4-10―希望への道―
—部屋でふたりきりになると圭はぽつりと言った。
「ついに珠樹を独り占めしたね」
「そう……。私達、傍から見るときっと夫婦みたいに見えるんだろうね」
「まあ、少なくとも恋人同士には見えるだろうな」
「私、プライベートで男の人とふたりきりで、こんな風に旅行したのってはじめてよ」
「そういえば、珠樹とはじめて出逢ったのは海外ボランティア事業企画に参加したのがきっかけだったね。珠樹ははじめて話したときから、俺の好みのタイプだったし、笙と同級生だったりしたこともあって、運命的な出会いだと思っていたんだ」
そう言うと、圭は珠樹の唇にそっと口付けた。珠樹も心臓がどんどん高鳴っていくのを感じながら、圭の唇から伝わる温もりに浸った。
その日から三ヶ月を過ぎた頃にはふたりは小さな教会で式を挙げた。珠樹も適齢期のことも気になったし、出産年齢のことも考慮して、早く結婚した方がいいと意気投合したのだった。そして、結婚後間もなく、珠樹は妊娠した。珠樹も圭も早く子どもが欲しかったので、喜んだが、珠樹はつわりの影響で仕事に差し障りが生じはじめていた。体力的に仕事と家庭生活の両立に無理を感じはじめていた珠樹は出産予定日の一ケ月前から看護師の仕事は休職し、育児に専念することにした。
やがて、かわいらしい女の子が一人、生まれ、時子と名付けられた。
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