第7話 桃太郎

アニー達を聖が追い返した後、

僕達は、煉獄の街の遊園地に来ていた。


「旦那様〜

次は、あれに乗りましょ〜!」


聖は、ジェットコースターに乗った後、メリーゴーランドを指さしてそう言った。


「ちょっと待ってくれ

少し気分が...」


僕は、少しよろけながら聖について行きそう言った。


「いつも、もっと早く飛んでるじゃありませんか〜」


聖が、僕の手を引きながらそう言うと


「君が、生身のままが良いって言わなければ、

大丈夫なんだけど

うっ」


僕は、右手で口を抑えながら青い顔でそう言った。


「だって、

それじゃあ体温がわからないじゃないですか〜

旦那様の温もりをもっと感じて痛いんです」


と聖は、僕に肩を貸しながら、

僕をベンチまで連れていくと

僕をそこへ座らせ


「さあ、ここで少し休んだら

また、乗り物に乗りましょう!

私、何か買ってきます!

旦那様は、ここで待っててくださいね!」


聖は、そう言うと嬉しそうに

遊園地内に屋台に向かって走った。


僕は、聖が行くのを見ると

ベンチに項垂れて休んだ。


僕らから少し離れた場所では、


「「あははははっ!

クリエイターの奴、ジェットコースターにやられてる!

面白すぎるだろ!」」


と役小角とグラスホッパーが二人揃って大笑いした。


「ちょっとあれは、情けなさすぎじゃない?」


と前鬼も笑うと


「まあ、しょうがないんじゃない

クリエイターって生前は、ずっと引きこもってたんでしょ?

聖さんのペースで動いてたらバテちゃうよ」


と後鬼が庇うように言うと


「でも、やっぱり面白いッ!」


と中鬼が笑いだした。


「良いな〜

咲も一緒に遊びたい!」


と咲が一人、クリエイターの元へ走り出そうとすると、

後鬼が慌てて止めて


「あ〜ダメダメ

ここで、こうして見てるのがバレても怒られちゃうのに」


と咲を止めた。


「ぶ〜

つまんない」


と咲がいじけると


「まあ、まあ、

こうして見てるのを後でクリエイターに言って

からかってやろうぜ」


と役小角が咲の頭をぽんぽん叩いて慰めた。


「う〜ん

それもそうだね

お兄様すごく怒りそうだけど」


と咲も笑った。


すると、そこへ

1本の矢が飛んできて

咲の肩に突き刺さった。


いった〜い!

何これ!」


咲が、そう言って矢を引き抜くと

役小角とグラスホッパーは、急いで武装し

矢が放たれた方を睨んだ。


すると、そこには

鎧姿の武士が四人たっており

一人に三人が、お供する様な並びで

中心の男がこう言った。


「やあ、やあ、我こそは

三随臣を引き連れ、鬼を屠りし

吉備津彦命である

煉獄の住人よ

いざ、尋常に勝負!」


と高らかに名乗りを挙げ、

他の三人は、それを盛り上げた。


「「「よっ!日本一!」」」


役小角とグラスホッパーは、顔を見合わせ


「「あっははははは!

だっせえ!

なんだアイツらは学芸会でもやってんのか?」」


と笑いだした。


すると、吉備津彦命は、それに激怒し


「お前達、まずはあの下品な輩を始末しろ」


と部下に命じた。


「「「御意」」」


と三人は、武器を持って役小角とグラスホッパーの前に現れた。


全員見事な鎧を着込んではいたが、

普通の武士とは違い、

一人は、短いナイフを二本、

一人は、大きな棍棒を一振、

一人は、立派な槍を持って役小角とグラスホッパーに襲いかかった。


まずは、槍を持った男が

役小角を一突きしたが、

役小角は、それを風で減速させ、

自分には、追い風を起こし、

槍を持った男にタックルを食らわせると

顎に掌底を放って怯ませ、

そのまま、一本背負いすると

槍を持った男の顔を踏みつけた。

そこを、棍棒を持った男が

役小角に棍棒を叩きつけて役小角の頭を殴りつけようとすると、

グラスホッパーが、転移で棍棒を持った男に肩車をして貰っている様な体勢になり、

もう一度転移して、

棍棒を持った男を空中で逆さまにして、かなりの高さから現れ、自分だけ転移し、棍棒を持った男を頭から地面に叩きつけた。

それに合わせ、役小角も槍を持った男の首を切り落とすと、

最後に残ったナイフを持った男に、

刀から滴る血を浴びせ、目を潰すと、

グラスホッパーが、そこを転移で現れ、

ドロップキックを食らわせて、倒れた所を槍で喉を一突きにして殺した。


「はっ!

