第151話 魔国に向けての相談


「さて、皆に集まってもらったのは他でもない」

「集まるも何もいつも一緒だけど……」

「……まぁ雰囲気だよ、雰囲気」


 コロナのツッコミに少し気恥ずかしくなりコホンと咳払いを一つ。

 今『風の軌跡』のメンバーを集め自分の部屋に来てもらった。少し今後のことについて皆と話し合いたかったからだ。


「それで改めてどうしたんだ?」

「うん、今後の事で二つほど皆とも相談したくってさ。ラムダンさんらにも聞いたんだけど良いアイデア出なかったし、自分達のことだから忌憚無い意見を皆から欲しいんだ」


 とりあえず何の事かをまず話すことにする。

 一つは今後の金策の事だ。現状主だった収入源が冒険者ギルドの仕事なのだが、自分のランクが低くて四人と一匹を養うにはとても足りない。

 今までの稼ぎとか貯蓄はあるから今すぐどうにかしないといけないわけではないが、このままでは徐々に減っていってしまう。

 魔国に行くためにも資金は必要なのに、減っている現状では動くことすらままならない。


「その金が足りないってやっぱ俺らのせいか?」

「うぅん……人数増えたってのは確かに理由なんだけど、でもその分ドルンもエルフィも俺以上に色々出来るからなぁ……。結局自分が稼げるようになるのが一番じゃないったぁ?!」


