第19話 山の老人
フビライハンが、三人を倒しマルコ・ポーロを起こすと、テグハを振り上げ、高らかに叫んだ。
「勇ましき勇士達よ!
余と共に世界を蹂躙せよッォ!」
フビライハンの号令に合わせ、銅鑼の音が鳴り響き、一万は居るであろうモンゴル兵が馬に乗って姿を現した。
フビライハンは、その中から一際大きい自分の馬を呼び出して、マルコ・ポーロを乗せた。
マルコ・ポーロは、手網を握るとフビライハンの方を見て
「じゃあ、僕は彼の所に帰るよ
頼りにしてるよ〜
頑張って!」
と、軽く言うと振り向きざまに当世具足の兵士と魔法使いを五百人ずつ出して帰って行った。それに対し、フビライハンは、
「任せよ
其方の兵が入れば百人力だ」
と言い、振り向くとテグハを振り上げて、軍を率い
「全軍、掛かれッィ!」
と高らかに叫んだ。
すると、馬に乗ったモンゴル軍が、一斉にグロウの元へ走った。
グロウまである程度近づいたモンゴル軍は、
「弓を撃てッィ!」
フビライハンが、そう叫ぶと、モンゴル軍は一斉に矢を放ち、グロウとクラウドを撃った。
「なんだ、あの大軍は!」
グロウが、突如現れた大軍を見て驚き叫んだが、
下にいるクラウドが
「構うな!
俺らに弓なんて効かねえ!」
と、叫ぶと
「それもそうだな」
と、グロウは、落ち着き払って肩から下げたフランシスカを掴み、次々にモンゴル軍に投げつけた。
グロウの大きさに合わせたフランシスカは、元より巨大だが、グロウは、フランシスカを投げつけると能力を発動させ、空中でフランシスカをさらに巨大にしてモンゴル軍を潰した。次々に巨大なフランシスカを投げつけてモンゴル軍を潰して行くと、不意に意識が薄れ、徐々に縮んで行くと、地上で気絶した。
「おい、またこれか!
ソニック、何処だ!
魔法使いを殺せ!」
と、クラウドは、背中に着いた四本のアームで矢を弾き、銃弾で当世具足の兵士を打ちながら言った。
すると、蒼い閃光が走り、クラウド達の元を駆け抜けると遅れて
「任せろ!
お前は、そのまま兵士達の相手をしろ!」
と、言う声が聞こえクラウドは、微笑んで頷くと、能力を発動し、自分の分身を倍にそして、さらに倍にしながら、どんどん数を増やし、当世具足の兵士達に合流したモンゴル軍を攻撃した。
そこから、少し離れた地点にいる魔法使いは、杖を振り、次々にクラウドの分身を眠らせて行くが、突如、駆け抜けた蒼い閃光がそれを一撃で倒して行った。
五百人いた魔法使いは、ソニックが金属の鉤爪で一人一人心臓を貫きながら走り去り、あっという間に全滅させてしまった。
「楽勝だったな」
ソニックが、誇らしげにそう言うと
「我が友の兵を良くもやってくれたな
許しては置かんぞ!」
と、青いデールを着た大男が現れて、テグハを持ってソニックに迫った。
ソニックは、大男を見ても動じずに、男の周りを走り回り、腕に着いた稲妻のブレードを青く輝かせ、フビライハンに向けるとブレードから本物の稲妻を放ってフビライハンを攻撃した。
「やっぱり、楽勝だ」
と、ソニックは、またもや自慢げに言った。
だが、フビライハンは、稲妻に打たれたにも関わらず、無傷で、ソニックに向かってきた。
「そんな物で、余は倒せんぞ!
それに、お前の仲間も我が友の兵で直ぐに打たれる」
と、フビライハンは、テグハを振るいながら言った。
ソニックは、それを避けながら
「なんだと!?
どういう事だ!」
と、驚いた。
それを聞いたフビライハンは、笑ってこう答えた。
「アロアディンと、呼ばれる男だ
山の老人と呼ばれている」
その頃、ハウニブ内では、マイスターの居る操縦室の扉をマイスターが、魔法で消し、入り口を完全に閉じた状態で、クンフーが、廊下に寄り掛かり、腕を組んで敵の侵入に備えていた。
クンフーは、廊下で一人、窓を眺めながら
「外があの様子では、此処には誰も来そうに無いな」
と、余裕で待っていたが
クンフーのスーツのセンサーに何かが、反応した。
「ん?
なんだこの反応は、何時から入った
それにこの反応は、此処の直ぐ横だ」
と、クンフーが、驚くと
突然、廊下の壁が破壊され、ボロボロの黒いターバンを巻いた黒服目の死神を彷彿とさせる格好の男が現れた。
黒いターバンの男は、クンフーを見かけると、目にも止まらぬ動きで手裏剣を投げつけた後、背中につけた二振りの日本刀の一本を抜き、クンフーに襲いかかった。
クンフーは、それに対し、手刀で手裏剣を払い、回転しながら日本刀を左手の手刀で止め、右手で拳を作り、黒いターバンの男の顔を殴りつけた。
「ぐあッ!」
クンフーの、能力で強化された拳が黒いターバンの男を打つと、黒いターバンの男は、後方へ少し吹き飛んだ。
「お前が、誰だか知らないが、此処へ来たからには生かして返さん!」
クンフーが、そう言いながら再び殴りかかると、黒いターバンを巻いた男は、日本刀で拳を払い、クンフーの胸を突き刺そうとした。だが、クンフーの武装は、日本刀は弾いて後方へ流した。距離を詰めたクンフーは、黒いターバンの男の腹に手を置いて技を放った。
「発勁ッ!」
クンフーが、技を繰り出すと黒いターバンを巻いた男は口から血を吐き出して怯んだ。クンフーは、怯んで顔を下げた男の項を
「ぐあッ!」
膝蹴りで鼻が折れた黒いターバンの男は、呻き声を挙げると、クンフーは、一回転して、男の脇腹を踵で蹴り飛ばした。
「悪いな
この武装を付けた俺は無敵だ」
クンフーは、鉄山靠の構えを取ってそう言い、黒いターバンを巻いた男に備えた。
黒いターバンの男は、壁に激突して倒れ、床に落ちると不気味に笑いながら顔を摩って立ち上がり、クンフーを見てこういった。
「ふふふっ、やるなぁ
私にこうも一方的に攻撃出来るとは、
君みたいな奴は初めてだよ
ふふふっ、失礼、楽しくてね」
と、男は、心の底から嬉しそうにしている。
クンフーは、それに対し、なんだコイツはと言いたげな、変質者を見る冷やかな目で
「不気味な奴だな
お前は、いったい誰なんだ?」
と、黒いターバンの男に尋ねた。
すると、ターバンを巻いた男は、上機嫌で
「おっと、紹介が遅れたね
私は、アロアディン
山の老人と呼ばれている」
と、応えた。
それを聞いたソニックは、
「山の老人?
山姥の男版か?
まあ、良い
来たからには、倒さざる負えないんだ
老人を殴るのは、心が痛むが仕方ないお前を殺す」
と、強い口調で言った。
そして、クンフーは、鉄山靠の構えから
「ああ、良いぞ
そう来なくてはな
さあ、楽しもうかッ!」
アロアディンは、そう言いながら刀を後方に構え、
クンフーが、迫るとアロアディンの刀が、消える様に前に突き出てクンフーの武装の鱗を削ぎ落とす様に体に突き刺し、鎧の鱗を落とした。だが、クンフーは、それに怯みもせずに強く地面を蹴り、アロアディンに鉄山靠を食らわせた。アロアディンは、それに対し、刀を落としクンフーの顎に手を掛けるとそのまま、バキッ!と言う音を立ててクンフーの首をへし折った。アロアディンは、その首を掴むと折った時の音と共に違和感を覚えた。すると、クンフーの右手が、アロアディンの胸に突き刺さった。
「ッ!かはっ」
クンフーは、アロアディンの背中から鮮血と共に、右腕を出し、手にはアロアディンの心臓を持っていた。クンフーは、手に持った心臓を握り潰し、腕を抜くと、アロアディンの死体の腹を蹴り飛ばし、こう言った。
「悪いな、この頭は飾りだ」
と、言った後、右手を振って血を飛ばしながらクンフーは、再び廊下に寄り掛かり次の敵を待った。
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