こんな奴ら全然相手になんねえぜ!」


とグラスホッパーが、吉備津彦命に向かって言うと

役小角は、刀を吉備津彦命に向けて


「次は、お前の番だ

こうなりたく無ければ尻尾を巻いて逃げ出しな!」


と言い放った。


「ぬううッ!

小癪なァ!

良いだろう、俺自ら相手をしてやる」


そう言うと、吉備津彦命は、刀を抜いて役小角に襲いかかった。


役小角は、初撃を刀で不正だが、

あまりの強力な一撃に腕が痺れ、

次の対応が遅れ、

吉備津彦命に横腹を思い切り蹴られ吹っ飛ばされる。


「ぐあッ!」


役小角は、風を起こし落下の衝撃を和らげたが、

内臓が潰れる程の痛みを味わった。


「てめえ、何て事しやがる!」


とグラスホッパーが、転移して後ろから

吉備津彦命にドロップキックを食らわせるが、

吉備津彦命は、怯みもせずに振り返り、

グラスホッパーの足を掴むと、地面に思い切り叩きつけた。


「ぐはッ!」


「おいおい、どうした?

期待外れもいい所だぞ

もっと勇ましく戦えッ!」


吉備津彦命は、そう言って

グラスホッパーを切りつけようとすると、


「調子に乗るんじゃねえ!」


と役小角が、吉備津彦命に向けて雷を落とした。


吉備津彦命は、それを落ち着き払って観察し


「我が身を守れ、

セバスティアヌス・アロー!」


と叫ぶと、

吉備津彦命の体が、光に包まれ、

落雷から身を守った。


しかし、そこで生まれた隙にすかさず

グラスホッパーが、槍を食らわせる。


「おっと」


吉備津彦命は、それを余裕の表情で対処し

刀で裁いた。

グラスホッパーは、先に食らわせた長い方の槍を引き戻しながら、短い方の槍で、吉備津彦命の顔を突き刺そうとすると、

吉備津彦命は、それを顔を少し傾けて避けると

グラスホッパーの横腹を蹴った。

グラスホッパーは、それに怯まず、

吉備津彦命に頭突きを食らわせると


「ほい、やるな

さっきの男よりは出来る

どれ、何処までか試そうか!」


そう言うと、吉備津彦命は、

目にも止まらぬ斬撃を繰り出し、

グラスホッパーを攻撃した。


「うおッ!」


グラスホッパーは、全てを対処しきれずに

多くの斬撃を体に受けてしまう。

そこを役小角が、横から氷柱を発生させ、

吉備津彦命に突き刺そうと飛ばすが、

それを捌きながら吉備津彦命は、

グラスホッパーを攻撃した。


「やれやれ、この程度とは...」


吉備津彦命は、残念そうにそう言うと

グラスホッパーの股間を思い切り蹴りあげて、

グラスホッパーの体勢を崩すと

大振りの強力な一刀をグラスホッパーに頭から浴びせた。


「うあああッ!」


グラスホッパーが、斬撃で吹き飛ぶと

役小角が、横から吉備津彦命を切りつけて

吉備津彦命に近づき、

左腕を掴むと


「これなら、どうだ!

氷付け!」


と強烈な冷気を放ち吉備津彦命を凍らせようとすると、


「良いぞ、ちょうど体が暖まり過ぎていた所だ

良きにはからえ」


と言うと、掴まれた左腕で役小角の腕をつかみ返し、

そのまま柔術の達人の様に、役小角の体を一回転させた。


だが、役小角は、一回転すると、

足で吉備津彦命の顔を挟んで腕を固め、


「今だ!

やれッ!」


と叫んだ。


「おう、これでトドメだッ!

くらえッ!

不焼御手杵やけずおてぎねッ!」


と武装のギミックを発動させ、

強力なレーザーを吉備津彦命の腹にぶち当てた。


「ぬおおおおおおおおおッ!