 いきなりゴチンとドルンに頭を小突かれた。

 彼の力だと小突き程度でも自分からしたら普通に痛い。


「馬鹿野郎、俺は好き好んでお前に着いて来てるんだぞ。それに年下に養われるほど耄碌しちゃいねぇよ」

「わっ、私もです! その、この中で一番のお姉さんですしもっと頼っていただいても……」

「実年齢はともかく中身はヤマルより下に見えるぞ」

「うぅ……」


 ドルンの一言にしょげてしまうエルフィリア。やはり自分でもその辺は自覚があったらしい。

 そんな彼女の様子を余所にドルンは話を続ける。


「一番手っ取り早くすんなら金なら俺が武器作ればある程度はいけると思うぞ?」

「でもそれだとドルン一人に養ってもらってるようで気が引けるんだよ。最終手段としてはお願いするかもしれないけど、出来ることなら皆でやれることがしたいな」

「ふむ、皆でやれることな。……エルフィリア、何かあるか?」

「ふぇ!? あ、えとその……そうですね……」


 横から見てもあわあわと必死に考えを巡らせているエルフィリアは中々可愛らしいものがあった。

 しばらくそんな彼女を見ていたが、何とか思いついたのかポンと両手を合わせ笑顔を見せる。


「あ、そうです! 前みたいに遺跡探索なんてどうでしょう。冒険者と言えば遺跡探索ですし、確か遺跡の物は発見者にもらえるんですよね?」

「あー、確かに遺跡探索はありだな。んで、誰にも見つかってない遺跡ってどっかあるのか?」

「それは、その……うぅ……」

「まぁまぁ。でも遺跡発掘は悪くないアイデアだと思うよ」


 自分の財産の中にはまだ未払いのチカクノ遺跡の遺物のものもある。

 あの時は研究員らと一緒だったのでほぼ専属契約みたいな形を取ったが、まだ未発見の遺跡であれば遺物をどの様にしても文句は言われない。

 上手くいけば好事家が高値で買ってくれることだってある。

 ……問題はドルンも言ってるように未発見の遺跡なんてそう発見できるようなものでは無いと言うことだ。


「金策についてはすぐに決まらねぇみてーだし、もう一個の方を先に聞いてもいいか?」

「あぁ、うん。こっちは今後の移動手段についてだよ」


 金策にも関わってくるのだが、現状四人分の馬車代は馬鹿にならないのだ。

 ラムダンにも何か良い手段は無いかと聞いたものの、やはり基本的な手段以外は無いらしい。

 そのことについて皆に話すも全員難しい顔をする。


「移動手段なぁ……」

「えっと、基本的な手段って乗合馬車……ですよね」

「私みたいな傭兵なら護衛依頼で商隊の馬車と一緒に行くとかもあるよ」

「後は商業ギルドで馬車をレンタルするとか、いっそ買うかなんて話もあったけど……。馬の世話とかもあるし金銭的にも乗り合いとそこまで変わんないみたいなのよね」


 そうなると結局乗合馬車が一番手間が掛からないことになる。


「ポチちゃんが馬車を引くのは……無理かな」

「わう?! わん!!」

「あぁ、別にポチじゃ無理とは思ってないよ。ただ長時間は難しいかなぁと」


 馬車を引くとなると一日中大きいままで過ごす事になる。

 荷物全部をポチだけで引くことになるし、それにそのまま戦闘になる可能性だってあった。

 そもそも四人分の荷物、特に本人含めドルンのが重いのだから一時的ならともかく恒常的にやるとなると流石にポチと言えど無理だと判断した。

 一応その事を話すと残念そうにするが何とか納得してくれたようだ。少し落ち込むポチの頭を撫でやんわりと慰める。


「この辺も何か良い手段あればいいんだけど……」

「良い移動手段な。……エルフィリア、何かあるか?」

「ふぇ!? あ、えとその……そうですね……」


 何かさっきも見たぞこのやり取り。

 ドルン、もしかしてわざとエルフィリアに振ってないだろうか。彼女は慌ててるせいで気付いてないだろうけど。


「移動……あまり知られてないの……。あ、でしたらそれこそ遺跡で昔の人が使ったのとか……」

「……古代人が使った乗り物か。確かにロマンあるし技術見てみたいが……」

「その、肝心の遺跡の場所ですよね……」


 結局遺跡関連はそこに行き着いてしまう。

 この世界に遺跡がいくつあるかは不明だが、チカクノ遺跡やヤヤトー遺跡のようにすでに発見済みの遺跡はいくつもある。

 それらを除外しつつ未発見の遺跡を探すとなると……。


「あ、いるかも。遺跡の場所知ってるかもしれない人」

「そうなんですか?」

「うん。ほら、遺跡って言うけど要は古代人の昔の施設なのよね。チカクノ遺跡は元病院だったし、ヤヤトー遺跡は分からないけど何かの施設っぽかったし」


 そして遺跡としては知らなくとも在りし日の施設を知ってる知り合いが一人いる。いや、一人と言うか一体だけど。


「メムに一度話聞いてみよう。上手くいけば遺跡の場所も便利な乗り物も知ってるかもしれない」



 ◇



 明けて翌日。

 メムと色々話をするべく全員で王城に向かう。

 スマホで済ませることも考えたが、色々と資料を見比べたいこと、ドルンがロボットの実物を見たがったこと、教授らの研究が今どんな感じになってるのか一度聞いてみたかったこと等から実際に顔を合わせ話し合いをすることにした。

