第20話 江ノ島に雨が降る

 江の島に雨が降る。


 僕と優香さんが江ノ島岩屋を出て少し歩いていたら急に黒い雲が空を覆い出してにわかに雨がザーッと降ってきた。


 僕は優香さんが濡れたら困るから手を引っ張って行き一番近くの土産物屋さんに駆け込んだ。


「大丈夫? 少し濡れちゃったね」

「大丈夫」

 優香さんは言葉少なくうつむいていた。


「ちょっと待ってて」

 僕は優香さんに土産物屋さんの一角の小さなベンチに座ってもらった。観光客が買ったソフトクリームなどを食べるためだろう。


 そこで観光地の土産物にしては派手ではないシャツを二枚とタオルを何本かと傘を買って、店の従業員の方に着替えたいのだということを伝えた。

 快くこちらでどうぞと言ってもらえたので店の奥の従業員の小さな事務所を少し借りることにした。


「優香さん。着替えておいでよ」

 優香さんに買ったシャツとタオルを渡す。優香さんは戸惑っていた。

「趣味じゃないかもしれないけど、風邪を引くよりマシだろ?」

 優香さんはツーッと涙を一筋流した。僕は何か悪いことをしたのかもと心配になった。

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