ればケビンがあの時に割って入るから――」


 ええ……またその話をするか。


『だから悪かったって!! 反省してるからこうやって作戦を考えているんだろ』


 とりあえずこれ以上余計なこと言わないで作戦の話に入ろう。

 また、ぶつくさと文句を言われてはかなわんからな。


『まずナシャータが【母】マザーの所にいって待機するんだ』


「何故、わしが【母】マザーの所で待機なのじゃ?」


 それでシャータがこの遺跡に居なくなったのと【母】マザーの存在がバレない方法なんだよ。


『羅針盤の性能を逆手にとるんだ。羅針盤がナシャータと【母】マザーの魔力を感知しても針は一本だから同じ場所を指す事になる』


「ふむ」


『そして羅針盤の通り来てみれば魔晶石の間に着く。そうなると羅針盤が指していたのこの魔晶石の間だと勘違いをするはずだ。羅針盤の欠点の一つに近くの魔力に反応するから、この壁も天井も床も魔晶石でできている所だと羅針盤はクルクル回って使えなくなる。だからナシャータも【母】マザーもこの下だとは気が付かないってわけだ』


 羅針盤の性能を逆手にとるだなんて、さすが俺だな。


『羅針盤の反応は1つ、その1つもこの魔晶石の間だった。そうなるとこの遺跡にナシャータがいなくなっていると思うだろうし、そして魔樹も無かった、という事になるわけだ』


 これで2つの問題が同時に解決される。

 なんて完璧な流れだ、自分でも惚れ惚れするぜ。


「ふむ、大体分かったのじゃが、ただケビンが宝箱に入る意味がわからんのじゃ」


 その宝箱に入る事の方が重要なんだよ、今までのはただのオマケみたいな物だ。


『それはな……サプライズプレゼントの為だ』


「サプライズプレゼント?」


『そう! コレットが宝箱を見つけて開ける瞬間にコアを持った俺が飛び出してコアを渡すんだよ! これは絶対に驚くぞ!』


「そりゃ宝箱からガイコツが急に出て来たら誰でもびっくりするじゃろ、色んな意味で……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る