7-3—生き生きとした笑顔—
笙と珠樹が家に着いて玄関のチャイムを鳴らすと、時子が待ち構えていたように玄関から飛び出してきた。
「おかえりなさい、叔父さんとお母さん、一緒だったのね」
「ええ、笙さんも時子のお父さんに病院で会ってきたのよ、笙さんは時子のお父さんの弟だからね」
「えっ!叔父さんお父さんに会ってきたの!?どうだった?」
「ああ、時子のお父さん、交通事故で全身打撲で病院に運ばれたからね。まだ、痛々しそうだったけど、話す分にはしっかりしてたよ」
「そうだよね。お父さん、大変だよね。私がお見舞いに行っても大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。きっと喜ぶよ」
「今度の土日にお見舞いに行くことにしたんだ」
「あ、えっと名札がね、ペンネームの時田春彦って記載されていたけどね」
「そうなんだ。時田の時って私の名前の時って漢字?」
「そうだよ。同じ漢字だよ」
「なんで、名前が変わってるのかな?」
「時子ちゃんにもあだ名とかニックネームってあるよね。そういうのと大して変わらないよ」
「そうなのかな。私、あだ名ではトッキーって昔はよく言われてたよ」
「じゃあ、おじさんも時子ちゃんじゃなくてトッキーって呼ぼうか」
「うーん、どうしようかな。それより今日は悠紀人さんのパソコンを使わせてもらったの。悠紀人さんパソコンや携帯でイギリスのお友達や真由美さんとメールで連絡取り合っていて、便利だって言ってたわ。それで、お母さんともメールで連絡取り合えるようにしたいって」
「時子、悠紀人さんの勉強の邪魔はしなかった?」
「さあ?とにかく、ちゃんと夕飯も作ったし、後片付けもしたし、英語のレッスンもしてもらって、その後少し、パソコンの動画を見せてもらったの」
「えっ、何の動画を見たの?」
「英語の勉強の動画だよ。少し音楽も聴いたけど」
「そうか。まあ、今のうちにパソコンは使えるようになっておいた方がいいけど、変なサイトに行かないよう気を付けるよう俺から言っておくよ。悠紀人は今、勉強中?」
「うん。部屋で勉強してるよ。あ、お風呂も入れておいた」
「じゃあ、俺は先にお風呂に入るかな」
笙はそう言うと、準備をしに寝室へと向かった。
「じゃあ、私は後で悠紀人さんとメールで連絡取り合えるようにしておくね。確かにその方が何かと便利だよね。時子も学校でパソコンは使ったことあるのよね?」
「うん。授業で使っただけだけど……」
「じゃあ、i-Padとか使ってみる?そのうち買ってあげるから悠紀人さんの勉強の合間に使い方を教えてもらうといいわ」
「えっ、いいの?」
「高校生になってからって思っていたけど、勉強の調べ物にも便利だし、早めに勉強用に使えるようになっておくのもいいわよね。でもくれぐれも気をつけて使うよう、悠紀人さんにも頼んでおくわ。そのうちお父さんとも連絡取り合えるようになるといいわね」
「あ、それでね、お父さんのお見舞いには明後日の土曜日に行きたいって思ってるんだけど」
「そうね。お母さんはその日は仕事があるけど、叔父さんに連れて行ってもらうといいわ、明日、お父さんに言っておくわね」
時子の生き生きとした笑顔を見つめながら、不意に珠樹は母娘ふたりで身を寄せあうようにひっそりと過ごしていた日々を思い返していた。時子の成長に励まされながらの日々を思いながら、圭も時子と会ったらその成長ぶりにどんなに励まされるだろうと感慨深いような思いで胸が一杯になる珠樹だった。
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