第3話 〈大人の本気〉



俺こと、ナツメ

小さい頃、ゲームセンターのガチャガチャを無性にやりたい時期があった。

今思えば、やりたいガチャガチャなんて変な奴が多かったな…

無論、こいつにもそんなことがある。


ミミ「うむ、どこかに行こうとは言ったが、まさか近所のゲームセンターとはな」


ナツメ「近所に遊園地みたいなのないし、お前インドアだし、公園とかさらに退屈だろ?」


ミミ「まぁ、私もゲームセンターには多少賛成気味だ。見たい映画もないし」


ナツメ「映画って手もあったか…」


ゲームセンターの近づき、自動ドアを開ける。

中から、ドアで遮られていた騒音が漏れ始める。

カラフルに光りながら、共通点のない音楽が重なっていた。


ナツメ「ほれ、1000円やるから、好きなところ行ってきな」


ミミ「札で渡すんだな」


ナツメ「両替ぐらい自分でしなさい」


俺とミミはドアの前で話をしていると、後ろから声が聞こえてきた。


???「あれ?ナツメ君じゃない?」


ナツメ「は?」


俺は振り向くと


ナツメ「あ、ユウジじゃん。なんでこんな所に居るのよ」


ユウジ「理由は一つしかないでしょ」


そこには、俺の大学生の頃の友人だった【ユウジ】が居た。


ユウジ「ミミちゃんまで連れてさー、どうしたの?援助交際?」


ナツメ「何が悲しくてこんなアバズレとヤんなきゃならんのや」


ミミ「ん?ユウジじゃないか。お前もゲーム目当てか?」


ユウジ「そうだよー、ミミちゃんは何目当てかい?」


ミミ「決まっておろう……」


ミミは黙り込んで下を見た。

そして再び顔を上げる。




ミミ「あの憎っくきユルユルアームのクレーンゲームへ仕返しをしてやるのさ!!!」




そう、こいつはガチャガチャではなく、クレーンゲームを無性にやりたくなる。

しかも【ユルユルアーム】限定

こわい


ユウジ「好きだねー」


ナツメ「なんで好きなんだよ」


俺たちは堂々と入店した。

騒音はさらにうるさくなり、喋り声が聞こえないくらい。


ユウジ「ナツメ〜、ひさびさにメダルゲームで勝負しねぇか?」


ナツメ「メダルゲームか……お前とやるの結構ひさびさだな……うしっ、わかった」


ユウジ「ミミちゃんは〜?」


ミミ「クレーン緩(ゆる)を許すな!!必ず天罰をぉ!!」


ユウジ「え?クレーン緩ってなによ……」


ナツメ「例のクレーンゲームの名前らしいぞ」


ユウジ「なにそのコカインやってそうな名前は……」


ミミは勢いよく走っていった。


ナツメ「じゃ、行くか」


ユウジ「そうだな」


俺らはさらにうるさい、メダルゲームの並ぶ場所へ歩いた。

定員から小さいバケツ一杯分のメダルを買う。


俺らは隣同士で、同じ種類のメダルゲームに座り、一枚一枚メダルを入れていった。

入れたメダルは上から出てきて、飛び出た金属の棒に引っかかりながらも、着実に下へ進んでく。

真ん中には、棒と棒の間に赤く線が引かれていて、そこを通るとサイコロが回る。

サイコロの出た目だけ、下の方に描かれたすごろくのマスを進んで行く。

ゴールに行けばメダルがいっぱいもらえる。

簡単に言えばそんな感じのメダルゲーム。


ユウジ「へ、今度も勝つぜ」


ナツメ「馬鹿野郎、あんなクソ女の世話やってんだ。俺だって多少はイキれる」


ユウジは大学時代、親がなくなって暗くなり、みんなの輪から外されてた時に気持ち悪いくらいに絡んできた。

はっきりいって【空気の読めない奴】

最初は普通に受け流してたが、なんだかんだ言って憎めない。

こいつ、俺の誕生日に高いゲーム機を買ってくれたりしてさ

別に金持ちってわけでもないのに

ユウジは金髪で、カッコつけて耳にピアスをつけてる。

なのに、めちゃくちゃ優しくて、ヲタク気質。

ゲームがめっちゃうまい、俺もこいつといつもやってるから、常人よりかは上手い。

