第47話 チカクノ遺跡12


 下り階段の先から聞こえていた銃撃音が止む。

 何か色々物がぶつかる音とか砕ける音とか不穏な音がしていたのだが、現在は何も無く静寂に包まれている。

 だがそれが返って不気味だ。


「第一班、突入」


 事前の作戦通り第一班が中へと入っていく。最初に銃撃された重装歩兵の人も再び戦列に復帰していた。

 サイファスが示した作戦は作戦と言うには些か単純すぎた。

 簡単に言えば彼単騎で突っ込んで片付ける、ただそれだけ。

 ただし奇襲自体は念のためにしたかったとのことで、突入前に非常口に《生活の音ライフ・サウンド》を掛けて無音化する手伝いだけは行った。

 なんで非常口に?とも思ったが、最初に蝶番を引きちぎって投げつけるらしい。

 彼が言うには静かになったら降りてきて欲しいとのことだが、いきなり全員と言う訳にもいかずまずは第一班が先行して降りていく。

 程なくして第一班の一人が戻り全員降りても大丈夫と伝令を受けた。

 念のため今まで通り第二班を先に下ろし、その後数名をこの場に残し残り全員で地下三階へと降りる。


「「「うわぁ……」」」


 到達した地下三階では戦闘の……もとい見事なまでにサイファスがやらかした跡が残っていた。

 ひしゃげた非常口だったものとその側に転がるロボットが二体。横を見ると少し奥まったところに第二班の一部に見張られたロボットだったものと思しき物。

 そしてサイファスと第一班に見張られたのは薄ピンク色のロボットだった。あれがシーオが言っていた指揮官なのだろう。

 ただそのロボットは他のロボットと形状からして違う。

 両手両足があった戦闘用ロボットと違いまず足が無い。ロングスカートのような足代わりのパーツが床付近まで伸びている。

 そして両手は五本の指に相応の太さの腕等かなり人間に近しいものだ。肘など関節部もがっしりとした造りである。

 ではそんなロボットが人間に似ているかと言われると全くそんなことは無い。

 その顔は卵形で形状こそ人間に近いまでも、金属風の鈍色の肌、黄色のレンズの様な大きな二つの目、頭にはボディと同じ色をしたナースキャップのようなパーツをつけている。

 その姿はまるで介護師をロボットにしたような……あれ、もしかしなくてもそうだったりするのだろうか。


「なぁ、別に俺たち要らなかったんじゃ……」


 周囲の惨状を見てダンがぽつりと呟く。

 まぁそう言いたくなる気持ちも分かる。これだけ大立ち回りされたらダンに限らず誰だってそう思うのも無理ないことだ。

 だが自分らが不要かと言われたらそうでもないだろう。自分ら全員集めてもサイファスに敵わないだろうが、かといってサイファスが何でもかんでも出来る人間と言うわけではないのだ。……多分。


「まぁ適材適所ってやつでしょ。俺なんか戦闘殆ど人任せだし」


 弱すぎる自分を理解してるからこそ魔法で敵を避けるしコロナを雇ったし今回だって応援も呼んだ。

 自分がもっと、少なくとも自衛出来るぐらいの力があれば二人でこの遺跡をもっと探索していたかもしれない。

 だからその分、せめてそれ以外のことでは役に立ちたいと思っている。無い頭を捻り《生活魔法》の使い方のバリエーションを増やしてるのもその一環だ。


「うん、私も今回何もしてないしね」


 そして自分の前にいたコロナがやや気落ちした状態で振り向く。

 傭兵である彼女は自分の護衛が第一ではあるが、先ほどの偵察時には彼女は同行せずサイファスと兵士にその役目を譲っている。

 これは求められたのが純粋な強さではなく、『ドアを攻撃された際に動かぬ力を持つ人、突撃されてもドアを開けぬよう耐えれる人』と『不意の礫の攻撃からヤマルを守れる人』だったためである。

 つまり必要な要素が『力』と『面での防衛力』だったため小柄で素早いコロナでは根本的に条件に合ってなかっただけなのだ。

 そのことは分かってるし理解してるからこそ彼女はその役目を譲ったが、護衛として雇われてる以上やはり矜持と言うものがあるのだろう。理性で分かってても感情が邪魔をするのはままあることだ。


(ヤマル、ヤマル)

(ん?)


 いつの間にか隣にやってきていたスーリがこちらの袖を引っ張り小声で名前を呼ぶ。


(コロナちゃんに何か言ってあげた方がいいんじゃないの?)

