第13話〈帰るべき場所〉



場所を俺の部屋に移した。

椅子に座る、黒田と俺とエミカ


ナツメ「で……方法って……?」


黒田「そうですねぇ……ここはひとつ、エミカお嬢様から言ってみては?」


エミカ「えぇ…なんで私が……?」


黒田は咳払いする。


黒田「全く、人任せな人ですね。では私が……」


黒田の視線は真剣になる。


黒田「その名も【泥酔作戦】ですね」


ナツメ「うわぁ……」


黒田「エミカお嬢様のお部屋に来て、たくさんお酒を飲まされたんじゃないでしょうか?」


ナツメ「いや…記憶がなくて……」


黒田「これはこれは、重症ですね」


エミカ「お酒に酔った勢いを利用して籍を入れたの……ちゃんとサインもして……」


ナツメ「そ…そんなことやって大丈夫なの?」


エミカ「いいえ、大丈夫じゃない……私は反対したのに…お父様は強引に……」


ナツメ「あの……人が……?」


俺はすごく驚いた。

こんなアホの考えたような方法を使って籍を入れさせられたとか……


黒田「お父様は厳しいお方です。エミカお嬢様に婚約相手を決めさせただけでも、まだ優しい方でしょう」


ナツメ「これって訴えられる……?」


黒田「さぁ?私、法律には疎いので」


エミカ「いいえ、訴えられないわ」


ナツメ「えぇ…」


エミカ「というか、訴えさせてくれないと思う」


ナツメ「…えぇ…」


黒田「どうです?取りやめなんて考えるだけ無駄かもしれませんね」


俺は悩んだ。

ここはひとつの財閥

娘さんもいい人だし、訴えるまでの仕打ちをする気は無い…

てか、訴えられることも無理だとしたら……


ナツメ「養子って……いけますか?」


エミカ「……よ…養子!?」


黒田「あら?子供がいるんですか?」


ナツメ「い…いや……その言いづらくて……」


黒田「言いづらいということは、単純に娘息子では無いということですね」


ナツメ「はい……拾ったっていうか、急に押しかけてきて……」


エミカ「え…何そのアニメみたいな展開……」


ナツメ「女の子で、名前はミミって言って……6歳です……」


エミカ「6歳……?」


黒田「あらら、事情も知らずに本人だけ連れてきちゃいましたね。そのミミちゃんは家で一人ぼっち?」


ナツメ「いや…親友に面倒見てもらってます……」


エミカ「そ……そう……」


黒田「いつまでも長居するわけにはいきませんねぇ……ご友人さんにも迷惑かかるでしょうし」


俺は頭を抱えた。


黒田「ところで、ここは養子は無理です」


ナツメ「あ……そうですか……」


頭痛が激しく響く

二日酔いのせいか、過度なストレスのせいか

どうしようもない状況、深く考えても答えは出てこない。


ナツメ「……やっぱり、ここには居れないな……」


黒田「では、脱出を試みますか?多分無理でしょうけど」


エミカは黙りっきりだ。

黒田は真剣な眼差しを逸らさず、俺を見つめる。


ナツメ「俺には…帰るべき場所があります……やっぱり、諦められません……」


黒田「試みるんですか……どうなっても知りませんよ……」


ナツメ「とは…言ったけど、どうしましょう……」


俺はまた頭を抱える。


エミカ「……ナツメさん…?」


ナツメ「エミカさん…?」


エミカは俺の名を呼ぶも、黙ってしまう。

モジモジとして、可愛い。


エミカ「行ってしまうんですね……」


うわっ切な

行きたくなくなってきた。

エミカは覚悟を決め、凛々しい目で言った。




エミカ「なら…なら私も…!手伝わせてください……!!」




黒田も俺も驚く。


黒田「エミカお嬢様!?」


ナツメ「え!?エミカさんが手伝うことないですよ…!」


エミカ「いや、あなたの為ならなんだってしたい!あなたには帰るべき場所があるんですもの!」


ナツメ「いや……でも……」


黒田「エミカお嬢様、私もお供しましょうか?」


エミカ「………うん」


黒田「はぁ…これがバレたらクビですね……」


エミカ「でも…きっといい方向に向かうはず!黒田!あなたは私が守る、だから安心して」


黒田「私はボディーガードですよ?」


ナツメ「そ…そんな!そんなに無理しなくても……」


エミカ「無理なんかしてない!ミミちゃんが待ってるんじゃないの!?」


ナツメ「いや……多分待ってない……」


エミカ「でも…私……こんなの望んでない……あなたと無理してまで結婚して……幸せなわけない!」


黒田はフッと笑う。


黒田「確かに、あの作戦には正直苦笑いしかできませんでした。ナツメ様?私は多少無理してますが、あなたはもっと無理をなさったでしょう。全力で協力しますよ」


ナツメ「黒田さん……」


俺は感動の目をして二人を見る。


ナツメ「けど…どうしたらいいんですか……?」


エミカ「お父様に直接伝えるのはダメですし……絶対良くない方向に向かうから……」


黒田が人差し指を立てた。


黒田「ではここはひとつ、お父様に間接的にお伝えするのはどうでしょう?」


ナツメ「間接的?不仲アピールでもするってことですか?」


黒田「そうです。我々が決めたことにお父様は必ずと言っていいほど従わないでしょう。ご決断はお父様に任せて、その決断に通ずる道を我々が作るのです」


エミカ「なるほど……お父様の前で取っ組み合いの喧嘩をする……とか?」


黒田「いいえ、それは大胆すぎます。まずは些細なことでいいんです。例えばナツメ様がエミカお嬢様の行動に対して舌打ちするとか」


ナツメ「本当に些細なんですね……」


黒田「そうすればきっと、お父様はエミカお嬢様のことを思ってご決断を……」


エミカ「黒田!」


エミカは叫んだ。

少し怒声が混じった声だった。


エミカ「お父様は…私のためだなんて思ってない……どうせ、自分の居心地のためよ……」


黒田「……そうですね」


何この空気

俺にこの空気は重すぎた。

沈黙が続くと、黒田は立ち上がり


黒田「知ってますか?ナツメ様、明日はパーティーですよ」


ナツメ「え!?し…知らなかったです……」


黒田「そうですよね、お父様から私から伝えるように命令されましたし」


ナツメ「じゃあなんで聞いたし……」


黒田「早速作戦を実行できるチャンスができましたね」


ナツメ「そのパーティーで不仲アピールすれば良いのですか?」


黒田「はい、多くの人がいる中、影響力もそこそこあるでしょう」





場面は変わり、花山荘


ヤミ「えぇ!?ナツメさんが結婚!?」


ミミ「ああ、結婚だ」


ヤミ「おめでたいじゃん!ミミちゃん…なんで残念そうなの?」


ミミ「まぁ、帰ってこないってのもあるが、結婚までの道のりが特殊なものだから心配なんだ」


ヤミ「そうなんだ……」


ミミ「そこでだ、ヤミ」


ヤミ「ん?何?」


ミミ「ナツメを助けに行かないか?」


ヤミ「助けに……?」


ミミ「ああ、婚約先の家に乗り込んでだ!」


ヤミ「わぁ!かっこいい!!やりたい!」


さすが6歳児、考えが浅はかである。

二人は盛り上がる中、ユウジはそれを見つめてる。


ユウジ「……犠牲者が一人増えた……」



第14話は続く……

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