第8話 〈名探偵ナツメ withユウジ〉

土曜の朝


と、言っても朝というには少し遅い。

午前11時ごろ、花山荘の俺の部屋には二人の大人と二人の幼女が居座る。


ナツメ「ヤミちゃん…こんな早くにいいの?」


ヤミ「はい、母と父は仕事なので……」


ナツメ「そっか……まぁ、とりあえず作戦会議だ」


ユウジ「そこまで張り切るかね…?警察使えば?」


ナツメ「バッカ、証拠もろくにないのに……」


ユウジ「まぁ…それもそうだが……」


机を囲むように俺たちは座っている。


ミミ「んで?作戦は練ってあるのか?」


ナツメ「ああ、プロトタイプだが……一応はな?」


ミミ「本当にやる気満々だな」


ナツメ「だって、お前らの危機なんだぞ……何かあったら……」


ミミ「わかったわかった。あんまり聞かないでおく」


ユウジ「んで?その作戦って?」


ナツメ「ああ……その作戦はこうだ……」




1・ヤミちゃんとミミを共に歩かせる


2・その後ろを俺らが追跡


3・怪しいやつ発見!


4・怪しい行為を取ろうとした瞬間俺らがとっ捕まえる




ナツメ「って感じだ…」


ユウジ「会議するほどでもないな…」


ミミ「ああ、要するに私たちを囮に使うんだろう?」


ナツメ「まぁ、そんな感じだ」


ミミもユウジも納得のようだ。

だが、ヤミがまだ浮かない顔をしている。


ナツメ「ヤミちゃん、これでいいかな?」


ヤミ「え……あ……囮はちょっと……いい予感がしなくて……」


ナツメ「あー……だろうなぁ…」


ヤミ「その……ストーカーの人がすごく強い人だったらどうしようかと思うと……」


俺は少しニヤつく


ナツメ「安心しとけ、俺はともかく、ユウジはすごいんだぜ」


ヤミ「剣道……ですか?」


ユウジ「言ってすごくないぞ。ただ……」


ユウジは言葉を詰まらす。


ユウジ「少し荒れてた時……木刀一つで他校の不良どもを全員病院送りにしたっけな…そんくらい」


ユウジは少しドヤつきながら言う。


ミミ「と、ユウジの才能にはお墨付きだ。安心しろ、ヤミ」


ヤミ「う……うん!ミミちゃんが言うなら!」


ナツメ「俺らが言ってもダメなんかい」


ユウジ「ま、今から木刀取ってくるわ……ちょうど良くなるだろ」





ナツメ「ユウジ…木刀持ったか?」


ユウジ「ああ、俺のとっておきだ」


俺とユウジ、T字の曲がり角の左の電柱に隠れて待機。

ミミとヤミ、曲がり角を右に移動予定。


ナツメ「あ…!ヤミちゃんだ……目を懲らせ……」


ユウジ「うしっ…」


ユウジは木刀を握る。


ミミとヤミが曲がり角から出てきた。

出てきてから右に直進する。

すると、ぴょっこり高身長の男が角からのぞいている。


ナツメ「あっ…あれじゃ……」


ユウジ「ちょっと待って……様子を……」


ロングコートにフードをかぶり、覗き見するようにミミたちを見ている。

ロングコートの下から毛の濃い脛が見えている。


ユウジ「ちょっと待って……前言撤回、あれは露出狂だ……下に何も履いてない……」


ナツメ「確かに……あれは二人の前に行ってバッてやる気だ……」


ユウジ「行くか……?」


ユウジは俺を見ている。

俺は人差し指を男に向け


ナツメ「突撃ぃぃーー!!!」


ユウジ「ウラッシャァァ!!」


ユウジが男に向かって木刀を振りかざす。

男はユウジの方を振り向くと、木刀を片腕で掴んだ。


ユウジ「やばば」


男はユウジから木刀を取り、地面に投げ捨てる。


ミミ「ナツメ!ユウジ!ストーカーは!!??」


ヤミ「や……やりましたか……!?」


男「ストーカー!?」


ユウジ「しゃーない……こうなりゃ素手で……」


ナツメ「俺も参戦するぜ……ユウジ!」


男「か…勘違いしてません……!?」


俺とユウジは男めがけて拳を飛ばす。

だが、俺とユウジの拳は男の両手に掴まれ、あっさり止められる。


ミミ「嘘だ……二人が歯に立ってない……!?」


ヤミ「やっぱり……予感は……」