(え、う~ん……そうだなぁ……)


 フォローするのは吝かではないが、自分の場合変なこと言って逆にもっと気落ちさせないか不安がある。

 とは言えこのまま放置するのも仲間としては無関心すぎるかもしれない。スーリに小さく首を縦に振って了解の意を示し、コロナの方へと向き直る。


「でも俺はコロがいなきゃこんな未踏破区域なんて他の人いても怖くて来れないからね。そもそもコロがいたからこの遺跡まで出張れたんだしそばに居てくれるだけでも安心度合いが全然違うよ」

「……そうなの?」

「そうだよ。ラムダンさんだって知ってますよね、自分が一人のときに魔物と遭ったらどうなってたか」

「あー……あれは中々見れない光景だったな。そんなお前がここにいるんだから、君の存在がどれだけ大きいか分かるな」


 流石ラムダン、年長者だけあり空気の読み方も完璧だった。

 途中微妙に遠い目された気がしたが気のせいと言うことにしておこう。


「まぁそんなわけでコロの存在は俺にとっては物凄く大きいんだよ。だから何でもかんでも完璧にこなそうとしなくても大丈夫だからね」

「ん、分かった」


 お、声のトーンが少し明るくなった。とりあえず失敗せずに元気付けれたようで一安心である。

 しかしホッとするのも束の間、皆に見張られてたピンクのロボットがコロナを見て声をあげた。


動物人間アニマロイド!」


 え?とそちらを見るとちょうど最後の一体がコロナに銃を向けているところだった。

 だが次の瞬間にはそのロボットが拘束されコロナの目の前には氷の壁が張られていた。


「全く、油断も隙もねーな」

「ダン、こっち抑えておくから縛り上げろ」


 あいよ、と返事をし手持ちのロープでラムダンが押さえつけてるロボットを縛り上げていく。

 何が起こったか全く分からず目を瞬かせていると、コロナが『風の爪』の面々が守ってくれたと教えてくれた。

 あの瞬間、まずダンがナイフを投げで左腕の銃を弾いた。

 弾かれたことによってずれた銃口を元に戻そうとしたところに、すかさずユミネの矢が放たれる。矢にはフックがついており、ロボットの手を引っ掻けて後ろに大きくずらすことに成功。

