第66話 世界を砕く武勇伝
クンフーとヘラクレスはクリエイターの異空間倉庫の中に飛ばされると、何も無い白い壁が広がる世界でお互いに2m程離れた状態で現れた。
クンフーは飛ばされてすぐに戦車が走る戦車を走らせてヘラクレスに向かって突進した。
クンフーはアルゴノーツから奪った能力の中で重複していた移動速度を上げる能力を駆使して戦車を走らせ凄まじいスピードを出した。
ヘラクレスが気付いた時には既にヘラクレスの前には獅子と猪と天馬が引く戦車がヘラクレスの目の前にありぶつかる寸前だった。
野獣の眼光を一身に浴びるヘラクレスは臆する事無く四肢に力を込めて戦車の真ん中を走る天馬を掴んで戦車を止めた。
だが、戦車はヘラクレスの想定を超える速度で走っていた為にヘラクレスは撥ねられ、そのまま上空へと飛び上がった戦車の上からクンフーはヘラクレスに向かってエウリュトスの弓を使ってヘラクレスを射った。
「一対一の勝負なら俺は負けない!観念しろヘラクレス!」
クンフーはそう言いながら黄金の粒子を纏った矢を幾本もヘラクレスへと射った。
傲慢なセリフを吐いたクンフーは決して傲慢という訳では無く心の底から自信を持ってヘラクレスに相対していた。
ヘラクレスは撥ねられ逆さまに宙へ浮いたが背中のマントを翼に変えて手に持ったアステリオスの剣に黄金の粒子を纏わせてクンフーの矢を弾いた。
クンフーの矢は一本一本が凄まじい質量の黄金の粒子を持っていたがヘラクレスはそれを凌駕する量の黄金の粒子を剣に込めて矢を砕いた。
クンフーはヘラクレスの黄金の粒子を見て今までの相手とは桁違いのエネルギーを持っていると感じヘラクレスを警戒した。
そして、一度ヘラクレスから離れて戦車から降りた。
大事な戦利品を壊されたく無いという思いと戦車の上では上手く立ち回れないという思いがありクンフーは出来るだけ急いで戦車から離れた。
戦車から離れたクンフーは矢を放ちながらヘラクレスとの距離を詰め、一定の距離まで近づくと弓を背負いペーレウスの剣へと持ち替えた。
ペーレウスの剣に持ち替えたクンフーは剣に最大限に黄金の粒子を込めた。
ヘラクレスはクンフーの剣を見て微笑み
「面白い!何方の武器が優秀か試してやろう!」
と言ってクンフーに向かって全力走った。
二人の距離は常人では確実に間合いの外であるにも関わらず両者ともに桁違いの身体能力を持っていた為に距離は一瞬で縮まった。
両者の剣は剣というよりも大きな鉄製のハンマーで殴りあっている様な轟音を立ててぶつかりその衝撃は凄まじく両者から発せられたエネルギーはまるで核爆発の様だった。
お互いにビリビリと痺れる腕を痛感して嬉しそうにニヤッと笑いすぐ様次の攻撃を繰り出した。
クンフーは足を狙ってヘラクレスの足に強烈な刺突を放ったが、ヘラクレスが自分の膝に黄金の粒子を集め剣の先を膝蹴りしてクンフーの剣を弾いた。
それに少し驚いたクンフーはヘラクレスが放つ上段からの大振りの一撃に対応するのが少し遅れてかろうじて避けた為に左肩に深い切り込みが入った。
だが、クンフーはヘラクレスの剣が左肩に刺さるとそれを利用してナノマシンでヘラクレスの剣を体に埋め込む様にして剣を固定し、そのままヘラクレスの喉元に剣を突き刺した。
「ぐああッ!くっ!」
ヘラクレスはクンフーの一撃が入る前に喉元に黄金の粒子を集めて辛うじてガードしたが、クンフーの剣はヘラクレスにガードを破って喉に浅く突き刺さった。
「どうした大英雄!お前が殺せるのは動物だけか!」
クンフーがそう言って剣を深く突き刺そうとしたその時、ヘラクレスは自らの剣を離して後方へ跳んだ。
クンフーは剣をしっかりと握っていた為に剣はヘラクレスの喉から抜けてそのままクンフーの手に収まった。
自ら武器を捨てたヘラクレスを了承するかの様にクンフーは
「臆病が過ぎたな!俺の武器の方が優れていた事を認めたか?」
と得意げに言い放った。だが、ヘラクレスは余裕の表情で
「いや、俺の剣の方が優秀だよ」
と言った。ヘラクレスの声に反応してクンフーの肩に刺さった剣は黄金の粒子となって弾け、クンフーの体から離れると巨大な牛の頭を持つ怪物の姿でクンフーの前に立ち塞がった。
「そうだ!俺の方が優秀だァッ!」
現れた怪物はそう叫ぶと、クンフーの体を片手で掴んで持ち上げクンフーを握り潰そうとした。
「がはッ!」
クンフーが怪物の凄まじい腕力に驚くと、怪物はそれを笑って嬉しそうに口を開け、こう言った。
「久しぶりの生贄だッ!」
怪物はクンフーの顔を口に放り込むと思い切り噛み締めて頭を食いちぎろうとした。
