第35話 アマチュアサッカー選手の息子達 その2
それでドイツのサッカ-選手がどのくらい年棒をもらっているかと言えば、もちろん選手によって差はあるが、ざっくり簡単に言うと1部リーグなら数億円、2部から3部で何千万円か1千万円前後になり、4部になるとセミプロという立場で年棒はぐっと減りだいたい300万円前後、でも家や車付きでなんとか生活でき、アマチュアの5部ぐらいで年棒100万円前後でサッカ-だけでの生活は無理ということになるらしい。
先日の試合から数日後の水曜日に、うちの長男が対戦したのは、彼が12歳から17歳くらいまで所属していた彼自身の昔のクラブで、つまり長男の昔の知り合いもいるチ-ムで現在5部リーグなのだが、選手達は1ヶ月平均約800Euro(日本円で10万円くらい)の給与が出ているということだった。
現在うちの長男のいる8部リ-グより4部も上で、結果は6対0で大負けだったが、先方の一番上手なD君は後半残り15分くらいに登場だったので、5部リ-グのチ-ムから見たら、うちくらいの対戦相手は
「端から相手にしていないから、チ-ムの中でスタメンではない選手を出す機会」くらいの位置づけなのだろう。
今回はドイツ杯ということで、これはドイツ中でのト-ナメントなので、このように大変な格差があるチ-ム同士の試合が最初の頃は発生するのである。
それで先方の最優秀選手D君は長男がこの地域の町の一番強いクラブへ変わった際、同じ年齢のチ-ムの1軍の子であった。
このときの1軍の選手達は町の選抜であるのはもちろんのこと、兄弟か親がプロのサッカ-選手だったり、本人が1部リ-グの下部組織に所属していてそこから戻ってきたばかりだったり、とにかくレベルが並みではない特別な子供ばかりがいるチ-ムだった。
うちの長男は2軍の中では特に上手と評価されていて、そんなわけで1軍の試合もたまに出してもらってはいたけれど、1軍の長男のポジションにはいつもこのD君がいて、上手な上に体も大きいD君にはうちの長男は到底適わなかった。
あとその町のチ-ムへ移ったのも12歳とちょっと遅すぎて、1軍に入るより、2軍で完全スタメンの方が良いだろうと評価されたわけである。
で、そのD君がプロの下部組織へ移った16歳くらいの時には長男にも1軍行きのお声がかかるのだが、その頃は大学資格試験のアビトゥアが忙しくなった頃で、また非常にお互いに心通じたコンゴ出身の監督(当時23歳くらいで兄貴のようだった)も現れ、長男は結局1軍行きは選ばずに、数年後にはうちの村の10部リ-グに戻ってきたわけだが、そのD君にしても1部の下部組織から5部リ-グに戻ってきたわけで、多分プロ入りを長年念頭に置いてきたD君にとっては年棒100万円前後という将来は考えてもいなかったことだろう。
その当時1軍にいたその子供達で、現在1部リ-グにいる選手というのはいないようで、最高で5部リ-グということで正直私には信じられなかったほどだ。
数人は1部リ-グの下部組織へ移っていたからくらいだったからだ。
中でもK君は選抜の中でも町のカテゴリーではなく、州のカテゴリ-の選抜へ選ばれるかどうかというくらいのレベルで、もう一人のI君はお兄さんが1部リ-グの選手なのだが、本人も郡を抜いて上手であったし、お父さんが元プロ選手だったL君も将来は絶対プロだろうと言われていた。
でもプロのチ-ムの下部組織の子供達でもそこの大人のチ-ムへいけるのは、たった1人か2人らしいので、サッカ-少年達は大人のチ-ム入りする際はほとんど大多数の子は3部や4部、あるいは5部へとレベルを落とさなければいけないということになるのだろうが、4つも下のカテゴリーへ行かなければならないとは厳しい世界である。
ドイツでもプロのサッカ-選手になるというのは、らくだが針の穴を通るくらい大変なことなのだろう、と言っては言い過ぎかもしれないが、私は当時の将来がキラキラ輝いて見えていた彼らの少年時代を知っているので、3部リ-グのプロにもあるいは4部リ-グのセミプロにもなれなかったという現実が信じられないくらいなのである。
それでひとつ言いたいのだが、私が書いているブログのタイトルが
「ドイツ片田舎でアマチュアサッカ-選手を目指している三人兄弟の奮闘気」という決してふざけているのではないのである。
アマチュアリ-ガーも5部から11部まであり、うちの長男に10部のチ-ムから来た1ヶ月200Euroのお小遣いというオファ-は、正直私のブログのタイトルのアマチュア選手の道を達成してくれたと言っても言い過ぎではない。
当時私はアマチュアでも1ヶ月100Euroでもお小遣いになれば本人は楽しいだろうに、と願っていたからだ。
また次男にしても最下位10部チ-ムでまだ頑張っている。
18歳くらいでサッカ-をやめてしまう友人もたくさんいる中、元来ちゃらんぽらんでいいかげんな次男がチ-ムで頑張っているのは偉いなと最近思うようになった。
これもアマチュアサッカ-選手の道を頑張っているということだろう。
ところでその当時長男次男の入っていた町の選抜の子しか行かないクラブで4歳からサッカ-を始めることができた幸運な三男にいたっては、7歳の時にはサッカ-をやめしまい、ブレイクダンスを始めた。
そんなわけで我が家においてはアマチュア選手でいるのも簡単なことではなく、またそもそもサッカ-をしているのは長男と次男だけで三男はとっくの昔にやめており、ブログのタイトルは現状には全く合っていないのだが、なんとなくそのままのタイトルで書き続けている状態なのだ。
変なタイトルがなんとなく気に入っていて、変更することができなくなってしまっている現状なのである。
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