『大好き』を探して

 夕刻の薄闇の中、キミは帰る人々の背中を道端から見つめている。

 『大好き』を見送ったキミの、次の『大好き』を探す為に。

 キミの目の前を灰色の背中が通り過ぎる。すこしくたびれた背広、丸まった肩、疲れが滲んだ横顔は、でも唇が優しく綻んでいた。

 その時、キミは今まで出会い見送った、たくさんの『大好き』と同じモノを感じて、背広の裾に飛びついたね。

 目の前を白い袋が揺れる。丸いモノが三つ入った袋。ほんわり漂う暖さにキミの小さな鼻がうごめく。

「キュイ!」

 幸せの匂いにキミは背をよじ登ると背広の色に変わったんだ。


「きゃあっ!」

「どうしたの! お母さん!」

「お父さんの背中から灰色のモノがあんまんの袋に飛び移ったの!」

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