4-9―新たな繋がり―

 劇団の公演が終わると、夕方からの公演まで休憩時間があって、役者たちが休憩室で休憩しているところに圭に連れられて珠樹は訪ねた。圭が休憩室に入ると、脇役でポイント的な役所を演じていた役者の一人が出てきて、圭と珠樹に向かって深々と挨拶すると言った。


「今日は、遠くからわざわざ、訪ねてくださって、ありがとうございます。圭、一緒にいる人が会わせたいって方かしら?」

「母さんこそ、ふたり分の観劇チケットをありがとう。とても立派な公演だったよ。母さんの声、迫力があって、流石だね」

そう言うと、圭は駅の近くの花屋で買った花束を渡した。


「ありがとうね。お前にそう言ってもらうと練習のかいがあったね。一緒にいるあなたも優しそうなお嬢さんで良かった。何てお名前かしら?」

「根津珠樹といいます。今日は立派な公演を観劇できて、とても楽しかったです」

「それは良かった。今日は遠くからわざわざ来たんだし、ゆっくりして日頃のお仕事の疲れをとっていってくださいね。役者の私はあまりおもてなしはできないけど」

「珠樹とは結婚を前提に付き合っているんです。それで、母さんにも一目会わせたくて、連れてきました」

「そう……。ふたりとも幸せになるんですよ。この子は両親のことでは不憫な思いをして育っているけれど、心根は優しいから、幸せな家庭生活を送っていけるよう、旅の空からこれからいつでも願ってるからね。良い報告を待ってますよ。じゃあ、そろそろ夕方の公演の準備に向けて戻らないといけないからね」

そう言ってふたりに手を振ると、圭の母、友部梨花は部屋の奥へと戻っていった。


「お母さま、きれいな方ね」

「まあ、一応、役者だからね。夕方の公演も見ていく?」

「そうね、せっかくだから、見ていくわ」


 ふたりは再び、舞台の方に戻り、それからしばらくしてはじまった公演を観劇した。そしてその後、圭があらかじめ予約しておいた近くのホテルへと向かい案内された部屋を確認し、ホテルで用意してあった夕食を食べた後、部屋へと戻った。

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