第23話:幸子の全国珠算連盟1級・不合格
しばらくして、1988年があけた。今年は、春の全国珠算連盟の1級に
挑戦して、もし、不合格でも、秋の試験で、絶対に合格しようと父が言うと、
幸子がわかってると言った。今年の幸子は、覚悟を決めたのか、厳しい表情で
、絶対に風邪を引かないようにと、学校から帰ってきたら、必ず、うがい液で
うがいし、手を洗い、外に出るときには、必ずマスク着用するようにして、
出かけた。幸子の受験を知って、家族達にも、少し緊張感があったようだ。
2月になって、受験申込書をもらい、書いて、提出し、3月10日の試験を
待った。その日は、東京でも、みぞれ交じりの寒い朝だった。父は、有給休暇
をとって、幸子と一緒に試験会場に向かった。途中の道で、父がバランスを
崩しそうになって、何とか、転ばずに済んだが、危なかった。その時、幸子
が、ちょっと慌てて、大丈夫と、大きな声で叫んだ。その後、会場に入り、
開始時間となり、父が、受験当日に滑りそうになるなんて、我ながら、
馬鹿だなと、悔やんだ。
そして、幸子が、必要以上に、ぴりぴりしていたのが気になった。やがて、
試験が終わり、会場から出てきた幸子を見ると、ちょっと、顔が赤い気がして、
大丈夫と言うと、ちょっと緊張しすぎ、最後の方まで、答えを確認でき
なかったと言った。まー何とかなるだろうと、はげますと、駄目、絶対に、
合格しなければ駄目なのと、言った声に、父は、驚いた。家に帰っても、
心配そうな幸子の顔が気になってしょうが無かった。数日後、不合格の通知
が届いて、幸子は、その通知を見て、泣き出して、あんなに練習したのに
と大声で泣いた。
それを見ていた母が、人生、いつも成功ばかりとは限らないのよ、仕方ない
でしょう、次に成功するにはどうしたら良いか考えた方が良いわよと諭した。
暖かくなった4月の第二日曜日に、犬山重臣が、家族4人で、世界的に珍しい
魚や水棲・陸棲動物を展示している池袋のサンシャイン国際水族館に出かけた。
ソロバンの1級試験に落ちてから、塞ぎがちだった幸子が、マンボウや、
クリオネ、デンキウナギを見ているうちに、少しずつ明るさをとりもどした様な
感じがして、犬山重臣が、実は、俺も1級の試験の時に落ちたんだと打ち明けた。
絶対合格したいという気持ちが先走って、冷静さを失ってしまい、思い通り
に行かなかったためさと言い、秋に受かれば良いよと、幸子に言うと、お父さん
も落ちたと聞くと、驚きながら、何か安心した表情になった。
水族館・見学を終えて、池袋の町で、美味しいものを食べていこうと言い、
ステーキの美味しいという店に入り、ステーキを頼んだ、もちろん、良男は
一番大きいサイズを頼んで、料理が届くやいなや、すごい勢いで食べ始めると、
姉の幸子が、誰も、あんたのステーキを取らないから、もっとゆっくり
食べなさいと言うと、ハーイと言って、小さく切って、食べ出した。
その後、デパートを回って、3時過ぎに喫茶店には行って、ジュースや
アイスクリーム、珈琲をいただいて帰る頃には、幸子は、いつもの明るさを
取り戻しているのに、両親が安心した。
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