 そしてすでに走り込んでいたフーレが剣をロボットの右足と左足の間に差し込み、そのまま円状に動くことでバランスを崩させる。

 最後にラムダンが体勢が崩れたロボットを後ろから押し倒し、同時にスーリが魔法で氷の壁を作りこちらの安全を確保した。


 この間数秒、まさに電光石火。

 打ち合わせもなく指示も出すことなく、互いが何をするか分かってるからこそ出来る見事な連携だった、とコロナは言う。

 修練だけでは到達出来ない、互いを良く知り信頼してるからこそ成し得る動きだったそうだ。


「すごいな……」

「ね、ほんとすごいよね」


 そう言いつつもいつの間にか剣を抜いているコロナも大概だと思う。

 しかしこういうときに本当に彼らとの強さの差を実感してしまう。今もコロナを狙われてたのに身動き一つ取れなかったし……。


「さて、どういうつもりかな?」


 スーリが氷の壁を消したところで見えたのは丁度シーオがピンクの指揮官ロボに話しているところだった。

 ロボットは見たところ武装は無く、そのため縛られるも逃亡防止用の縛りだけ。

 ただなんだろう、表情はないのだが先ほどからこちらをじっと見て止まっている。人間なら信じられないものでも見たときのような、そんな間があった。

 しかしそれもほんの一瞬。ロボットが頭だけシーオの方に向ける。


「貴方達コソドウイウツモリデスカ。動物人間ト共ニ行動スルナド……」

「言っている意味が分からないな。そのあにまろいどとか言うのは彼女のことなのだろう? 一緒にいて何の問題がある?」


 もはやばれてる以上コロナがフードを被り続ける意味合いも無い。

 取っても良いよと言うとコロナは迷うことなくフードから頭を出した。後で知ったことだがフードを被ってると耳が擦れるのと声が聞きづらくなるのであまり合わないらしい。


「アレホドノ同胞ガ殺サレテモ何モ思ワナイト?」


 同胞、つまり人間が殺されたとこのロボットが言うが、コロナも良く分からないとばかりに首を横に振る。

 もし彼女が何人もの殺人を犯してるならこんなところにそもそもいないだろう。

 何せ目の前にいるのは国の直下組織の王国兵士隊、つまりは警察みたいなものだ。犯罪者がのこのこと行動を共にする相手ではない。


「……どうも話が噛み合わんな。殺されたと言うがそれは彼女個人がやったと言うことか?」

「動物人間全体デス。アレホドノ戦、忘レタトデモ言ウノデスカ」


 全員よく分からないといった感じではあるが、多分一番分かってないのは自分だろう。

 何せこの国の、と言うかこの世界の歴史を知らない。

 下手に口を出せる雰囲気でもないため黙ってシーオとロボットの会話を見守っていたが、不意に彼が何故かこちらに顔を向けた。


「ヤマル殿、貴方からも話してはくれないか?」


 え、なんで?と声に出さなかったのは良くやったと自分で褒めたい。

 少しの逡巡の後、この部隊の隊長はシーオなのだから貴方でいいのでは?と遠まわしに遠慮したのだが首を横に振られ却下された。


「確かに部隊としての隊長は私だが、それは戦闘部隊としてのこと。この場所を見つけた貴方に要請されただけに過ぎない。ならば調査隊の代表としては貴方が適任かと」


 そう言うものなのだろうか。こんな若造にやらせんでも自分よりも優秀な人はたくさんいるだろうに。

 とは言うもののシーオの言ったことは何も間違っていない。そもそも昨日遺跡の発掘物の所有権は自分に帰属すると言ったばかり。発掘ではないが一応目の前のロボットもそうなる。

 なら確かに今いるメンバーでは代表は自分が適任なのだろう。


「……わかりました。コロ、お願い」

「うん!」


 漸く頼られる出番がやってきたからかどこか嬉しそうなコロナ。

 それでも彼女は油断せず自分の横につくと一緒にロボットの前まで近づいていく。


「貴方ガ代表デスカ。動物人間ヲ従エテイルノデスネ」

「雇ってるからまぁ仕事上としては主と従かな。それよりも話をしよう。こっちも色々知りたいし」

「侵入者ニ話ス事ナドアリマセン」


 中々頑固なロボットである。そうプログラムされてるのだろうが、これは骨が折れそうだ。


「まぁ話さないなら話さないでこっちで色々調べることになるけどいいの? 侵入者って言うからにはそっちはここを守ってたってことだよね」

「…………」

「とりあえずこっちとしてはここの事とか知りたいのよ、そもそもここが何なのかさっぱりだし。教えてくれるなら無理にあれこれ荒らさなくても済む――」

「待チナサイ。ココガ何ナノカ知ラナイノデスカ?」

「チカクノ遺跡って昔の遺跡ってぐらいしかね。だからこうして調べに来たんだよ」

「何デスカソノ名前ハ。ココハ遺跡等デハアリマセン、見テノ通リ病院デス」


 そうなの?と後ろに控える兵士隊やラムダンらに目で訴えかけるが、その様な事実はないらしい。


「病院だったんだ、ここ」

「エェ、ソチラノ遺跡ガソモソモ間違ッテイマス。完成シテカラ五年、新規ノ病院ガ建設サレタ連絡ガ無イ以上ココガ最新鋭ノ現場デス」


 はて、なんかおかしな情報が出てきたような。

 確かここは古代の遺跡、しかも文字すら解読出来てないぐらいの年代の代物だ。

 それに五年前は確かここはもう観光施設状態だったはず。


「ソレガ動物人間ト魔石人間マジカロイドノセイデコノ有様ニ……」

「ちょっと待って。完成して五年って、五年前はここの地下一階……えーと、ここから二階層上のとこはとっくに観光地化してたはず……ですよね?」

「その通りだ。上の階層が発見されたのが数十年前、五年前にここが完成だと上の階が先に出来たと言う事になるが?」


 やっぱり話が全くかみ合わない。まるで平行世界の話をしているような感覚に陥ってくる。

 多分どこか根本的なところでお互い思い違いをしていると推察し、改めてロボットに協力要請を促してみる。

 

「……やっぱり一度情報をちゃんと精査したいな。そっちは納得してくれないかもだけど協力してくれないか? こちらの情報を得るのはそっちにもメリットだとは思うけど」

「……良イデショウ。ダガ機密ニ関スルコトハ開示シマセン」

「うん、その辺はそっちが必要と思ったらでいいよ。まずはお互いの当たり前の部分からいこう」


 