話も合うし、たまにうまい店を紹介してくれる。

そして何より、顔の広さである。

知り合いが多すぎる。

そんな中で俺とよく絡んでるってことが、なんか誇らしいくらい。

携帯なんか、電話なってんのかってくらいメールの通知が来るし、飲み会のお誘いとかしょっちゅう来るんだもん。

俺には来ないのに


ナツメ「ああ!!メダルなくなった……!」


ユウジ「はっ!雑魚め!俺はまだ4枚残ってるぜ!!これでサイコロが2を出してくれれば……!」


俺はユウジの台を見る。


ナツメ「やっば!2枚外れた……後2枚入るか?」


ユウジ「お……お!!一枚だけ入った!!お願い……2!2!2!」




_人人人_

> 6 <

 ̄Y^Y^Y ̄




ナツメ「あっ…ハズレだ……」


ユウジ「クッソォ!!悪魔の数字フリーメーソンめぇ!」


ナツメ「だから2を三回叫んだのね」


ユウジ「それは偶然…」


しばらく放心状態になり、俺たちはメダルが残ってないか、バケツの中を探っていた。


ナツメ「はぁ……ミミのところ行くか……」


ユウジ「ミミちゃん、結構時間経ってるな……なんか怪しいぞ……」


ナツメ「あー……嫌な予感がしてきた……あいつは変な口車には乗らないがな……」


俺たちは【嫌な予感】を考え、イメージした。

汗が出て、なんかヤバくなった。

俺らは居ても立っても居られず、ミミの元へ向かう。

生憎、クレーン緩の場所はわかってる。


人が多いため、そこまで走らず、少し早めの早歩きで進む。


ナツメ「はぁ!ミミ!!!……ミミ?」


ユウジ「あ……なんの状態だ……?」


ミミは100円玉をつまみ、クレーンゲーム入れようとしていた。

だが、そこで彼女はフリーズしてしまったらしい。

手先が震えたまま動かない。

変な汗をかいていて、ギャンブルで負けたかのようだった。


ミミ「な……ナツメ……私は今、人生の分岐点に立っている」


ナツメ「なんちゅーもん分岐点にしてやがる」


ミミ「この100円玉を突っ込めば、リベンジマッチが始まる。ただ、これが最後だ……」


ナツメ「ああ、だろうな」


ミミ「どうすべきか迷っている。ここは一旦退き、次に備えて温存するべきか……」


ナツメ「それだったら100円玉返してもらうぞ」



チャリン☆



ユウジ「おそろしく早い出費、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」


ミミ「えぇーい!こうなったらヤケだ……やるしかない……!!」


ミミはレバーに手を当てる。

手は震えながらも、レバーを握った。


ユウジ「ミミちゃん!!」


ミミはビクッと驚き、ユウジを見る。


ユウジ「レバーから手を離すんだ。どのぬいぐるみが欲しい?」


ナツメ「ま……まさかお前……!!」


ミミ「この水着仕様のサー……」


ユウジ「うさぎさんだね!?そうだよね!?」


ミミ「猫さんだぞ」


ユウジ「猫さんのぬいぐるみが欲しいのね!?アニメの猫耳キャクターのフィギュアしかないんだけど!」


ミミ「あ、でもうさぎさんも欲しい」


ユウジ「GOOD、レバーを貸して」


俺はユウジの肩を掴み


ナツメ「一回だけだぞ……?お前、いけるのか?」


ユウジ「素人の子供にやらせるより、1000円でクレーンゲームの景品を全て奪った俺に任せるべきさ。安心しろ、一回で獲れるとは俺も思ってない」


ミミ「思ってないのかよ」


ユウジ「可能性は55%だ。一発で獲れる可能性はな?この配置だと、運さえ良ければ一発でいける」


ユウジはミミの離したレバーを握る。

ぬいぐるみは、真ん中の板に乗っている。

それ以外は全て穴。

その穴に入れれば勝ちだ。

ぬいぐるみの頭部に輪っかがある。

そこに通すのが最も無難で確率の高い方法。

