第17話〈大切の価値〉



金田「……ミミちゃんたちがナツメを助けに行く?」


ユウジ「そうなんだよ…そう言ってソワソワしてんだよぉ……」


喫茶店、金田はレモンティーを、俺ことユウジはメロンソーダを


金田「…それで?なぜ僕のところへ?」


ユウジ「だってさ、金田ってナツメが結婚云々の時にパーティーにナツメ誘ったって言ってたからさ。なんか知ってんのかなぁって」


金田「?誰から聞いたんだい?」


ユウジ「ナツメ本人からさ……はぁ…どうせ帰ってくるってのにねぇ」


金田「……そうだね」


俺はメロンソーダをストローでチューチュー飲む。


ユウジ「んで、何か知ってる?」


金田「……生憎だが、そこまでの情報は……」


ユウジ「そっかぁ…うーん……」


金田「失礼だが、それは子供によくあることじゃないのかい?ほっとくのも一つの手だと思うが」


ユウジ「まぁ……ミミちゃんはただの子供って言うには結構異常なところあるからなぁ…マジでやり兼ねないのよ」


金田「異常?口調とかか?」


ユウジ「それもそうさ。だけど、それよりもっと素直なところがあってさぁ」


金田「素直ってどういう?」


ユウジ「嘘をつかないんだよ。しょーもないこと以外な。本当の緊急事態の時は、真面目なのか不真面目なのかわからないが、自分の言ったことは素直にやるんだ……」


金田「健全な子供じゃないか」


ユウジ「だから、助けに行くなんてことを平気でやろうとしてるの」


金田は笑った。

俺はそこそこの真顔で見つめる。


金田「君は本当にロリコンなのか…?それとも、そのミミちゃんがそんなに大事なのかい?」


ユウジ「大事って……まぁ、今は子守頼まれてるし」


金田「そんなこと放っておいたらどうだい?子供一人じゃ何もできないし」


ユウジ「まぁな…やろうとしても、やることがないしなぁ……けど、本当に帰ってこなかったらって考えると……どうもねぇ……?」


金田「何か困ることでも?」


ユウジ「まぁ…ミミちゃんのことを思うとね。ナツメは一応保護者なんだし」


金田「保護者かぁ…保護もいらないような性格だけどね」


ユウジ「違うさ、保護なんて名前だけよ」


金田「名前だけ?」


ユウジ「一緒に生きる人が保護者だよ。ミミちゃん一人で生きるなんて、一人で助けに行くくらい無理なことなんだよ」


変なこと言ったなって自覚はある。

ただ、ミミにとってナツメは保護者であり、もちろん家族だ。

出会ってまだ二カ月だけど

だけど、60日も共に過ごしたなら上等だ。


金田「まさか……君、助けに行くなんて言わないよね?」


俺は言葉を出さずに、口をコップにつける。

コップから離すと




ユウジ「助けになんて大層なものじゃない。ただ、会いに行くだけ」





金田「……やめといたほうがいい。危険だ」


ユウジ「何が危険なんだよ」


金田「一般人が会っていい人じゃ無い。下手したら取り返しのつかないことになる……」


俺は笑い混じりで言った。




ユウジ「知らねぇよ」




金田は驚いた。

止めることができないと確信したのだろうか。


ユウジ「ナツメは俺の数少ない親友の一人だ。そいつが大事にしてるミミちゃんの気持ちに応えられなくてどうする?」


いつか帰ってくる。

だから、会いに行ってもいい。


俺は思った。

会いに行けないなら助ければいい。


ユウジ「お前もわかるだろ?ナツメが馬鹿みたいに変わったこと。ミミちゃんが来てから馬鹿みたいに明るくなったこと」


金田「そんな理由でか……?」


ユウジ「上等だろ。それくらい大切なんだよ。ナツメにとってミミちゃんは、ミミちゃんにとってナツメは」


俺はメロンソーダを飲み干した。


金田「ま…待て!今ナツメに会いに行くなど不可能だ…!」


俺はニヤついた。


ユウジ「何が不可能なんだよ」


あー…実を言うとな?


俺、結構知ってるのよ。

金田が何をしたか

何をしでかしたか


ナツメから聞いたんだ。

今朝の出来事。


金田「な…何かって聞かれると……君が一般人だから……」


ユウジ「親友の結婚祝いだろ?何が悪いんだよ」


金田「だっ……!相手が悪いんだ!」


ユウジ「それをなんだってんだ?俺はナツメに会いに行くんだ。相手に会う気は無い」


金田「ぐっ……」


金田は隠している。

俺の親友をこんな大事件に巻き込んだことを


俺がナツメに会うことでそれがバレること。

避けたいんだろうな。


ユウジ「知ってるんだろ?お前」


金田は目を瞑る。

深く深呼吸をすると


金田「……僕は……悪いことをしたと、君は思ってるかい?」


ユウジ「ああ、思ってるさ」


金田「正直、僕が嫌いになったろう」


ユウジ「ああ、とんでもないクズだと思ったよ。本当に、死んで欲しいくらいにね」


金田は再び目を閉じた。

首の力を抜き、だらんと下を向いている。




ユウジ「だけど、それはお前が恩を仇で返した時の話だ」




はっきり言おう。

俺は友達を大事にする主義でね。

金田については何一つ怒ってない。


ユウジ「チャンスなんて大層なものじゃない……ただ、ここで動くのが正解だと俺は思うよ」


俺は微笑んだ。


金田「あ……あ……」


ユウジ「あ、とりあえずナツメの家行こ。ここで話すのアレだし」



第18話へ続く……

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