第14話〈意外なお客様〉


善郎「私の愛しき娘、エミカの旦那様である、陸状ナツメくんです!」


ゴールデンタイムの真っ最中。

拍手に迎えられ、俺とエミカは華やかな衣装で舞台に上がった。

椅子に座ると、豪華な衣装に身を包み、豪華な食事をとる、多分大金持ちの人たちを見下ろすことができた。

手は繋がず、会話もしない。

エミカは笑顔を見せても俺は見せない。

黒田の言う作戦に近い行動を俺たちはとった。


エミカ「皆さま、今回は私たちのためにわざわざ足を運んでいただき、誠にありがとうございます」


マイク越しにエミカが呼びかける。


エミカ「つい2日前に籍を入れさせていただきました。皆様に私の旦那様をお披露目しくてうずうずしてました」


会場の人々は笑う。


善郎「何か質問があれば、是非」


記者会見かな?

一人の男が手を挙げた。


男「お二人はどんな出会いを?」


エミカ(来た…!ここでナツメさんに話を振って、ナツメさんが空気を濁す回答をすれば……!)


エミカはニヤつく


エミカ「どんな感じでしたっけ?ナツメさん?」


ナツメ「は?そんなことも覚えてないのかよ」


エミカ(あっ結構怖い、想像と違う)


エミカ「あっ覚えてますよ。確かパーティーで出会ったのが初めてでしたね」


ナツメ「確かにな。まさか結婚するなんて思ってもなかったです」


俺は気だるそうに回答する。

娘の旦那が無愛想なら、親父である善郎も多少困るだろう。

無礼だが、こうするのが妥当かもしれない。


エミカ「そんな感じです」


一人の男が手をあげる。


ナツメ「はい、どうぞ……って!あ!」


見覚えのある人がそこに立っていた。


佐藤「お久しぶりです……ナツメくん……まさか結婚してるとは……」


ナツメ「あっ佐藤さっ……あ、いえ、そんな」


エミカがマイクから口をずらし、小声で聞く


エミカ「知り合い?」


ナツメ「うん、ミミの友達のストーカー」


エミカ「えっ嘘……」


佐藤「お元気そうで何よりです。質問は特にないですが、知り合いなもので、少し気になってしまいました。では失礼します」


佐藤は席に着く


善郎「では、他の質問は」





質問はその後も続き、今は一通り終わり、別の人が舞台に立っている。

俺は駆け足で佐藤のいる廊下へ行った。


ナツメ「佐藤さん!」


佐藤「ああ、ナツメくん」


ナツメ「なんで…ここに?」


佐藤「ああ、私の友達がこのパーティーに誘われてね、良かったら来ないかって言われたんだ」


ナツメ「ああ、なるほど」


佐藤「ところでナツメくん?」


ナツメ「はい…?」


佐藤「よくないよ、ああ言う態度は、もっとビシってやらないと」


ナツメ「ああ…それには訳がありまして……」


佐藤「どんな訳があると言うんだい?」


ナツメ「その……結婚を断りたくて……」


佐藤「ん?もう結婚してるのに?」


ナツメ「はい……離婚って形で……」


佐藤「だからあんな態度を?」


ナツメ「はい……不仲を演じるために……」


佐藤「じゃあエミカさんも協力してるってこと?」


ナツメ「はい……」


佐藤は大きくため息をした。


佐藤「なら良かった……ところで、ミミちゃんは?」


ナツメ「それが……置いてきて……」


佐藤「は?置いてきた?」


ナツメ「だから……早く帰らないといけないんです……」


佐藤「はぁ!?」


ナツメ「だ…大丈夫です!友人に面倒見てもらってるんで……」


佐藤「……まさかだと思うけど、ここに馴染めなかったとか、財閥がめんどくさいとか、そう言う理由で離婚を進める訳じゃない……?何があった?」


ナツメ「それが……かくかくしかじか……」


佐藤「はぁ!?酒に酔わされてその勢いで籍を入れたぁ!?」


今思ったけど、この人、離婚することには驚かないのにこういうことには驚くんだな。


佐藤「離婚と聞いて少し驚いたが、それはいけない……」


あ、驚いてたんだ。



ピロリンッ



俺の携帯にメールが届いたようだ。

俺は携帯を確認する。


ナツメ「あ、呼ばれてるらしいです……失礼します」


佐藤「そうか……もし、困ったら遠慮なく頼ってくれ。できるだけ力になろう」


ナツメ「あ……ありがとうございます……」


なんか、離婚までうまく行きそうな気がしてきた。

俺は佐藤に背を向け、会場に戻ろうとする。


佐藤「あ!あと……」


ナツメ「ん?どうしました?」


佐藤「君の……苗字、確か【陸状】だったよね?」


ナツメ「そうですけど…」


佐藤は微笑みを見せ、俺に言った。




佐藤「君のお父さんにお世話になった」




ナツメ「……え?」


佐藤「呼ばれてるのだろう?早く行きたまえ」


ナツメ「は……はい!」





善郎「遅いじゃないか、ナツメくん」


ナツメ「すみません……知り合いがいまして……」


ここは舞台の裏側。

俺は小走りで来たが、えらく体力を消耗している。

ここ広すぎ

あまりしっかりと善郎を見てなかったが、しっかり目を開けてみると、その横に見覚えのある人物が立っていた。


ナツメ「か……金田……?」


金田「やぁ、お久しぶり」


ナツメ「な…なんだ、お前ここに来てたのか……」


善郎「なんせ、関係が深くてね。血は繋がってなくても彼にはお世話になったんだ」


金田「新婚さんはパーティーを楽しんでるかい?」


ナツメ「あ…ああ、めっちゃ楽しい……」


金田は嫌味を言っているのか?

もともと事の発端を辿れば、金田に誘われたあのパーティーが原因だ。

何か関連があるのか……?


善郎「舞台に上がった君、えらく機嫌が悪かったじゃないか。私のエミカに何か不満でも?」


ナツメ「いやいやいや!そんなそんな!めちゃくちゃいい人ですよ!大満足です!いやぁ、なんで僕なんか選んだんだってくらい……」


俺は言葉を詰まらせた。

そうだ。

今思えば、俺を選んで、対面してすぐに結婚したことになる。

いくら強制的だとしても、父親も少しは考えただろう。

決断の根拠はなんなんだ?

俺を本当にこの人は知っているのか?

監視されてた?

いつもの俺を知らないはずだ……


善郎「あまり無愛想にするのはよしてくれよ。ナツメくん?いつもの君はもっと真面目なはずだ」


ナツメ「いつもの…?はは、善郎さんと僕会ったことないですよね……?」


善郎「ああ、監視役というのはアレだが、そういうのを送ったんだ」


いたぁ…

監視されてた……


ナツメ「はは……いったい誰が……?」


俺は苦笑いで聞く。


善郎「それはだね……」


善郎は金田の肩に手を乗せる。




善郎「金田くんだ」




俺の苦笑いは消え、静かに驚いていた。

絶望に満ちた俺の顔を見て、金田はニヤける。


ナツメ「は……ははっ……」


俺は無理矢理笑顔を作る。




ナツメ「金田……後で時間があったら俺の部屋来いよ……二人だけで話がしたい……」




第15話は続く……

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