 そして正門前へたどり着くとエルフィリアが感嘆の声を漏らす。


「近くで見ると本当に大きいですね……」


 国の象徴と言うべき王城は見上げ続ければ首が痛くなるほどに大きい建築物だ。

 獣亜連合国にも大きな建物はあるが、政治形態の違いからこの様な建物はあの国には無い。

 遠くから見る分には見慣れつつある王城も、いざ近くで見るとなれば圧巻の一言に尽きる。

 なお見上げる当人が周囲から一番注目されているのは黙っておこう。


「さ、中に入ろうか。皆、着いてきてね」


 ドルンですら腕を組み唸らせてるのは中々新鮮であるが、流石に正門前でいつまでも立ち止まってる訳にはいかないので中に入ることにする。

 門番の兵士に話すとすでに教授が手続きをしてくれていたようであっさりと門を潜ることが出来た。

 中々人王国では見ないメンバーのせいか、城の中に居たの人がチラチラとこちらを窺っているのか自分でも分かる。

 でもその様な視線もようやく慣れたのか、エルフィリアはその程度でびくびくすることは無くなっていた。


 今回向かう先は城の中心ではなく離れの研究室。

 王城の敷地内ではあるが一度城を出てから離れの建物の方へ向かう。

 この場所まで毎回自分と話す為にレーヌ歩いてるのかなぁ、と考えてるとあっという間にそこへと着いた。


「ここですか? お城の中は煌びやかでしたけど、ここはなんと言いますか……」

「まぁ研究室なんざこんなもんだぞ。むしろ雑音入りづらい位置だから個人的には良物件だな」

「そう言えば俺もここに来るのは初めてなんだよね。普段用事あればメムに頼んで話をしてるし」

「さらっと言ってるが出掛けずに話せるって異常だからな……?」


 ともあれまずは中へと入る。

 大きな両開きの木の扉を開けるとまず左手に小さな兵士の詰所があった。

 ドアが開いた音を聴いたのか中から兵士が二人ほどやってくる。


「こんにちわ。お話いってると思いますが約束していた古門野丸です」

「あぁ、君か。話は聞いているよ、後ろの人達が仲間だよね。会議室はこのまま真っ直ぐ行って突き当たりを左に、その後一番奥の部屋だよ」


 丁寧に説明を受け頭を下げて礼を言うと会議室の方へと向かう。

 ただ後ろの詰所から何やら興奮したかのような声が聞こえてきた。

 内容までは分からないが、多分皆の事だろう。

 どこに行っても注目を浴びてるなぁと思いながら廊下を歩く。

 廊下は静まり返っており、予想に反し清掃もしっかりと行き届いていた。

 目立った汚れも特に無し。もしかしたらレーヌが足を運ぶから見える場所は綺麗にしているのかもしれない。

 まぁ適当な研究室のドアを開けたらそうでもないような気もする。何か色んな物が散乱しているイメージがあるし。

 そんな建物の中を観察しながら歩いていくと一番奥の会議室前にたどり着く。


「失礼しますー」


 コンコンコンとドアを三度叩き中へ入り……三歩下がって何も言わずドアを閉めた。


「どうした?」

「……何か人がみっちり入ってたんだけど」


 おかしい。今日の約束はメムと教授と数名って話だったはず。

 何か入った瞬間かなりの数の人間が見えた。


「他の会議中だったとかかな?」

「いや、でも会議室ここだけだよね……」


 念のため隣の部屋のドアを見るも会議室ではなかった。

 やはりこの部屋で間違いないよなぁと思っているとドアが開かれ、中から見知った人が顔を出す。


「ヤマルさん、久しぶりなのになんでいきなり帰るんですか」


 出てきたのは以前チカクノ遺跡で一緒に回ったグィンと言う少年だった。


「いや、聞いてたより人随分多いし間違えたのかと……」

「大丈夫ですよ、あってますから。さぁ、皆さんもどうぞ中へ入ってください」


 グィンに案内され再度部屋に入ると、やはり見間違いではなく人がぎっちりと詰まっていた。

 部屋の半分は自分らが話し合いをするための大机と人数分の椅子が用意されていたが、もう半分は所狭しと研究員や学生がすし詰め状態で座っている。

 何でこんな、と思ったもののすぐにその理由が分かった。


「おぉ……」

「エルフだ、本当に存在したのか」

「しかも美人だ。顔見えないけど間違いなく美人だ」

「と言うかドワーフもマジで一緒なのか」

「誰だよドワーフとエルフが犬猿の仲とか言ってたヤツ。ガセじゃねぇか」


 等々。

 他にも色々言っていたがやはり注目を浴びるのはどこでも一緒のようだ。

 特に研究員だと知的好奇心が高いだろうし、その結果がこの人数なのだろう。


「う~……」


 流石にこの近距離でこの数の視線を浴びては多少は慣れたエルフィリアでもあっさり限界は超えたらしい。

 皆の視線が当たらないように自分の背の後ろに隠れてしまった。


「皆、無駄話はそこまでだ。久しぶりだね、ヤマル君」

「マスター、お久しぶりデスネ」

「あ、どうも。でも通話してると久しぶりって感じあまりしませんね」


 特にメムは獣亜連合国に行ってる時も高頻度でやり取りをしていた。

 声も聞き慣れたものだし久しぶりと言われてもあまりピンとこない。


「そんな感想を抱けるのは君だけだよ。さて、早速話に取り掛かるとするが……皆が興味を持ったようでご覧の通りだ。話しづらい内容であれば退出も止む無しだが」


 その教授の言葉に色々とブーイングが飛んでくるも、確かに内容次第ではあまり聞かれたくないこともある。

 どうしようか。未発見の遺跡情報をメムが持ってた場合、この面々が聞いたらいきなり飛び出して行きそうな気はする。


「うーん、話した内容でちょっと新事実が発見されたら自分らに優先権欲しいんですけど。それが守れなさそうなら退出してもらいたいかなぁ……」

「何か新事実がありそうな内容なのかね?」

「わかんないです。出るかも、ぐらいですが」

「ふむ、まぁその辺りは守ることを約束しよう。破った物には相応に罰則を言い渡す。皆、そのつもりで」


 まぁどこまで効力があるか不明だがとりあえず約束を交わしたのは大きい。

 そして教授に促されるまま椅子に座り改めて今日の相談事を切り出す。

 今回メムに聞くのはまだ発見されて無い遺跡の場所、すなわち昔の施設の場所を知っているか。

 そして何か昔の便利な乗り物を知っているかだ。

 こちらの質問に対しメムではなく周りの人間が息を呑む。何せもしメムが知っているのであれば新しい遺跡や遺物が出てくるからだ。

 そわそわし始める周囲を余所に、メムが出した答えはシンプルだった。


「ならエアクラフターなんていかがデショウ。私みたく動くものが残ってるかもしれマセン」


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