 ◇



「ではこっちが知ってる情報から。訂正とかは後で聞くからとりあえず話を聞いてもらうよ」

「了解シマシタ」


 まずこちらの情報として現在この場所はチカクノ遺跡と名づけられた古代の遺跡と言う位置づけになっていること。

 初めて見つけられたのが数十年前のある日、冒険者によって入り口が掘り起こされたと言うこと。

 以後地下一階が探索し尽くされ古代遺跡として観光名所化していたが、最近になってここまでの道を見つけたということ。

 そこまで言ったところで後ろからシーオが少しだけ口を挟んでくる。


「それとこちらから少し追記だ。先ほど獣人らと戦をしたと言ったが、野盗などの小競り合い以外では各国での戦闘は無い。大規模となればそれこそ約二百年前の大戦時まで遡るほどだ。以降はどの種族も問題なく暮らしているぞ」

「……ソウデスカ」


 人間で言えばだんまりと言った様子のロボット。きっと頭の中にあるAIで色々整理しているんだろう。

 少しだけ待った後でロボットにそちらの話のことを促してみる。


「じゃぁそっちの知ってることも話して欲しいんだけど……」

「イイデショウ」


 そして語られる古代の出来事。安全上の問題とは言え学者組がここに居ないのが非常に勿体無いと思う。

 このロボットが製造されたのは本人曰く約六年ほど前のこと。このチカクノ遺跡……当事の病院の完成に合わせて造られたそうだ。

 そして本来の仕事は侵入者の排除ではなく医者のサポートや患者の付き添いなどの医療介護ロボットらしい。

 なお銃を使った物騒なロボットは汎用ロボットと言われる所謂量産型。本来の仕事の都合上彼らの力を借りることがままあるため、今回の戦いではそれを応用して指揮をとったとのこと。

 そもそも汎用ロボットと違い医療介護ロボットはいつでも対応出来るように休む間もなく働くため、なるべくエネルギー損失は軽くするために様々な工夫がされている。足が二足歩行ではなくローラー式なのもその一環なのだそうだ。

 そんな風に人に仕えて二年ほど経った頃、急に患者が増えだした。それも外傷性のある患者ばかり。

 その患者達の話をまとめたところ、どうやら動物人間と魔石人間が人間に害を成し始めたらしい。その鎮圧として人間は現地へ赴き、その際に怪我を負ったそうだ。


 その後も患者は増えていき、汎用ロボットも武装し病院を守るよう巡回せざるを得なくなったある日のこと。

 何が起こったかは記録にない。メモリが壊れたかバックアップが間に合わなかったか原因は不明。

 ただ再起動したのはほんの五日ほど前のことだ。汎用ロボットの一台が通信を送ってきたのがきっかけだった。

 上から侵入者が来た、様子を見る。そして直後、動物人間を確認したと言う情報を最後にその個体からの通信は途絶えた。

 いつの間にか変わり果てた院内と侵入者の情報から防衛することを決めた。倒れていた仲間を起こし程度の軽いものは修理し再利用。無理な個体からはパーツを集めどうにか形になったのが昨日のこと。

 原因調査は侵入者排除後にする予定だったそうだ。


「ソシテ現在、ソコノ黒イ人間ニヤラレタワケデス」

「なるほどね。となると上にいた亡骸はその時の患者さんか……」


 ベッドに横たわっていた白骨死体。この病院の患者さんだったんだろう。

 後でこのロボット立ち合いの元、手厚く埋葬してあげようと心に誓う。


「亡骸? ヤハリ貴方達タチガ……」

「推測するのは勝手だけど白骨化して随分経ってたよ。……多分君、えーと……名前なんて呼べばいい?」

「個体名ハアリマセン。型式ノ略称カラ『メム』ト呼バレテイマシタ」

「了解、俺は野丸。で、メムの話聞いて思ったんだけど、君が起きるまでに物凄い長い時間が経ったって考えるのが自然じゃないかな」


 メムもシーオも嘘をついてないと仮定するなら、一番ありえそうな答えがこれだろう。

 つまりこちらで二百年前に起こった戦争と、メムの言う大規模な戦闘は別物と言うことになる。

 もし二百年前の戦争時にここがあったのであればその記録が何かしら残っててもおかしくはない。だが当時の記録、人からの口伝などここの情報は皆無である。

 それなら戦争が別物と考えれば矛盾は生じないしこの病院が遺跡化するぐらい経ってるのにも白骨化した患者にも一応説明はつく。


「ツマリ私達ノ創造者ヤマスターハイナイト……?」

「人間の寿命じゃ難しいしんじゃないかな。もしかしたらどこかに子孫はいるかもだけど」


 ただメムを作った子孫がいたとしてもその技術はとうに失われているだろう。もし受け継がれているのなら同じような、いや、それ以上のロボットが今の時代に出来ているはずだ。

