理不尽2

「なあ、俺は、どうすれば、テストでオール90点を、たたき出せると思う?」


「カンニングしかねぇだろ? もしくは替え玉? 教師を買収するという手もあるな」


「俺は、真面目に聞いているんだが?」


「奇遇だな、俺も至って真面目だ」


 学校に到着して直ぐに、幼馴染であり学年1の成績を誇る木島 隆太(きじま りゅうた)に助言をもらいに来たのだが、見事に空振りに終わる。


 コイツは休み時間もテキストを広げて勉強している、いわゆる変人である。 コイツならば、何とかしてくれるかもしれない、という一筋の望みを託したのだが、どうやら無駄だったようだ。


「大体、急に勉強して点数が取れるようになりたい、という考えが、俺からすればまず、おこがましいわけなんだが?」


 吐き捨てるように言う幼馴染の意見も、ごもっともである。 地道にコツコツと努力してコイツは学年1位という成績を手に入れたのだ。 言葉の重みが違う。 だが俺は、正論が聞きたいわけではないため一蹴されても食い下がる。


「究極的に頭がよくなるサプリとか、1度見たら忘れなくなる古の勉強法とかでいいんだ、頼む教えてくれ!!」


「あるわけねぇだろそんなもん。 そんなもん、あるなら俺が使ってるわッ!! つーか今日はえらく絡んでくるな、自習の邪魔だから何処か行けよ」


「知るかよ、こっちは死活問題なんだ、何とかしてくれ」


 食い下がる俺に対して蔑むような眼を俺に向けてくる幼馴染。 どうやら、貴重な自習時間が奪われて機嫌が悪いようだ。 コイツは友人より勉強を取るという変態なのだろうから、そういった態度をとるのも仕方はないが幼馴染として、なんとも寂しいものである。


「死活問題? ……一応聞いてはみるけど何があったんだ?」


 しかし、ながらそんな勉強大好き、ガリ勉野郎でも一応は話を聞いてくれるらしい。 確かに説明不足だったと思い、俺は昨日の出来事を簡潔に隆太に伝える。


「夜、姉暴走、俺、テスト、オール90以上、帰れない、以上」


「いや、そこは以上じゃなく異常だろ。 なにそれ、児童相談所とかに連絡した方が良くない?」


 自分でも簡潔すぎる説明のため、もしかしたら伝わらないかもしれない、などと思ったが、流石は学年1位、今の言葉が足らなすぎる説明でも、きっちり理解できたらしい。 加えて、意外にも本気で心配してくれているようだ。


「児童相談所ねぇ……よく分からんが、ああいうのって、せいぜい中学生までが対象なんじゃないか? そういうイメージが勝手にあるんだが、高1の俺でも助けてくれるものなのか?」


「すまん、無理かもしれん」


「そうか、世の中世知辛いな」


 世の中の厳しさを噛みしめながら、俺は、ため息交じりに呟いた。

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