第5話 〈私は闇、真っ黒な闇〉



おっす、おらナツメ

今日は休日だゾ

おらワクワクすっぞぉ


と、つまらないジョークをつぶやき、俺の大切な休日は買い物で埋まる。


ミミ「おい、そんなに買わなくても良くないか?」


ナツメ「んなわけあるか。どうせ、お前は一人で買い出しなんか行きもしないのに」


ミミ「ま、そうなんだがな」


重い荷物を持ち、俺とミミは公園の横を通った。


ミミ「なぁ…重いから公園で休んで行かないか…?」


ナツメ「ああ、悪かったな。休んで行こうか」


俺たちはさっさと公園のベンチへ向かった。

休日というだけあったか、ミミと同い年の子供達がわんさか遊んでいた。

鬼ごっこやボール遊び

お花を摘んでいる女の子もいた。

母親たちは公園の隅でおしゃべりを嗜んでいる。

ベンチに着くと、そこには全身を黒い衣装で覆って黒髪ロングの少女が一人。

片目には眼帯をつけている。

何もせず、ただ遊ぶ子供達をその子は見つめていた。

なんというか、とても不気味な雰囲気を醸し出し、その子はこちらに気づくと、ベンチから立ち上がり、そのまませっせと去って行った。


ナツメ「……不思議な子だったな……」


ミミ「ああ、コスプレしてるみたいだったな…」


ナツメ「それはお前も同じだけどな」


ベンチの上、何が黒い物体が落ちていた。

俺はそれを恐る恐る摘み上げると


ミミ「髪飾りだな。あの子のか?」


ナツメ「多分そうだろう…どうしよう。行っちゃったしなぁ……」


しばらく摘んだまま、俺たちは立ち続ける。

すると遠くから声が聞こえてくる。

聞き覚えはない。

幼い声だ。


少女「す…すみません!それってどこに落ちてました……?」


ナツメ「え?これ?」


少女「そ…そうです……」


ナツメ「ベンチの上に落ちてたよ。これって君の?」


少女「そ…そうです……やっぱり……」


俺は髪飾りを渡した。

だが、少女はまだ困っような顔を浮かべている。


ナツメ「…どうしたの?」


少女「い……いえ…他にも落としたものがたくさんあって……」


ナツメ「ああ……そう……」


ミミ「良かったら手伝うぞ」


ナツメ「まぁ…そうしないほうがダメだよな…君、名前は?」


少女「えっと……」


少女は言葉を詰まらせる。

そのまま何も言わない。

やっと口を開くと


ヤミ「私は【闇】って言います……ニックネームとかじゃなくて本名で……」


ナツメ「え?なんて言った?」


ヤミ「あ……あの……闇って言って……」


ナツメ「あだ名か何かか?」


ミミ「この子が最初に否定したことを次々聞いてくるお前は最低だな……」


ナツメ「ほ……本名なの……?本当……?」


ヤミ「はい……父と母がつけてくれました……」


ナツメ「世の中広いんだな……派手な名前じゃなくて良かったな……」


ミミ「オブラートに包め」


ナツメ「で、他に落としたものって?」


ヤミ「え……服の装飾品です……」


ナツメ「ああ…なるほどね……」


ヤミ「母につけろと言われて……私も少し乗り気でしたが……」


ナツメ「乗り気だったのか……」


ヤミ「私の両親はいわゆる【厨二病】と言われる存在なものですので……私もその血を色濃く継いでるわけです……」


ナツメ「あ……ああ、そうスカ……んで、装飾品を探せばいいのか?」


ヤミ「はい……でも、悪いですよ……こんな私のことなんかで……」


ミミ「安心しろ、ナツメはユウジのような役に立つロリコンではない」


ヤミ「ゆ……ユウジ……?」


ナツメ「俺の友達のロリコンだ。気にすんな。それに、俺らのことは気を使わなくていいから」


ヤミ「そ…そうですか……ありがとうございます…感謝します……」


俺は辺りを見渡した。


ナツメ「と、言ってもねぇ……」


ミミ「ああ、ここめっちゃ広い公園だったな…」


ナツメ「ヤミちゃんはどこらへんで行動してたの?」


ヤミ「え……公園を一周したりぶらぶらするのが日課で……」


ナツメ「そっか……どうしたものか……」


ヤミ「や…やっぱり……」


ミミ「安心しとけ、我々は暇なんだ。暇人の実力は底知れぬぞ」


ナツメ「まぁな、子供が困ってる時は助けるのが普通だしな…」


と、善人ぶりながら、俺たちは散らばり装飾品の捜索を始めた。

人はたくさんいたが、俺たちが近づくとともにどこかへ行っていった。


だが、装飾品の数は多かっただけあり、5割くらいは簡単に見つけ出せた。

そして、探し始めてから1時間後


ナツメ「あ、そうだ。ヤミちゃんって歳いくつ?えらい礼儀正しいけど」


ヤミ「え……えっと」


ヤミは片手で何かを数えると


ヤミ「6歳です」


ナツメ「なんだろう、もう慣れたかも知れない」


ミミ「ええ!!??6歳!!??そんなバカな!」


ナツメ「お前も6歳だぞ」


ヤミ「そういや、あなたはなんて言う名前なんですか?」


ヤミはミミに向かって言う


ミミ「私か?私はミミって言うんだ。けど、お前はナツメの名前も知らないと思うんだが」


ヤミ「いえ、ミミさんとの会話の中でなんとなく察しました」


ナツメ「この作品に出てくる6歳児はみんなこんなんなんかな」


「そうかもな」ミミはそう言い、地面に視線を移す。

1時間経ったとは言え、空はもう赤く染まり、子供たちは家に帰っていった。

ヤミは公園の時計を確認すると慌ただしそうに言った。


ヤミ「……皆さん、ごめんなさい。私、門限があって……」


ナツメ「あー…なるほど、わかった。家のことも大事だしな」


ヤミ「本当にごめんなさい…探していただいたのに、私の身勝手で……」


ミミ「謝りたいのはこっちだ。そっちの都合も考えずにダラダラと捜索していた私たちにも責任がある。とにかく私たちのことは気にするな」


ナツメ「大丈夫だよ。俺たちは大丈夫だから」


ヤミ「……ありがとうございます……」


ヤミはそう言うと、せっせと走り去っていった。


ナツメ「さて、俺らも帰るか」


ミミ「……確かにな、買い物の帰り道だし」


俺らは夕日に照らされ、トボトボ帰ろうとした。

ミミは浮かない顔をしている。


ナツメ「……どうした?」


ミミ「いや……なんでもない」


俺はため息をした。

ミミに背を向けたまま、そっと言った。



ナツメ「飯の準備頼んだよ。夜、探しにまたここに来るから」



ミミは笑う。

俺とミミは歩き出した。



第6話へ続く……

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