3章 二人の勘違いとうぬぼれ

第15話 コレットの書~勘違い・1~

 ◇◆アース歴200年 6月13日・朝◇◆


《ふぁ~……眠い……》


 結局あの後も悪夢を見そうで怖くて眠れなかった……この3日まともに眠れてない、これじゃ疲れが溜まっていくだけだわ。

 ギルド来ただけなのにもう体が辛い……。


《ガヤガヤ》


 それにしても今日も朝からギルドは賑わってるわね。

 え~と、受付嬢さんは……いた!


「あ、コレットさん。丁度よかっ――」


《あの受付嬢さん! ちょっといいですか!?》


「え!? はい!? 何でしょ!?」


 ここはビシッと言ってやるんだから!



「…………」


 昨日の事を話したら受付嬢さんがすっかり黙っちゃった。

 ちょっと強く言い過ぎたかな? つい感情的になっちゃったけど、今後の事を考えたら受付嬢さんと険悪になるのはまずいんじゃ……。


《あ~、えと、あの、その、すみません……ちょっと言い過ぎ――》


「…………コレットさん!」


《は、はい!》


 受付嬢さんがすごい勢いで身を乗り出せてきたんですけど!

 何々、一体どうしたっていうの!?


「昨日、今日と貴重な情報提供をありがとうございます!」


《い、いえ! どういたしまし、て?》


 ……何で感謝されちゃってるんだろう。


「……これは何かの前触れなのかしら……うーん……これは早急にギルドで調査を……いや、三つ星級以上の冒険者の……ブツブツブツ……」


 今度は座り込んで物凄い勢いで書類を見ながらブツブツブツ言ってる……。

 これはまた私の話が流れちゃったパターンだ。

 もういいや……今日来たもう一つの目的の事まで忘れられたら困るからそっちに話を進めよう。


《あの~何かしてる所申し訳ないんですけど……昨日話してたグレイさんって方は?》


「――え……? ああ! そうでしたそうでした!」


 結局ギルドに来た目的の方も忘れられてた。


「さっき来られたよ。えーと……いたいた、コレットさん、こっちです」


 受付嬢さんが歩いてる先に私と同じようなゴツイ鎧を着た男の人が一人席に座ってる。

 あの人がグレイさんなのかな?


「グレイさん、お待たせして申し訳ありませんでした」


「お、来たか。たいして待ってないから気にすんな、よいしょっと」


 やっぱりこの人がグレイさんか。うわ~立ってる姿を見ると本当に大きい人だ。

 顎鬚、頬に傷、まさに熟練の冒険者って感じだわ。歳は40歳ちょっとくらいかしら?


「で、そのゴツイ鎧を着た奴がさっき言ってた新米か?」


「はい、一つ星級のコレットさんです。――コレットさん、彼が昨日話した四つ星級冒険者のグレイ・ガードナーさんです」


 あ、アーメットを外して顔を出さないと失礼だよね。

 って、アーメットは着けないと決めたのに結局また着けてたし! 馬鹿じゃないの私!! 


「っと――コレットです。よろしくお願いします」


「おう、よろしくな――って女だったのか」


 むっ! なんか失礼な言い方された。


「女で何か問題でもあるんですか?」


「あ? いやいや、そこが問題じゃない、問題なのはその鎧にアーメットの方だ。それ明らかに重いだろ」


 ……やっぱり問題の装備だったのね。


「あ~はい……実は……」


「だろうな……脱げ」


「は!?」


 いきなり何を言い出すの!? この変態親父は!


「ちょっとグレイさん! 女性にこの場で脱げって!」


「は? おいおい、勘違いするな。鎧だけ脱げって事だよ。まさかその下は何も着てないとかないだろ? その鎧がちょっと気になってな、見せてほしいんだ」


 なんだ、そうだったのか。

 紛らわしい言い方しないでほしいな。


「だったら最初からそういってくださいよ……」



 鎧だけど脱ぎたてをジロジロ見られるのは……なんか恥ずかしい。


「ふーむ……お前、コレットだったよな」


「はい」


「この装備をどこでいくらで買った?」


 え? 何でそんな事を聞くの?


「えと、バザーでアーメットと鎧と剣を合わせて15万ゴールドですけど……」


「なるほどな……ん? その剣はどうした、持っていないみたいだが」


 剣か……。


「あ~実はスケルトンに盗られて……」


「はぁ!? スケルトンに盗られた? なんだそりゃ!?」


 すごい驚かれた。

 やっぱりおかしな行動をとってるみたいね、私にとってスケルトンは初めて出会ったからよくわからないけど。


「私にもよくわからないんです……だから今は、その時拾ったこのこん棒を持っているんですけど……」


「なるほどな……もう一つ聞いてもいいか? コレットはどうして白竜の遺跡に潜るんだ?」


 グレイさんになら話しても大丈夫そうかな。


「え~と、それは――」



「……そうか。お前さん、ホセさんの所の子供だったのか……」


 ホセって神父様の名前だ。


「あの、神父様達を知っているんですか?」


「ああ、俺はケビンの奴とは冒険者仲間でな。それでホセさんも知っているんだ。コレットも冒険者になってケビンを探してくれているのか」


「も? って言う事はグレイさんも……」


「ああ、俺も冒険から戻ってはケビンの奴を探しているんだ」


 私と同じ思いの人もいたんだ。

 しかも四つ星級冒険者! これは心強い!


「さてコレット、今から出掛けたいが時間はあるか?」


「え? 大丈夫ですけど、どこに出掛けるんですか? あ、もしかして白竜の遺跡ですか!?」


 私、まだ準備も出来てないのに!


「そうしたいんだが昼からギルドで受けた依頼の報告やら手続きやらで夜までは掛かりそうなんだ、悪いが今日は遺跡には行けねぇ」


「じゃあ、どこにです?」


「バザーだよ、バザー」


「へ?」


 なんでバザー?

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