我が身を守れッ!

セバスティアヌス・アロー!」


強力な熱線に身を焼かれる吉備津彦命は、

歯を食いしばりながら

聖遺物の加護で攻撃から身を守り、

役小角に固めれたまま

グラスホッパーに向かって熱線を受けながら歩き出した。


「おい、嘘だろ!?」


グラスホッパーが、驚いた所を


「そんな玩具に、

この俺が屈すると思ったか!」


と刀を振り上げ

グラスホッパーを真っ二つにした。


「あっはははは!

次は、お前だァ!」


と左腕の関節を外し、

役小角の固め技を解いて

役小角を地面に落とすと

そのまま役小角を真っ二つにした。


吉備津彦命は、右腕で関節を元に戻すと

前鬼達を見ながら


「さて、そこの女子供は、

どうしたものか

やはり、殺すしかないか」


と前鬼達に近づくと


吉備津彦命の後ろから

死んだ筈のグラスホッパーが叫ぶ


「これなるはァッ!

日の本一と名高き名槍ッ!

数多の英傑に受け継がれる勇姿を一条の光に変え

全てを呑み取れッ!

世削日本号よけずりにほんごうッ!」


グラスホッパーの叫びに驚き、

急いで振り返った吉備津彦命は、

不意に浮遊感に襲われた。

見ると、自らの下半身がある筈の場所を

巨大な槍の穂先が占拠していた。


「うああああああッ!」


そのまま、槍が消え地に落ちた

吉備津彦命は、あまりの事に絶叫した。


「おっしゃッ!

これからいけるぞ

くらいやがれっ!」


と此方も死んだ筈の役小角が、

鎧から雨雲を発生させ、

吉備津彦命の上に弾丸の様な雨を降らせると


「これなるは、厄災から生まれし

必勝の剣ッ!

その理不尽を前に膝を着いて涙を流せッ!

神怒伏死・草薙剣たたり・くさなぎのつるぎッ!」


と叫び、

雨雲から、十本の螺旋状に槍の様な形を保ちながら

降り注ぐ雷が、吉備津彦命を襲った。


「うあああああああッ!」


吉備津彦命は、落雷に打たれ絶叫しながら、

雷の影響で吹き飛んだ地面から上がった土煙の中に消えた。


役小角とグラスホッパーは、

それを見ると拳を合わせ、


「「よっしゃああ!」」


と喜んだ。


「いや〜

危なかったぜ

マジで死ぬかと思った」


とグラスホッパーが言い


「ああ、お前のおかげで助かった!」


と役小角は、前鬼に感謝した


「な、別に当然でしょ

あのまま倒されちゃ堪んないわよ」


と恥じらいながら前鬼が言うと


「そんな事言うなって

このこの〜」


と役小角が、前鬼に近づくと


「ちょ、近づかないでって...」


と前鬼が、照れながら後ずさり

顔を青くして言葉を止める。


「なんだよ

そんなに嫌なのか?

傷つくぜ」


と役小角が、言うと


「バカッ!

後ろ!」


と前鬼が、叫ぶと


「そうか、さっきお前達を殺したと思い込んだのは、

その女の能力なんだな

では、先にやるとしようか」


そう吉備津彦命が、言うと

役小角が急ぎ振り返った。


そこで、役小角が見たものは、

巨大な龍の姿に変わった吉備津彦命の姿だった。


「なんだ...これ...」


役小角が、驚愕すると、

吉備津彦命は、そこへ口から火を吐いて

役小角ごと前鬼達を焼き払った。


「うああああああッ!」


と役小角が叫び、

前鬼を庇うように前鬼に飛びかかるが

炎が触れても熱さは、無く

無傷だった。


「まったくもう

油断しないで下さいよ!」


と中鬼が怒り、冷静になると

前鬼を離して武器を取り

役小角は、吉備津彦命に


「随分、デカくなったな

だが、俺にはそんなもの無意味だ!

