何度生まれ変わっても

kurosuke

第1話 よくある転生話


 俺は心太、『ところてん』と書いて『しんた』

 あまり頭の良くない両親が「まじやべぇ、いい名前っしょ」とかいいながら付けたらしい。

 せめて『慎太』や『信太』のような普通の漢字にしてくれたらこんなことにはならなかったのかもしれない。


 小さい頃のあだ名は、「しんだ」から始まって「死人」、途中で「ところてん」になったが、最終的には「ゾンビ」になった。


 俺の親は所謂「ネグレスト」だった。

 そんな俺は放置子だったので、一日の大半は公園で過ごしていた。

 近所の連絡網には『ゾンビ警報』なるものもあった。俺を家に上げない為だ。


 まあ、荒れるよね。何もしなくても「ゾンビがきたぞー」とか言われて石を投げらるんだ、荒れるに決まっている。

 誰も庇ってくれないから、自分の身は自分で守らないといけないからね。


 近所からも両親からも相手にされなかった。いつも一人だった。

 あまり家にいて欲しくない親からは、会うたびにお金を渡されていた。金が無くなったら家に帰りまた貰う。


 そんな毎日に突然終止符が打たれた。


 俺は死んだのだ。


【享年15歳、死亡原因:飛び降り自殺】


 心太だった体は血だまりの中にあった。

 自分だったものを下に眺めながら、心太の魂はふわふわと漂い、光のゲートに吸い込まれていった。



 ――どのくらい漂ったのかは分からない。突然、白い光に包まれ視界が広がった。


「ここは……?」

 心太だった俺の魂はキョロキョロしている。


「こっちですよー」

 まるで絵画から抜け出たかのような天使が手招きしていた。


 ふわふわと導かれるかのように天使の前にたどり着いた。


「えーっと、心太しんたさんですね、あなたの転生先を言いますので、お好きなものを選んでくださいね」


 美人よりはかわいい系の女の子がモニターを出してきた。


「転生……先?」

 俺は混乱した。死んだら無に帰るんじゃなかったのか?転生なんて本やアニメの世界の話じゃないのか?


「生まれ変わりですよー。死んだら必ず生まれ変わるんです。人だけじゃなく全ての魂は循環しているのです!」

 エッヘンと胸を張り、天使は答えた。


「俺……、生まれ変わりたくないです」

「その選択肢はありません。あきらめてください」


 そう言うとパソコン的な何かを操作し、モニターに転生先の候補を映し出した。


「えーっと、心太しんたさんはの転生先候補は……っと

 1.ナメクジ

 2.フンコロガシ

 3.その他(※注意事項有)

 ……以上です!」


「……ナメクジ、フンコロガシ……?」

 ブツブツとその生き物の名前を繰り返す。


心太しんたさんは自殺なさったので仕方のないことです」

 続けて天使は簡単に説明してくれた。


「魂にはレベルがあり、良い方から S、A、B、C、D、E…となっています。悪いことをするとレベルが下がり、いいことをすると上がります。ただ、自殺は自分を『殺す』と言う行為なので、レベルが大幅に下がるのです」


 うーん、それなら仕方ないか。しかし、俺の価値はナメクジ……。

「その他って何?」


 先ほどから気になっていた質問をぶつけてみる。


「やっぱり気になりますよね。あまりおすすめできませんが……」

「とりあえず説明してください」


 天使は何かを唱えると光の粒子が集まり形を成した。なにか見覚えのある形だ。


「……ガチャ?」

「はい、ガチャです。昔はくじ引きとかルーレットとかだったのですが、今の時代はガチャになっています」


 俺は大きなガチャをマジマジと見つめた。中身は数えきれないくらいだ。


「これは1回だけ引けます。どれが出ても出たものに転生してもらいます。最初の候補には戻れません」

「この中身って、どんなのがあるの?」

「魂レベルE用のガチャなので、ほとんど害虫です。でも人間はもちろん、その他哺乳類、鳥類などもごく稀に入っています。」

「成功例はあるの?」


「ありますよー、カナブンからハムスターになった人が最近いました」


 俺は考えた。

 ナメクジやフンコロガシも害虫も大差ない、俺自身害虫みたいな人生を送ったんだ。今回は寿命が短い分、早く転生できるだろう。……これはチャンスだ!


「ガチャでお願いします!」

「ガチャチャレンジ入りました!!」

 天使は元気よく宣言した。


 一歩、また一歩ガチャに近づく。もうすぐ新しい人生……いや、虫正が始まる。


「それではお願いします!」


 そーっと手を伸ばしガチャリとハンドルを回した。

 ゴトリと丸いカプセルが落ちてくる。それを天使が手に取りカプセルを開けて中身を読む。


 ドクンドクンと心臓が波打つ。……心臓は無いが心境的にはそんな感じだった。


心太しんたさんの転生先は……、おめでとうございます!ゴリラです!」




 こうして俺の転生先が決まった。


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