第17話 二人で江ノ島の参道を歩くと

 僕達は参道を歩く。

 たくさんの観光客に紛れて僕と優香さんは賑やかなお土産物屋さんや食堂やテイクアウトのお店を二人でのぞいては他愛のない話をいつの間にかたくさんしていた。

 楽しい。

 僕は久しぶりに楽しい。

 まだ「楽しい」という気分になれる人間でいたことに少し安堵した。

 だって僕はもう心が壊れ始めていたと思っていたから。


 タコせんべいを買って僕は優香さんと分けて食べる。

 バリッと割って二人で同じ物を食べる。それだけなのにすごく嬉しくて満たされた気分になった。


「優香さん。僕にして欲しいことって?」

 僕はタコせんべいをペロリと平らげた。固形物は久しぶりに僕の喉をとおっていった。

「今は言えない」

「そっか。なんでも言ってよ。僕は優香さんといて楽しくなってきた。お礼にあなたのお願い事は少なくともみっつは聞いてあげよう」

 僕がおどけて言うと優香さんはフフッと笑った。

 かわいい。

 笑うといっそうかわいくて優香さんはキラキラと美しい。

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