出ろッ!八岐大蛇!」


役小角が、そう言うと

雨が、いっそう強く降り出し

役小角の前に水で出来た巨大な八岐大蛇を出現させた。


「デカいだけじゃ

俺らには勝てねえよ!」


と役小角が、吉備津彦命に八岐大蛇を消しかけると


「愚かな、

そんなコケ脅しで対抗とは

呆れて言葉も出んわ

焼き払ってくれる!」


と吉備津彦命は、八岐大蛇に向かって

口から火炎を放射した。


あまりの熱量に表面で水蒸気爆発が起きるのを

役小角は、風で流しながら

さらに雨を強くし

八岐大蛇を吉備津彦命に向けて突進させる。


「無駄だッ!」


吉備津彦命は、そう言うと

一度雨雲まで急上昇し、

炎で雨雲を払うと

自分の体の周りを炎で覆い、

周囲に岩の様に巨大な炎の塊を出現させると


八岐大蛇に突進し、全て吹き飛ばした。


「うああああああッ!」


それによって生ずる水蒸気爆発を流しきれず、

役小角は、吹き飛んで気絶した。


それに、追い打ちをかけるように

前鬼達に向かって岩の様な火の玉をぶつける。


「そんなことをしても無駄ですよ!」


中鬼が、能力を発動し、

火の玉を回避すると、


「ふん、やはり邪魔なのは

女共か」


と吉備津彦命が、言って

再び、火の玉を発生させると


「おい、俺を忘れんなよ!

くらえッ!

世削日本号よけずりにほんごうッ!」


グラスホッパーが、そう言うと

吉備津彦命の頭の場所を上書きする様に巨大な槍の穂先が吉備津彦命の内側から飛び出し、吉備津彦命を弾けさせた。


すると、首が落ちた龍がどんどん縮んで行き

人間大の大きさになると


半人半龍の姿になった。


「忘れてはいないさ!」


と吉備津彦命は、背負っていた大弓を取り、

グラスホッパーに放つと

グラスホッパーの体に矢が貫通し吐血して倒れた。


「さて、邪魔者はいなくなった」


と吉備津彦命は、前鬼達を睨むと


「何回同じ手に引っかかってんだ!」


とグラスホッパーが、吉備津彦命の背後に現れ、

背中に槍を突き刺した。


だが、硬い鱗に覆われた体に槍が通らず、

代わりに、背中から突然飛び出した龍の翼に押され、

吹き飛ばされた。


「鬱陶しい羽虫よな

さっさと逝かぬか」


と振り返り、グラスホッパーを切りつけた。


グラスホッパーは、それを槍で不正だが、

吉備津彦命の体から溢れる炎に包まれた。


「ぐあああッ!」


「ほう!

耐えるのか!

やはり、お前は出来るな!

どれ、もっと火力を上げようか!」


とグラスホッパーを包む炎の火力を上げると

グラスホッパーの持っていた長い方の槍が弾けた。


「うああ、

ああああああああッ!」


グラスホッパーが、悶えると


「どうしたッ!

立って戦えッ!」


と吉備津彦命は、呼びかける。


すると、グラスホッパーは、急に動きを止め、

地に伏した。


「あはは!

また、同じ手に引っかかってるわ」


と能力をかけていた前鬼が笑ったが


「ほら、いつまで

倒れてるの早く立って...」


能力を解いても状況が変わらない事に怯える。


「ねえ、前鬼

そろそろ良いんじゃない?」


と後鬼が言うと


「もう...

解いてる...」


前鬼が、青ざめてそう言うと


「え?」


後鬼が、呆気に取られて言うと


「もう、能力解いてるの!」


と前鬼が、叫んだ。


「嘘...」


後鬼が、恐怖に顔を引き攣らせると

中鬼が


「何やってるの!

急いで、役小角を起こすわよ!」


と急いで役小角に駆け寄る。


「ねえ、起きて!

起きてよ!早く!」


中鬼が、役小角を強く揺らしていると

中鬼の肩に矢が放たれ、突き刺さる。


「ああッ!」


中鬼が、怯んで役小角を揺らすのを止めると

矢から炎に形を変え、

中鬼の体を覆った。


「ああああああああッ!」


「まあ、そう急くなせくな

どうせ、皆殺しだ」


吉備津彦命が、そう言いながら

前鬼に近づき


「貴様か!

俺をいつまでも弄んでいたのは」


と前鬼の顔を思い切り殴りつけた。


「ああッ!」


前鬼が、殴られた所に触れながら


「は、はッ!

