第16話〈負の連鎖〉



ナツメ「ん……あ……?」


少し暗めの外。

そっと眼を覚ますと椅子の上。

寝てしまったのだろうか。

昨日のあの出来事の後、自分の思考回路がフリーズしてショートしたのだろう。

前のめりになっていた体を少し起こすと、背中に何か乗っていることが分かった。


ナツメ「あ…?あれ……?」


後ろを見れるだけ見て、確認すると、それはエミカであった。

椅子に座りながら俺の背中にもたれかかり、スヤスヤと眠っている。

いつのまにか背中に毛布もかかっている。

エミカがかけてくれたのだろうか。


ナツメ「な…なんで?え……?」


エミカ「ん……?」


エミカは少しずつ目を開ける。


ナツメ「え…?えぇ…?エミカさん……?」


エミカ「あ……え……?」


徐々にエミカも体を起こし、完全に起き上がると目をこする。


エミカ「寝ちゃってました…?」


ナツメ「いや、多分僕の方が先に寝ちゃったかと……」


エミカ「寝てたんでしょう……今は何時くらいでしょうか……?」


エミカは時計を探す。

俺はスマホを手に取ると、大量のメールの通知を見つけた。


ナツメ「まだ早朝の6時……黒田さんからメールが……」


エミカ「ん……?」


エミカは俺のスマホを覗き込む。

パスワードを打ち込み、メールを確認する。


ナツメ「なんだこれ……?書類の写真……?」


エミカ「なんでしょう……これ…」


写真の一枚を表示して、何を書いてあるか読む。

それはカレンダーのようになっていて、1日1日細かく予定を書いてある。


ナツメ「予定表……?誰の……?」


エミカ「お父様の……?いや……」


ナツメ「善郎さんの……かな……?」


エミカ「違う!これは……これは!ナツメさんのだ!!」


エミカは急に叫んだ。


ナツメ「……え?」


エミカ「予定を一通り見て、どれを見てもお父様視点で書かれてない……全てナツメさん視点で書かれている……」


ナツメ「……本当だ……【善郎も出席】の時点で違う可能性が高い……」



エミカ「え?それってどこですか……?」


ナツメ「ほら、ここの【結婚式】ってところ」


エミカ「えっと……【結婚式、1日前にハワイへ自家用ジェットで善郎、エミカと共に向かう。ハワイ到着から1日後、結構式開始。結婚式には善郎も出席、しかし善郎は準備のため着いた日にハワイの会場へ出発】ですか……ん?これって1日後じゃないですか……」


ナツメ「1日後か……ふーん……」


しばらく二人は考える。


ナツメ「1日後!!!???」


エミカ「ハワイですから……今日出発ですよ!!じゃないと間に合わない…!こんな急なの聞いてない……!」


ナツメ「ハワイまでは善郎さんもご一緒に……だったら今日出発だ……」


俺は画像を閉じ、他の予定表を見る。

ぎっしり詰まったら予定を見て、俺は呆然と口を開けている。


ナツメ「休みないじゃん……どうなってんの……」


エミカ「こんな過酷な予定……もはや奴隷ですよ……」


ナツメ「なんだよ……次から次へと……クソ!」


エミカ「……結婚式まであげたら、もう後戻りはできづらくなります……今のうちに手を打っておくべきでした……」


ナツメ「もう時間が無い……今日切り出すのも……飛行機用意してるだろうに……」


エミカ「どうしましょう……」


ナツメ「……ダメ元で黒田さんに電話してみる……なんとかしてくれればいいけど……」


俺はスマホを耳に当てる。



ナツメ「繋がらない……?電源を切ってるのか……?」


エミカ「おかしい……黒田はいつもならこんな時間、起きてるはずなのに……」


ナツメ「黒田さんって……」


エミカ「ここで寝泊まりしてます…一回部屋へ向かうのも手ですが……」





早歩きで歩く廊下

俺とエミカは焦る表情で進む。


エミカ「ここです…けど……」


ナツメ「どうしたんですか?」


エミカ「ドアに名前が貼ってあるはずなんです……貼ってない……」


ナツメ「……ま……まさかな……」


俺は大急ぎでドアを開ける。

部屋には誰も居なく、ホテルのように整理整頓されている。

俺たちは中に入り、必死に探す。


ナツメ「……居ない……」


エミカ「そんな……ここのはずなのに……」


ナツメ「どこか別の部屋に移行されたとか……?」


エミカ「いいえ……よっぽどのことがない限り、そんなことはないはずです……黒田は私が小さい時からこの部屋にいました……なのに……」


俺たちはしばらく考えた。

行動をやめ、しばらくじっと



善郎「エミカ!ナツメくん!そこに何をしている!?」



善郎の声に少し驚く俺たち。


エミカ「お父様!黒田は…黒田はどこに!?」


善郎「まさか、探していたのか…?」


ナツメ「エミカさんが朝から心配してました…黒田さんはどこにいるんですか……?」


善郎「なるほど……彼は……」


善郎は少しニヤける。




善郎「彼は私が解雇した。ボディーガード、執事の分際で主人のプライベートに侵入しようとしたからな。彼は今実家にいるだろうな」




エミカ「か……解雇……?」


ナツメ「……あの写真は……」


善郎「ナツメくん、何か言ったか?」


ナツメ「……いえ、特に意味のあることではありません」


善郎「……ならいい、今日ハワイに出発する。結婚式でのウェディングドレスやタキシードは用意してある。気持ちだけでも準備しておいてくれ」


ナツメ「……今日ですか?」


善郎「なんだ?不満でもあるのか?」


ナツメ「はい、事前に何も報告がなかったものですから」


善郎「そうか、それは悪かったな。だが、決まってしまったものは仕方がない。頼んだよ」


善郎は部屋を去っていった。

エミカは顔を下に向けていた。


エミカ「黒田……」


その目から涙の雫が落ちていく


ナツメ「あの写真は……黒田さんが俺たちに残した希望だったんだ……クソッ!!!!あの時!気づいていたら!何か変わってたかもしれないのに……!!」


俺は壁を拳で叩く。

八つ当たりである。





ユウジ「あ、もしもし?金田?」


金田「ん?ユウジか…君から来るのは珍しいな…」


ユウジ「今度お茶でもしないか?暇だし」


金田「あー……そうだな、僕も暇だし」


ユウジ「なら決定〜」


ユウジは電話を切る。


ユウジ「……どこにしようか」



第17話へ続く……

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