ただ、そこに通すこと自体が至難の技。

こういう時は考え込まず、単純に


ユウジはレバーを動かした。

奥行きは人形の中心から少し前。

横は……


ミミ「お…おい!ぬいぐるみから大きくずれてるぞ!!」


ユウジ「大丈夫だ…これで…あとは運次第」


ぬいぐるみは手足を前に出して座っているタイプ、後ろに丸い尻尾が付いている。

アームが開くと、アームの片方はぬいぐるみを押し、斜め後ろにバランスが崩れると、ぬいぐるみは倒れた。


ユウジ「シメた!一体ゲット!!」


ぬいぐるみの手足は板を大きくはみ出し、そしてぬいぐるみは落ちていった。


ナツメ「す…すっげ!マジで獲りやがった!」


ミミ「すごいじゃないか!ユウジ!!」


ユウジはぬいぐるみを取り出し、ミミに渡す。


ユウジ「手足にビーズが入ってるタイプのぬいぐるみだ。綿の入った胴体に比べ、手足は結構重い。手足のせいで倒れてくれるか心配だったが、どうやら場所が良かったらしいな……」


ナツメ「お前本当にすごいな……」


ミミはぬいぐるみを強く抱きしめ、ユウジに向かい言った。


ミミ「可愛いなぁ!ありがとう!ユウジ!」


ナツメ「あれ?なんか違和感。こいつ礼とか言うんだな」


ミミ「なにを、ナツメ。私だって感謝の心くらいあるぞ」


ユウジ「ブファッ!!」


ナツメ「どうした!?ユウジ!」


ユウジ「違う違う。ロリコンじゃないから。幼女の笑顔がまぶしすぎて鼻血出たとかじゃないから。あれだから、ちょっと頭の匂い嗅ぎたくなっただけだから」


ナツメ「ロリコンじゃねぇかよ」


ユウジ「違う違う。健全な男子の思考回路だから。ロリコンじゃないから」


ミミ「あぁ…そんなに否定したいものなのか…?」


ユウジは鼻から溢れ出た鼻血を手で押さえなら、片手でポケットティッシュを取り出した。

ポケットティッシュを鼻に突っ込み、止血を試みた。


ユウジ「まぁ、とにかく。喜んでくれて嬉しいよ俺」


ナツメ「あ……ああ…こっちも喜んでくれて嬉しいよ」


ユウジ「喜んでねぇし、ロリコンじゃねぇし」


ミミ「好きな胸の大きさは?」


ユウジ「巨乳」


ミミ「好きな尻の大きさは?」


ユウジ「おっきくてムチムチ」


ミミ「体系は?」


ユウジ「痩せて、なおかつムチムチ」


ミミ「性格は?」


ユウジ「大人びて、他人を見下す感じの」


ミミ「私じゃないか」


ナツメ「お前だな」


ユウジ「今日はエイプリルフールだったはず」


ナツメ「ああ、いつの話だ?」


ユウジ「ああ、やっべぇ。頭が痛すぎてクラクラする。ちょっくら病院行ってくる」


ナツメ「頭の病院か?」


ユウジ「精神科みたいに言うなよ」


ユウジは腕時計を見て、言った


ユウジ「そうだな。もうすぐで見たいドラマが始まるな。んじゃお先に失礼しようかな?」


ナツメ「真昼間から?」


ユウジ「再放送じゃよ」


ナツメ「ああ、なるほど」


ミミ「私たちもそろそろ帰るか、うさぎさんを早く持ち帰りたい」


ナツメ「えらく気に入っだなそいつ」


ユウジ「そうだ、ミミちゃん。そのぬいぐるみをこの後貸してくれないかな?変な液体つけて返すから」


ナツメ「教育上よろしくないブラックジョーク」


ユウジ「冗談だよ。じゃあな」


ユウジは軽く手を振ると、少し駆け足で店を出て行った。

ミミは俺を見つめる。


ナツメ「……帰るか」


ミミ「……だな」


俺たちは横に並び、店を後にした。

今思い返せば、一つのクレーンゲームを占領するという、とんでもない迷惑行為を犯していたことがわかった。

後日、俺はゲームセンターに行って謝りに行った。

ミミはぬいぐるみを見つめ、ニヤニヤと笑っていた。



第4話へ続く……

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