第39話 優香さんを抱きしめた

 荒い息の音が聞こえる。

 他人のもののようだったが慶太に怒鳴りつけて興奮した僕の息遣いだった。

 優香さんは泣きじゃくっていた。

 僕の頭も心のなかもグチャグチャだった。


『慶太。ごめんまた電話する。こんなこと言えた立場じゃないけど優香を頼む』


 慶太からの電話は一方的に切れて『ツー…ツー…』と携帯電話からは電子音がしてた。


 僕は優香さんの携帯電話をゆっくりと彼女の手に握らせながらスッと腕を引っ張り抱き寄せた。


「こんなこと信じられないな」

「…ッ…ウッ」

 僕の胸のなかで優香さんは嗚咽おえつこらえていた。

「泣いていいよ優香さん。思いっきり泣いていいんだよ」

 僕はせきをきったように再び泣きじゃくる優香さんの背中や頭をさすりながら、じっと自分も心の痛みに耐えていた。


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