だが……
「あがッ!硬い!」
クンフーの黄金の粒子を纏ったクンフーの体を噛み砕く事が出来ずに怪物は口を開いた。
「お前ッ!クソまずい!壊れて死ね!」
怪物は食うのを諦めるとすぐ様クンフーを地面に叩き付けた。
だが、怪物の手を離れるとクンフーは逆立ちする様に着地し、そのまま腕の力で飛び上がり怪物の腕に飛び乗った。
「離れろ!」
怪物がそれを振り払おうと腕を振るうと今度は頭に飛び乗ったクンフーが手に持った剣で怪物の脳天を突き刺した。
「ああああああああああああッッッ!」
怪物は絶叫しながら倒れ、クンフーは怪物から飛び降りた。
だが、その隙をヘラクレスは見逃さず自分の鎧の爪に黄金の粒子を集中させて空中で隙だらけのクンフーの体をアッパーの様な動きで下腹部から頭の先まで引き裂いた。
「うあああああッ!」
絶叫するクンフーに対しヘラクレスは
「やはり俺の剣の方が優秀だ!」
と言いながらクンフーの剣を掴んで空中にいるクンフーを思い切り蹴り飛ばした。
「あああああああああッ!」
クンフーは吹き飛び、その拍子に剣を離してしまう。ヘラクレスはクンフーの剣を取り上げると
「だが、これは俺の仲間の物だ。返してもらう」
と言って剣を持ち替えた。
ヘラクレスの蹴りが直撃しクンフーは地面に落ちると幾度も転がってやっと止まった。
武器を失ったクンフーにヘラクレスは思いきり跳んで両足でクンフーを踏み付けた。
「がッ!」
クンフーは気絶しそうな程の衝撃を受けたにも関わらずヘラクレスはクンフーの上で剣を幾度も突き刺した。
「これで!どうだ!さっきまでの威勢を見せて見ろ!」
暫くしてクンフーが完全に反応しなくなると、ヘラクレスはクンフーから降りてこの空間の出口を探した。
だが、何処を見ても出口の様な場所は無く、ヘラクレスはクンフーの武装に何か手がかりは無いかと思い再びクンフーの方を見た。
すると、クンフーはボロボロの体をナノマシンで治し、立ち上がってヘラクレスを待っていた。それを見たヘラクレスはため息を付いてクンフーにこう言った。
「はあ、その意気は良い。だがな、もう勝負は決したんだ。諦めろ!」
ヘラクレスがそう言ってクンフーに向かって走ると、クンフーは武装に内蔵されているもう一つの魔法を再生させた。
「聴けッ!
海を焼く炎、星見の頭脳、奢侈の混凝土
輝く知識は、暗黒に呑まれ葬られた
これは、冷たく波打つ大海から
それらを掬う柄杓なり
再生されたクリエイターの声はクンフーを鼓舞する様に響き渡り、ヘラクレスとクンフーを包む大きな魔方陣を展開させた。
「なんだこれは!何をした!」
ヘラクレスが魔方陣に驚いてクンフーに向かって突進すると、クンフーの手元に地面から灼熱の炎を帯びた黄金の剣が飛び出した。
クンフーはそれを引き抜いて応戦すると、ヘラクレスはクンフーに打ち負け後方へと弾かれた。
「何!?」
ヘラクレスが驚くと同時に地面から黄金のコロシアムが浮き上がって顕現し、観客席には煌びやかな装飾の施された数々の松明が灯されていた。
コロシアムが顕現すると、コロシアムの内部に氷で出来た槍や、雷を帯びる戦鎚、嵐を纏う刀など数々の魔法の武器が現れてコロシアムの地面中に突き刺さった状態になった。
ヘラクレスは突如現れた美しい武器と闘技場に息を飲み動揺していると、炎の剣を持ったクンフーがヘラクレスに突進し惚けているヘラクレスに斬りかかった。
だが、ヘラクレスはそれを剣で防ぎ急いで立ち上がろうとした。しかし、クンフーはヘラクレスが立ち上がろうとするとヘラクレスの膝を蹴り飛ばしてバランスを崩した。
そしてすぐ様剣を振り上げてヘラクレスの頭に突き刺そうとすると、ヘラクレスはバク転する様な動きで後方に下がった。
クンフーはそれに対し炎の剣をヘラクレスに向かって投げた。そして、すぐ様近くにあった槍を引き抜いてそれもヘラクレスに投げた後、走ってヘラクレスを追いながら氷のハルバードを取ってヘラクレスとの距離を詰めた。
ヘラクレスはバク転して体勢を立て直すと炎の剣を剣で払った。だが、次に飛んできた槍はヘラクレスの目の前に来ると突如大量の砂煙に変わってヘラクレスの目を潰した。
クンフーはその隙に氷のハルバードを持ってヘラクレスを切りつけてヘラクレスの左腕を切り落とした。
「うあああああああッ!」
ヘラクレスの左腕は斬られると表面に氷が張り付き、その氷は徐々にヘラクレスの体に拡がって行った。
ヘラクレスは左腕から黄金の粒子を放って氷を溶かすと共に黄金の粒子で左腕を作った。
