第36話 オープンカフェの駐車場で二人
「智史くん。…電話はもしかして」
優香さんの雰囲気がくもった気がした。
運転をしているからはっきりとは見えなかったが、急に僕は優香さんに悪いことをしている気がした。
「うん。電話は元カノからだ」
「出たほうが良いよ」
七里ヶ浜あたりのカフェの広い駐車場に僕は車を入れた。
あとで優香さんとお茶をすれば良いだろうと思った。
駐車場に車を停めたら琴美からの着信は切れた。
「電話…掛け直さないの?」
「えっ。…ああ」
僕は携帯電話を握りしめながら迷っていた。優香さんに
今度は優香さんの携帯電話が鳴った。
「元彼からだけど…電話に出ても良いかな?」
「うん。どうぞ」
しばらく優香さんは電話の相手に短かく言葉を返しながら、困り顔でチラチラと僕の顔を時々見ていた。
『サトシ。サトシだろ?』
はっ?
優香さんの耳元からこぼれて聞こえる男の声に僕はザワザワと胸騒ぎを感じた。
聞いた声だった。
携帯電話を通したってよく知っている声だった。
『ごめん優香。電話を代わってくれないかな? そこにいるのって…優香の隣りにいるのって智史って奴じゃないかな? 優香』
俺と優香さんは凍りついたように電話先の相手の男の重たく低めの声を聞いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。