ヤミとミミは光景を見て、少しばかり絶望を覚える。


男「すみません……あなたたちはヤミちゃんとはどのような関係で…?」


ナツメ「隣のアバズレの保護者だ!」


ユウジ「保護者のパパ友だ!独身だけど…」


男「こ……これは失礼いたしました……」


男は俺たちの拳を離す。

男はフードを取る。


ナツメ「お……お前は!?」


ユウジ「あー!ああ…あーー!!」


俺とユウジは男の顔を見て驚く。


ミミ「どうした!?こいつの顔がどうしたって……ってうわぁぁぁ!!!!」


ヤミ「え……誰……?」


ナツメ「お前ってあれじゃん……」


俺は震える手で男を指差す。


ユウジ「あの……かの有名な……ボクシングの……」


ミミ「世界チャンピオン……二連勝の天才……!!」



佐藤「あ…佐藤です……」



ナツメ「ほ!本物だ!」


ユウジ「近所でボクシングジムしてるけど…スカウトされた人しか入れない……ジム……」


ミミ「実質会えない雲の上の人だ……」


ヤミ「え?すごい人なの?ミミちゃん」


ミミ「すごいも何も……日本のヒーローだぞ……」


ヤミ「え!?すごい!!」


佐藤「いや……あの……」


ナツメ「だけど……そんなチャンピオンもストーカー…」


佐藤「いやいや!そんな…滅相も無い!」


ユウジ「じゃあなんなんですか!?ロングコートの下にすね毛丸出しとか!」


佐藤「除毛した方が良かったですか…?」


ユウジ「そういう話じゃなくて!」


ナツメ「とりあえず、中に何か着てるんですか?」


佐藤「いや…着てますけど……」


ナツメ「じゃあ見せてくださいよ!」


佐藤「え……でも……」


ナツメ「見せれるでしょ!?早く!」


佐藤「子供に見せるのは……その……」


ナツメ「わかりましたよ!ミミ!あっち行ってて」


ミミ「オケケ」


ミミとヤミは少し遠ざかる。


ナツメ「よし、これでいいでしょ?」


佐藤「わかりました……はい…」


佐藤はロングコートの中を俺とユウジに見せる。

俺とユウジはしばらく静かになった。


ミミ「おい!着ているのか!?」


佐藤は少し顔を赤らめている。


ナツメ「あ…あの……腹筋触っていいですか?」


佐藤「え…あ…ちょっとなら……」


ナツメ「うわっ!かった!硬い硬い!」


ユウジ「マジで!?うわっマジだ!」


ミミ「お…!おい!お前ら楽しんでるだろ!私にも見せろ!」


ヤミ「あっ!ミミちゃん!」


ミミは駆け寄り、佐藤の体をガン見する。

佐藤はすぐにコートのボタンを止める。


ミミ「……デカイな」


ナツメ「どこ見てんだ」


ミミ「いや、そりゃ目につくよ」


ナツメ「だから痴女は……」


ミミ「はぁ!?私の経験回数はゼロだぞ!まだ股間をいじったことだって……!」


ユウジ「ミミちゃん?いいかい、この世には処女ビッチってのがあってね」


ミミ「うるせぇ!ロリコンは黙ってろ!」


ユウジ「く…口が悪いなぁ…」


ユウジは木刀を取りに行った。

木刀を拾うと、佐藤は口を開く


佐藤「あの…ここで話すのもあれですし……ジムの方でお話を……」


一同は目を光らせた。


ナツメ「ジムに行けるんですか?」


ユウジ「ジムに行ってもいいんですか?」


ミミ「ジムなんて単語をあなたから聞いてもいいんですか?」


佐藤「いや……お時間が大丈夫であれば…」


ナツメ「はっ!大丈夫過ぎでマジ卍!」


ユウジ「大丈夫過ぎで大丈夫星人になっちゃうところでしたぁ!」


ミミ「むしろお時間が大丈夫じゃない!ジムに行けるなんて……!」


ヤミ「私は全然大丈夫です」


佐藤「はぁ……皆さんが宜しければ……」


佐藤は困惑している。

俺たちは強くガッツポーズを決める。

なんせ、初めて会う有名人だからな。

誰しも心が躍る。

俺たちは歩き出した。

佐藤は再びフードをかぶり、周りの目を気にして俺たちの先頭を歩く。



第9話へ続く……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます