第16話 空を舞う王は、高らかに嗤う

ハウニブに乗り込んだ元メメント・モリのメンバーは、携帯端末のセンサーをハウニブと同期させ、敵が大軍で構えている場所を見つけた。

そこは、屋敷の塀の周りを生い茂り深い森を抜けた先にある砂漠地帯だった。

早速マイスターは、そこへ向かうように飛行艇の自動運転を開始した。

ヘリコプターの様に飛び上がるかと思いきや機体は、まるで重力を無視する様な具合に宙を舞い、時速約60km程のスピードで進んだ。


森の上空を進み、暫くして砂漠地帯が見え始めると、元メメント・モリ一同は、目を疑った。


森と砂漠の境界線から約3kmの地点に顔にターバンを巻いた軍服の集団、約3000人が銃を構えて待ち構えていた。


「なんだあの大軍は!」


とパイロが驚くと、他の構成員達にも動揺が見え始めた。

それを、即座に察知したキング・メイソンは、


「怖気付くな!

奴らが何人いようと俺達の敵じゃない!」


と喝を入れた。

そして、その後直ぐに


「パイロ、奴らを一網打尽にしろ」


とパイロに指示を出した。


「おっしゃ、任せろ!」


と勢い良く返事をした後にパイロは、ハウニブのドアを乱暴に開けた。

そして、二振りの青龍刀を腰に下げると、両手から火の玉を出した。続いて、その火の玉を両手を合わせて一つにした。すると、袖口の炎がそれに呼応する様に火の玉に合わさると、火の玉が一層紅く染まった。そして、その火の玉を放る様に宙へ舞わせると、パイロの服に描かれた龍が深紅に輝き、紅の魔法陣が描かれると、その魔法陣から赤い龍が現れると宙に浮いた火の玉に突進し、噛み付いた。龍は、炎に変わり蝙蝠のような翼を広げると、唸りを挙げて敵兵に突進して行った。


「クリエイターの武装で強化された俺の脳力をくらいやがれッ!

恐れ慄け龍の怒号ロン・ゴーン・ヌーハオッ!」


火龍が突進を止め、尾が地を這う程に龍が降下すると、火龍は首を上げ、口から業火を吐き出した。

吐き出された白色の炎は、尋常ではない程の熱波を辺り一面に広げながら敵兵の足元の砂を硝子化させる程の高音を敵兵に直撃させた。


「しゃああッ!」


白色の炎に飲み込まれた敵兵を見てガッツポーズをして喜ぶパイロだったが、炎が止み龍が消えてもなお兵士達は、健在だった。


「何!?」


それを、見たパイロが驚いていると、ハウニブ内のセンサーには、反応が無いにも関わらず黒馬に乗ったシャルワニパキスタンの民族衣装ドゥバッタ3m程の長いスカーフにターバンを巻き、身体中に金と宝石をふんだんに使ったアクセサリーを付けた男が右手にシャムシール僅かに曲がった片刃の剣を持って、ハウニブに向かって突進して来た。

ペルシャ系の服装をした男は、此方を見て楽しそうな顔で黒馬から手を前に突き出し、


「指輪の魔人ジン

あの船を落とせ!」


と叫ぶと、男の手にある指輪が輝き、中から大男が現れ空を飛び、ハウニブを掴むと高く振り上げ、地面に向かって投げ付けた。


「「「「うあああああッ!」」」」


ハウニブの操縦が効かなくなり、元メメント・モリ構成員が叫びを挙げて落下して行く。さらに


「どうした!

何かしてこぬか!」


と黒馬に乗った男は、追い打ちを掛けハウニブに突進を続けた。


落下する機体の中で元メメント・モリの構成員達は、慌てふためき、それぞれ別々の脱出方法を考えていたが、それを見たキング・メイソンが、ハウニブから飛び出し仲間に向かって


「落ち着け!

皆、船から離れるな!

俺が奴を引きつける

お前らは、協力して全員で下の敵を討て!」


と叫び、猛威を振るう鎚の王ジャガーノートのブースターを最大にして突進する黒馬に乗った男に向かって同じ様に突進した。


キング・メイソンの何者をも恐れぬ態度に元メメント・モリ構成員は、皆口を揃えて


「「「「「了解ッ!」」」」」


と返事をした。

キング・メイソンは、それを聞くと安心し黒馬に乗った男

を睨み付け、黒馬に掴み掛かった。

黒馬に乗った男は、それを見ると再び楽しげに指輪を輝かせ、


「指輪の魔人よ

あの巨人の動きを止めよ!」


と命令を下した。

すると、ハウニブを投げ付けた巨人が猛威を振るう鎚の王ジャガーノートに向かって迫った。

キング・メイソンは、それに対し、ベルトから鋸の刃を取り出し、自身の能力で猛威を振るう鎚の王ジャガーノートの右腕を変形させて右腕をレシプロソー往復運動で物を切る電機工具に変化させ、迫り来る巨人に応戦した。巨人は、ただ掴み掛かってくるだけだったので、キング・メイソンは、それを軽く受け流し自信を通り過ぎて行った巨人を後ろからレシプロソーと、姿勢制御装置を駆使して高速で身体を横に一回転させて巨人の首を切り落とした。首を切り落とすと巨人は鮮血を勢い良く吹き出しそのまま地面に落下して行った。巨人の血飛沫を浴びたキングメイソンは、レシプロソーの刃を黒馬に乗った男に向かって射出した。


黒馬に乗った男はそれをシャムシールを使って弾き落とそうとしたが、刃は空中でアルミホイルの様に薄く広がり、黒馬に乗った男を覆った。

黒馬に乗った男は、気にせずに金属の薄い板をシャムシールで突き刺し進もうとしたが、金属の板を抜けた先ではキング・メイソンが、ネイルガンを持ち釘を高速で連射した後だった。


それを、見た黒馬に乗った男は、不敵な笑みを浮かべ


「面白いッ!」


とはしゃぐ子供の様に言うとシャムシールを駆使し釘を払い落として突き進む。

幾つかの釘は、捌ききれずターバンや、上着を切り裂き若干の傷を負うが、そんな事には、目もくれずターバンを巻いた男は、勇ましく猛威を振るう鎚の王ジャガーノートに斬り込んだ。


キング・メイソンは、黒馬に乗った男がある程度まで近づくとネイルガンを鋸の刃に持ち替え今度は、両腕をレシプロソーに変えると、黒馬に乗った男に迎え撃った。


黒馬に乗った男が、鋸の間合いまで入り込むと、キング・メイソンは、両腕を振り上げ手をクロスして振り落とした。黒馬に乗った男は、それを馬から飛び出し馬を急降下させて猛威を振るう鎚の王ジャガーノートの下を潜らせるように仕向けると刃の上を紙一重で避けるように宙返りし、落ち際に猛威を振るう鎚の王ジャガーノートの項をシャムシールで切り付けながら落下して行った。


キング・メイソンは、それに冷静に対応し黒馬を先に破壊しようと男が黒馬に跨る前に黒馬を捕らえようと黒馬を追ったが、男がそれを察知し指輪を輝かせ


「指輪の魔人よ

巨人の動きを止めよ!」


と命じ、その呼び掛けに応じ出現した巨人が猛威を振るう鎚の王ジャガーノートの背後に出現し、猛威を振るう鎚の王ジャガーノートの首根っこを掴んで黒馬とは、反対方向に放り投げた。


キング・メイソンは、投げられると即座に姿勢制御装置のブースターの出力を上げ空中で静止すると、巨人に向かって突進し、巨人にタックルを食らわせた後に怯んだ巨人の腹に左手の鋸を突き刺し、グチュグチュと音を立てて血肉を掻き出され、苦しむ巨人には、目もくれず、姿勢制御装置を駆使し今度は、縦に一回転して、巨人の身体を半分にした。


キング・メイソンは、鮮血を滴らせながら、獲物を狙う鷹のように男を探した。

すると、男は再び黒馬に跨り、地上に降りていた。


キング・メイソンは、血と脂の付いた鋸の刃をパージして捨てると腕を元の形に戻し、黒馬に乗った男を追った。


地上に着くと、黒馬に乗った男は、まるで名演技を披露した舞台劇を見終えた観客の様にキング・メイソンを拍手で向かい入れ、嘲笑うかの様にこう言った。


「いや〜

君は、強いな

恐れ入ったよ

だが、しかし

フフフッ

面白い程に、計画通りだな

恐らく、君が最強の戦士だろう?

今頃、君を分断された仲間達はどうしているかな?」


と心から愉快そうに言い放った。

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