だが、その間にクンフーはヘラクレスの背後に周り氷のハルバードをヘラクレスに背中に投げ付けた。
「ぐあッ!」
ヘラクレスがそれに怯むと、次々に武器を投げつけてヘラクレスを攻撃し最後に正面に周り一際大きなハンマーを持ってヘラクレスの頭を砕こうとした。
「トドメだァ!」
ハンマーはヘラクレスを殴り付けると大爆発を起こした。
クンフーは爆発と同時にハンマーを捨てて後方へと跳び、すぐ様地面から武器を引き抜いてヘラクレスに向かって投げ付けた。
クンフーは爆煙が散り切るまでそれを続け、爆煙が散るとエウリュトスの弓を持ってヘラクレスの動きを待った。
数々の攻撃を受けたヘラクレスは爆発の衝撃で殆どガードする事が出来ず左腕の黄金の粒子は吹き飛ばされ、体中に数々の武器が突き刺さり、全身血塗れの状態だった。
ヘラクレスは膝を着いた状態からボロボロの体を起こし、剣を強く握って立ち上がった。
「はあ、はあ、はあ……」
満身創痍の状態でもう立つのがやっとの状態でヘラクレスは悔しそうに自分の剣を見て諦めた様にこう言った。
「まさか、俺が本気の装備を持ち出してここ迄苦戦するとは思わなかった。正直言って負けたよ。」
クンフーはそれを聴いて諦めたのかと思い、一度弓を下ろした。するとヘラクレスは続けて
「君は強い、どう頑張っても俺一人じゃ勝てない。だけどな、今の俺は仲間の命を背負ってるんだ、文字通りな!」
ヘラクレスがそう言うと、ヘラクレスの体から凄まじい量の黄金の粒子が放出され稲妻を纏ってヘラクレスの辺りに光を纏わせ、ヘラクレスの傷を癒し、ヘラクレスのボロボロの鎧を修復した。そして、
「だから、俺は負ける訳には行かないんだよ!」
ヘラクレスは、今までに無い真剣な表情でそう叫んだ。その叫びには仲間の復讐をすると言う暗く禍々しい物では無く、仲間の信頼に応えるという熱い意思が込められていた。
その雷鳴の様な意思をぶつけられてクンフーは少し気圧されると、ヘラクレスは剣を振り上げた。ヘラクレスが剣を振り上げると、稲妻を纏った黄金の粒子が竜巻の様に空へと打ち上がり、上空でバチバチと音を鳴らして凄まじいエネルギーを凝縮させていた。
「仲間の為にお前を倒す!
この大いなる神斧をその目だけで無く、全身に焼き付けろ!これなるは我が父の怒り、全てを灰燼と化す究極の一撃ッ!
ヘラクレスがそう言うと、上空の稲光が凄まじい熱量で空間を無理やり突き進みクンフーの頭上に降り注いだ。
「砕け散れェェッ!」
ヘラクレスの最強の一撃に対し、クンフーはエウリュトスの弓を雷に向け最大限の黄金の粒子を集めて矢を作ると雷に向かって撃ち放った。すると、コロシアムに突き刺さる全ての武器が浮かび上がり矢と共に雷へと向かって行った。
「こっちだって、負けられねえんだァッ!」
クンフーの矢は太陽の様な光球を生み出して雷に向かって行き、それを押し上げるかの様に無限とも言える武装が雷に突き刺さる。
両者の攻撃は一時拮抗し、お互いを押しあった。すると、それを見た両者は黄金の粒子をお互いの攻撃に向けて放出し、最後の力を振り絞った。
「「行けええぇぇえええええッッ!」」
互いに反発しあい遂には周りの空間がそれに耐えきれなくなり、二人の周りの空間が音を立ててひび割れ、クリエイター達がいる海上へとゲートが開いた。
その瞬間エネルギーを飽和したエネルギーを周りに放出するかの様に凄まじい光が二人を包んで両者を吹き飛ばした。
「「ああああああああッ!」」
二人がぶつけ合ったエネルギーはクリエイターの出した太陽と炎の竜巻を吹き飛ばし、ヘラクレスをノアの方舟に、クンフーをクリエイターのいる場所にそれぞれ吹き飛ばした。
クリエイターは既にアイタリデースを倒し聖遺物を剥ぎ取った後で、ブラックアウト達と聖もそれぞれの役目を終えてクリエイターが生み出した海上の絢爛な大地の上に集結している時だった。
クリエイターは凄まじい熱量の爆発を見た事と異空間倉庫の一部が破壊された事に驚きながら飛んでくるクンフーを念力でキャッチして自らの近くに引き寄せた。
クンフーはクリエイターを見ると微笑んで
「悪い、ここまでだ……」
と言って気絶した。すると、クリエイターはクンフーを優しく抱き寄せて頭を撫でながら
「全く……何奴も此奴もヤバそうだったら引けば良いのに……馬鹿な奴らだ」
と優しく言って笑った後に、クンフーを異空間倉庫内の回復ポッドに入れて大地を動かしノアの方舟に向かった。
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