第15話〈爆発〉



金田「どうしたんだい?話があるってさ」


ナツメ「ああ、話があるんだ」


パーティーが終わり、夜遅く。

俺の部屋に金田は入る。


ナツメ「どういうことか、全部話してもらおうか」


俺は椅子に座った。

金田も同じく、俺との間に机を挟んで椅子に座る。


金田「すまないが、部分的に頼めるかい?全部と言われても……」


ナツメ「ああ……察しが悪いのは嫌いだよ……俺が結婚したことで、お前が関与したこと全部だ……ムシャクシャしてるんだよこっちは……」


金田「ああ、それか。何をそんなに怒ってるんだ?」


俺は右手を太ももで膝をつき、手のひらを自分のデコに乗せ、下を向く。


ナツメ「言ってくれ……頼む……怒りたくない……」


金田「はっ、エミカさんは君の性癖に合わなかったかい?」




ナツメ「早く言え!!!」




俺は叫んでしまった。

俺は歯を強く噛み締め、貧乏ゆすりを続けてる。


金田「……善郎さんから頼まれて、君の生活を覗かせてもらった。その結果報告をしただけさ。後の判断は善郎さんの独断だ」


ナツメ「それだけじゃないだろ……?」


金田「それだけさ。他に何があるっていうんだ」


ナツメ「善郎さんは俺にミミがいることを知らなかった……俺が一人暮らしをしてると思ってる……お前はミミに会ったことがあるのにな……どういうことだ?」


金田「ミミ……?ああ、あの生意気な子供か。面倒くさかったから報告しなかったよ。君もあんまり彼女を大切そうにしてなかったしね」


ナツメ「……大切にしてない……?」


金田「おっと、気に障ったかい?まぁ、僕はそんな人間だとでも思っておいてくれ。嫌いになったら堂々と縁を切ってくれ。それでは、僕は失礼するよ」


金田は立ち上がって歩き出す。

俺は居ても立っても居られず、勢いよく立ち上がって金田の胸ぐらを掴んだ。


金田「……なんだい?」




ナツメ「てめぇ……ふざけんなぁ!!」




ドカァ!!!



ナツメは金田を思いっきり殴った。

金田は尻餅をついた。




ナツメ「ミミは……俺の家族だ!何が大切じゃないだ……てめぇにはモラルってものが無いのか!!??」


金田「君の方がよっぽどモラルがないよ……ナツメくん、人をいきなり殴るなんてさ」


ナツメ「人の感情を弄んで!人から家族を取り上げて!そんなクズを殴って何が悪い!?」


金田は立ち上がる。


金田「あのだな……僕は人を殴ること自体をモラルが無いと言っているんだ!!君の主観混じりの意見なんて求めてない!クズを殴って何が悪い……?僕は堂々と言ってやる!殴ることが悪いんだよ!!」


ナツメ「はぁ!?俺だってそんな屁理屈聞いてねぇんだよ!!」


金田「屁理屈ぅ!?ありえない…口論で負けたからって屁理屈って言うのは初めてだ……」


ナツメ「お前…口論で勝った気でいるの?いつまでも驕り高ぶってんじゃねぇよ!俺にとって…ミミがどれほど大切か分かってんのか……!?」


金田はハッと笑う。


金田「その態度だと、本当に離婚を考えてるっぽいね……冗談かと思ったよ……」


ナツメ「なんでそれ知ってんだよ……!」


金田「君にとってミミがどれほど大切は知らないさ。だけどさ。君は自分がやろうとしてることがどれほど勿体無いことか分かってるの?」


金田は一回殴られたためか、少しふらついている。


金田「こんな財閥の家族の一人、憧れのセレブ生活、あんな生意気なガキの子守なんかよりよっぽど幸せじゃ無いかい?はっきり言うけど、馬鹿馬鹿しいよ、君の考え……」


金田は馬鹿にするような顔をして、小さく笑っている。

俺は何も考えられず、無口で、下を見たまま突っ立ってる。

そりゃそうだ。

いい奴かと思った奴に、ここまでコケにされたんだ。



ナツメ「……出てけよ……」



金田「君から呼んでおいて、そんな言い方はどうかと思うがね」


ナツメ「俺はそう言う人間なんだ……頭が割れそうだ」


金田「ハッ…君から縁を切る必要がなくて良かったな。では、お言葉に甘えさせて出て行くよ。こんなふざけたクズのいる部屋なんかに居たくないんでね」


俺は何も言えずに、金田が部屋を出るまで立っていた。

金田が部屋を出て行った時、俺はフラフラで、倒れそうに椅子に座る。

顔を下に向け、ずっと目を開けてる。

涙が何滴も落ちてくる。


ナツメ「……なんで……なんでなんだよ……俺は悪く無いだろ……」


ずっと自分に愚痴を吐いている。

心の中の自分はその愚痴を肯定している。



ガチャ……



誰かが入ってきた。

が、確認する気力はもうない。


エミカ「ナツメさん……?」


ゆっくり、足音がこちらに近づいている。


ナツメ「エミカさん……ごめんなさい……品のないところ見せちゃいました……」


エミカ「いいえ、全く気になりませんよ…」


ナツメ「……笑ってくださいよ……哀れな僕、面白いでしょう?」


エミカ「面白くないですよ……だから……」


ナツメ「エミカさんが笑ってくれたら笑顔になれる気がするんです……頼みます……」


エミカは黙る。

俺は下を向いたまま


エミカ「そんな笑顔、私いりません」


ナツメ「酷いですね……エミカさんは……」


エミカ「はい、私は酷い人です……だから……」


エミカは俺の背後まで歩く。

止まると、背中から俺を優しく抱きしめた。





エミカ「ずっと笑わないでいます……だから、思う存分泣いてください……今だけでも夫婦ですから……私はあなたの味方ですよ……」





夜の時が流れる。

俺は声に出さず、静かに泣いた。

さっきより大量に涙は出てくる。

涙は床にシミを作って行く。



ピロリンッ



メールが届くが、そんなこと気づくはずがない。





一方、花山荘では


ミミ「むむ!シリアスセンサー発動」


ユウジ「雰囲気ぶち壊し……」


ミミ「さてはナツメのやつ…!イチャイチャしてるなぁ!!」


ユウジ「割とマジでそうらしいなぁ……いいなぁ…」


ミミ「これはタイトルが変わってしまう……!」


ユウジ「例えば?」


ミミ「【俺と私はお金の上で笑ってる】とか?」


ユウジ「ドス黒いな」


ミミ「ああ!さっさと助けに行かないと!!」


夜になってもユウジは帰らず、ミミを見守ってる。

ユウジも心なしか嬉しそうだ。


ユウジ「本当に助けに行くなら、金田の手も必要だなぁ……」


ミミ「えぇ…あいつ誘うのか……」


ユウジ「そう嫌うなよ……あいついい奴だって」


ミミ「うーん……」


ユウジ「それが嫌なら、大人しくナツメが帰ってくるのを待つのみだな」


ミミ「うーん………」


ユウジ「ま、俺は元から助けに行く気なんてないけどね」


ミミ「なぬ!?お前!それでもナツメの友人か!?」


ユウジ「そのうち帰ってくるって…」



第16話へ続く……

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