いつまでも気付かないアンタがマヌケなだけよ!」


と震えながら強がると


「ほう、その威勢がいつまで持つか

試してやろう」


と吉備津彦命が、言い

前鬼の首を掴んで持ち上げ、

炎の様に熱した状態の腕で強く握った。


「かはッ!

あああ、

あああああッ!」


前鬼は、堪らずに泣きだしながら、

苦しんだ。


「ほら、強がって見せよ!」


と吉備津彦命が、全力で前鬼の首を握ると


「あああああああッ!」


と前鬼は、絶叫しながら首が折れて死んだ。


「あはははッ!

見たか、今の

まるで、鳥を殺した様だったぞ!」


吉備津彦命が、笑うと


後鬼は、役小角に駆け寄り、

役小角の顔を強く殴って


「起きなさいよ!」


と叫んだ。


「なんだ、仲間割れか?

醜い、最後くらい美しくあれよ」


と言いながら、吉備津彦命は後鬼に向け、

刀を振り上げる。


「いやああああああッ!」


後鬼が、それを見て絶叫すると


「悪い、遅くなったな」


と刀をとり、

飛び起きた役小角が、吉備津彦命の刀を受けながら

そう言った。


それを見た後鬼は、


「遅すぎるよ」


と言いながら、笑って涙を流した。


役小角は、周りに転がる仲間の死体を見ると


「てめえ!

よくも、

よくも仲間をッ!

許さねえッ!」


と強烈な冷気を放ちながら叫んだ。


「許さなければどうするんだ?

俺に勝てるのか?

何とか言って見せよ!」


そう言いながら、

吉備津彦命は、役小角の刀を振り払い、

役小角の顔に向けて散弾の様に火の粉を飛ばし、

目を潰した。


「うあああああッ!」


役小角が、顔を手で多いながら叫ぶと


吉備津彦命は、そのまま役小角の刀を持つ腕を切り捨てた。


「ああああッ!」


「喧しい!

お前も男なら、どんな姿でも戦って見せよ!」


と刀を収め、

役小角を挑発するが、

役小角には、見えていない。


「そうか、

苦しいか

なら、お前の変わりを女に務めて貰おう」


吉備津彦命が、そう言うと

役小角は、必死で強風を起こし、

吉備津彦命を遠ざけようとする

だが、


「無駄だッ!」


と吉備津彦命は、役小角の腹を殴りつけ、

怯んだ役小角の項を抉りとった。


「あああああああッ!」


役小角は、首から下が動かなくなり、

地に伏した。


「いや、いや、

いやああああああああああッ!」


それを見た後鬼が絶叫すると

吉備津彦命は、後鬼の首を掴んで

役小角の横に放り投げた。


そして、後鬼の背中に少しづつ刀を突き刺しながら、


「どうだ、女を守って見せよ」


と役小角を挑発する。


「やめろッ!

やめてくれ!」


何も出来ぬ役小角は、泣きながら懇願するが、

吉備津彦命は、後鬼の背中を貫き、

心臓を一突きにした。


「かは!」


後鬼が、死ぬと

吉備津彦命は、後鬼の背中を抉って

心臓を取り出し、

役小角の顔に押し付けながら


「ほれ、女が死んだぞ

どうした!

立って戦えッ!」


と叫んだ。


役小角は、頬に伝わる温もりに涙を流すと

発狂した。


「あああああああ、

俺は、俺はああああああああッ!

何も、何も出来ないッ!

ああああああああああああああああああッ!」


それを見て吉備津彦命は、

つまらなそうな顔で


「もう良い、逝け」


と役小角の首を切り落とした。


「さて、俺も

煉獄の主とやらに会いに行くとするかな」


そう言って、吉備津彦命は、

その場から立ち去ろうとすると、


「ああ、みんな、みんな死んじゃった...」


と咲が失禁しながら震えていた。


「そういえば、童もいたな

おい、お前も能力者なのだろう

戦えッ!」


と吉備津彦命が、叫ぶが、

咲は、震えて動けない。


「そうか、ならば死ね!」


吉備津彦命は、ゴミを見るような目で

刀を抜いた。


咲は、恐怖に震えながら

天に叫ぶ。


「誰か、誰か

助けて!」

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