 沈んだ遺跡、失われた技術。浪漫を感じなくもないが、これほどの技術を持っていた文明が何故こうなったのか不安は残る。


「……主モオラズ、守ルベキ人間モトウニ亡クナリ、私ハドウスレバ……」

「それは自分で考えなきゃ。……って言いたいところだけど、与えられた命令が無い以上動けなかったりするの?」

「ソウデスネ。私達ハ根幹部分ニ与エラレタ命令ニ沿ッテ動ク存在。ソノ命令内デアレバアル程度ノ裁量ハ委ネラレテマスガ根幹部分カラ脱スルコトは出来マセン」


 メムらに与えられた命令自体はとてもシンプルだった。

 職員や医師の手伝いや補佐、患者への対応、院内清掃などの雑務。そして追加で外敵排除を含む病院の防衛。

 しかしすでに職員や医師はおらず、患者は息絶え、院内清掃どころか病院として機能していない。

 外敵と思っていた侵入者も実際は遠い未来の人間たち。そしてこの時代、明確に人類と争っているものはいない。

 根幹部分の命令が全て不可能である以上、メムたちの存在意義が失われたことになる。


「その命令はやっぱりマスターって権限持ってる人間しか出来ないんだよね?」

「ソノ通リデス。タダコノヨウニ主ト連絡ガ取レナイ状態ガ長時間続クト判断サレル場合、ソノ対処法ガ私ニハインプットサレテイマス。実行シマスカ?」


 何故自分に聞くのだろうか。自分は主じゃないんだから好きにすればいいのに。

 だが勝手にOKを出すわけにも行かないため、一応後ろを向きシーオの顔を伺う。

 彼は好きにしなさいと短く返し事の成り行きを見守るつもりのようだ。


「まぁこのままじゃそっち動けないんだし、お互い困るからやって良いと思うよ」

「了解シマシタ。コレヨリ主ト連絡ガ取レルマデ貴方ヲ仮ノ主トシテ認定、権限ヲ委譲シマス」

「……え?」

「ナオコノ権限ハ仮デアルタメ一部の制限ガ加ワルコトヲゴ了承下サイ」


 固まってたのは一瞬か、それとも数秒か。

 感覚が追いつかぬままメムの言葉が脳に染み渡ったところでようやく体が動き始める。


「いやいやいや! 何で俺が仮マスターなのさ。後ろに居る人らの方が適任な人多いでしょ?」

「我々ニ命令ヲ出セルノハ人間デアルコト。マタ過去ノ情報カラ貴方ガコノ集団ノ代表デアルコト。以上ノ二点カラ適任ト判断シマシタ」


 語られる理由は分からなくはないが、せめてこの世界の人間にしようよと思う。

 まぁ見た目では違いが分からないためどうにもならないか。そもそも俺だってサイファスやセレスがこの世界の人間ではないことを分かっててもも違いが分からないし。


「……ちなみにこの仮マスターを譲ることは?」

「条件付キデ可能デス。貴方ガ亡クナル、モシクハソレニ準ズル程行動不能ニ陥ッタトキ。マタ必要ナ理由ガアリソレヲ貴方ト私ノ双方ガ判断シタ時ナドデス。現状デハ委譲条件ハ満タサレテイナイト判断シマス」


 つまり諦めろ、と言う事。先ほどまでドンパチやってた相手に主とか言われてもものすごくもやっとする。

 まぁ感情的な部分はロボットには分からないのだろう。彼らは彼らの行動原理に忠実なだけだ、と自分に言い聞かせる。

 そんなこちらの内心など露知らず、メムは淡々と言葉を続けた。


「私達ハ人ニ創ラレ、人ト共ニ在レト言ワレタ存在デス。マスター、ゴ命令ヲ」


 命令を、と言われても何をどう指示すればいいのか分からない。

 そもそも不本意な形で主代理登録されてるし、勝手に動かしていいのか分からない。

 今後もどうするか、というかこの状況を上の学者らにどう説明するか……。


(ダメだ……)


 もはや色々と頭の処理能力の限界、これ以上は対処しきれなさそうだったのでラムダンとシーオに泣きつき……もとい相談を持ちかけることにしたのだった。

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