第18話〈インポッシブル〉


やぁ。

僕の名前は金田利蔵。

ここは花山荘。

リビングで正座をさせられている。


ユウジ「って事で、連行してきました隊長」


ミミ「うむ。貴様、何をしたか分かってるな?」


金田「い…いや……その……」


ミミ「ああん!?」


金田「ああ……分かってます……はい……」


なぜこの僕がこんな子供にペコペコしているか。

理由は非常に簡単だ。


ミミの横、すごい大男がこじんまりと座っている。

見覚えがある。

こいつ佐藤一郎だ。


金田「そそ……そんなことより、佐藤さん……?ですよね……?」


佐藤「え?あ…そうですが……」


金田「な…なんでここに……?」


佐藤「え……いや、だって…ナツメくんが……」


金田「し……知り合い…?ユウジくん……」


ユウジ「うん、そうだよ」


えぇ……

世界チャンピオンがなんで……


ミミ「おいコラクズぅ!!貴様、私を差し置いてチャンピオンに夢中かコラ!」


金田「い……いや……」


佐藤「えっと……金田くん?ここはミミちゃんの言うこと聞こう?ミミちゃんもちょっと落ち着いて……」


ミミ「ふんっ!佐藤さんが言うなら仕方がない…命拾いしたな!」


金田「いつ命落としたし……」


ミミ「まず!貴様……一体何をしたんだ!?」


金田「大雑把過ぎて何を話せば良いか分からな……」


と、言おうとしたが、佐藤の視線が馬鹿みたいに重かったがため、僕は素直に言うことにした。


金田「簡単に言えばナツメの監視役。ナツメはどんな性格で、どんな生活を送っているか。身の回りの環境や人間関係などを婚約先に伝えたんだ。それだけだよ」


ミミ「……なんだ。素直に言ってくれるのか」


佐藤「悪い人じゃなさそうだね」


ヤミ「で…でも、この人がナツメさんを……」


ユウジ「まぁ、ミミちゃんのことをほったらかしにして伝えなかったのはなかなかだけどね」


金田「それは……」


ユウジ「まぁしゃーない。お前は昔からそうだしな。何事にも適当なんだよお前は」


佐藤「あー……金田くん?良くないよそういうの……」


佐藤からのお説教には大いに耳を傾けた。


金田「分かってますよ……けど……」


佐藤「……まぁ、平気でこんなことできるってことはさ。君はナツメくんのことが嫌いなんだろうね……」


僕は言い返すことができなかった。

事実だからだ。

何も偽ってない、真実だからだ。


金田「……はい……」


僕は肯定した。

無視するのも名残惜しい。

佐藤は笑った。


佐藤「分かるよ。その気持ち。苦手な人にはやっぱり本気になれないよね。でもね?ボクシングは違うんだよ。苦手な相手でも突っかかっていくんだ」


そりゃボクシングの選手が言ったら説得力もある。


佐藤「だから、私はね?ボクシング規準に考えることが多いから、やっぱり全力を尽くしたいんだ」


金田「……ナツメくんは嫌いなんですか?大切なんですか?」


佐藤「そ…そんな!滅相も無い!大切さ。彼も、彼の父もね。なんせ、昔お世話になったからね」


ユウジ「え?そうなの?」


佐藤「うん、昔ひねくれていた私に色々教えてくれたんだ。だからね、私は彼の息子であるナツメくんもきっといい人になる。そんな人のピンチを助けられないなんて情けないなってさ」


佐藤は後半ユウジに言っていたが、言い終わるとこちらを向き、笑顔になる。


佐藤「だけど、君は君だ。仕方ないよ。あんなことしたからって、私たちは責めないよ」


金田「あ……ありがとうございます……」


ああ、良い人だ。

こんな人が人殴ってたのか。

僕は安心していると、中指を立てるミミが見えた。

僕は緩んだ頰のまま、中指を立てるミミを見つめていた。


ミミ「責めてません」


金田「責めてる以前の問題でしょ」


佐藤「ちょ!ミミちゃん!そんなはしたないこと……!」


ミミ「私なりの挨拶ですぅ」


ヤミ「ミミちゃん…汚いよ……」


ミミは大きく溜息を吐いた。


ミミ「全く、こんな立場なのにこんなに余裕でいられるとはな。お前にはモラルってのもが無いのか?」


なんだこいつ、ナツメと同じこと言ってやがる。

たった二カ月住んだだけなのに、こいつらはなんでこうも互いを……


金田「……ミミちゃん、君はナツメくんが大切なのかい?」


ミミ「はぁ?急になんだよ」


金田「ここまでする理由がわからないんだ。佐藤さんは分かる、そのにいる…えー……」


ヤミ「ヤミです」


金田「ヤミちゃんも…多分君に誘われたんだろう?だが、当の本人の君がわからない。長らく家族してるわけじゃ無いんだろう?なぜここまでする?」


ミミ「あ?そりゃナツメが必要だからだ」


金田「……利用してるってこと?」


ミミ「違う。半分そうだが、なんせ縁があるからな」


金田「縁?会ってたかが二カ月だろう?」


ミミ「なんだ?時間で縁がどーのこーのが決まるのか?」


金田「だって異常だ。そこまで時間が経ってないのに…大げさすぎる」


ミミ「あのだなぁ……」


ユウジにも同じ質問をしたものの、やっぱり本人に聞くのが一番信じれる。




ミミ「人ってのは、結構簡単に人に懐くんだぞ」




金田「は……はぁ…?」


ミミ「言うのが照れるからアレだが、好きになるのも、愛着が湧くのも、結構簡単なんだよ。だからさ、愛に時間なんて必要ないんだ」


金田「……君は本当に6歳か……?」


ミミ「ああ、よく言われる」


僕はしばらく沈黙に浸った。

この子も、ユウジたちも……


大切なんだな。

ナツメのこと


僕だけが、それを理解してなかったのか

なんと愚かな

ただ、自分の価値観の上でやった行為がこうも後悔を煽るとは

僕は口を開いた。


金田「……皆さんは…大切なんだね。ナツメくんのこと……」


僕は悲しい目で、みんなを見る。


金田「僕は最低だね……そんなことも知らずに…引き離すようなことしてさ……」


僕は上半身を下げ、見事な土下座を見せる。




金田「すみませんでした。僕を許さないでください……」




もう決心した。

ここで動かないといけない。

ユウジの言う通りだ。

ここで何もしないでいるのは哀れだ。


だって……


ここで、悲しんでる奴らがいる。

それを知らんぷりで……どうする?


下手したら、僕のビジネスにもプライドにも関係してくる。

友情も、ここまで積み上げていた全ても


ミミ「はっ!いい気味よ」


佐藤「ミミちゃん!」


ミミは笑った。

そして、言った。


ミミ「けど、こんなことする、そんな勇気もきっと絞り出したものだろうな」


6歳にしてはえらく上からだ。


ユウジ「頭上げろ金田」


ユウジは立ち上がった。

僕は顔を上げ、ユウジを見る。

ユウジはフッと笑った。




ユウジ「助けに行くぞ」



金田「…不可能だぞ?」



ユウジ「上等だ」




僕も笑った。



第19話へ続く……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます