第67話 【Side:ステラ】この欲に満ちた暴挙に終止符を!

「ス……テラ、食べられちゃった。あ、あぁ……うっ!」


 ミッシェルの嗚咽は嘔吐となり、更に床を汚す。


「オーガヨ、ステラハ美味シカッタカネ?マダメインディッシュが残ッテイル。ソイツ等ヲ起コシテ、犯スナリ喰ラウナリ好キニスルトイイ。時間ガカカッタカラ手短ニナ。」


 死神は愉快そうに語ると、オーガBの喰い散らかした残骸を見る。


「エ?」


 死神と視線が合った。


 オーガBの巨体が倒れ、現れたわたしに驚いたのだろう。死神は唖然としていた。


「あとは貴方だけだね、死神さん。」


◇◇◇


 時間は数分遡る。


 オーガBに殴られたわたしは床に倒れ込む。迫ってくるオーガBの巨体で死神の視界から隠れるようにすると、オーガBの乱打を受けながらもガードしつつ、逆にオーガの急所を蹴り上げて失神させる。


 あとは死角でオーガの身体を操って死神からはわたしを貪り喰っているかのように見せたのだった。リアリティを出すため、オーガの骨を何本か折り、死なない程度に肉を割いて血を噴出させたのだった。


◇◇◇


「こんなカンジ~?」


 顛末を簡単に説明してあげる。死神の悔しがる顔が見たかったのでwww!


「人間ガァァァッ!!」


 瞬間、死神の姿が溶けて無くなると、わたしの背後に現れ、鎌を振り下ろす!!しかし、そこにわたしは居なかった。


「背後に来ると思ったよ!へー、本当に死神にも実体があるんだね?コレかな?」


 死神がわたしの背後に瞬間移動した瞬間、わたしは高速移動して死神の背後に張り付く!死神の衣の中を弄ると小さな石のような感触があった。


「キーサーマーーー!!!」


 死神は再び空間移動をしてミッシェル達のところまで後退する。


「コノ二人ハ貴様ノセイデ死ヌノダ!!後悔シロ!!!」


 死神の鎌が二人に迫るが、届くことはなかった。その場で死神は床に落ちる。


「ほぼ魔力の霊体な貴方には『エナジードレイン』は効果大みたいね。」


 わたしは床に倒れる死神を覗き込み、その顔をじっくりと見てやるのだった……勝者として!


◇◇◇


 再び顛末を明かすと……さっき死神の核に触った時、わたしは魔力の楔を核に付けたのだった。不可視の鎖が楔につながっており、魔力の鎖を通して『エナジードレイン』で死神の魔力を吸い取たのだった。これで死神は動けなくなる。


「ステラ、貴様ハ……一体、何ナノダ!?」


「知らないの?わたしは魔法少女ステラ。そして、カボチャの悪魔ですので。」


「コンナコトヲシテ済ムト思ウナヨ、人間ヨ。次ハ……」


 よく喋る。もう終わりたかったのでまた魔力を吸収してやる……死神が活動を停止するまで。


◇◇◇


 とりあえず自分の言葉通り有言実行できて良かった。


 ゴブリンとオーク達は縄でグルグル巻きにする。死神はMP0でしばらくは動かないだろう。


 ミッシェルもまた気を失っていたので、二人を脱衣所に運び、身体を拭いて服を着せ、髪を乾かして床に寝かせる。


 それから汚れた大浴場を大急ぎで掃除する。


◇◇◇


 全てが終わると死神をはじめ、ゴブリンとオーガ達を王宮騎士団に差し出す。


 わたしの報告内容から、小隊長である死神を筆頭に関与した全員が……処刑となった。


 処刑はわたしにとって正直誤算だった。いや、それ程の罪をこれまで重ねてきた彼らには相応の決定かもしれないが、どうにも寝覚めが悪い。化けて出てこないか心配になるが、出たら出たでまた退治してやればいいかと思う。


 これで今後、人間が少しでも安全になるのであれば良かったのだと自分に言い聞かせるのだった。


◇◇◇


 そもそもの話。


 王宮騎士団宿舎の管理者オルテの勘違いでわたしは小隊長としてではなく、作業員の人間の補充と勘違いされたらしい。


 本来であれば小隊長を作業員を誤認した管理者オルテも死罪となるところだが、わたしの進言で無罪放免となる。今回のオルテの勘違いのお陰でミッシェルやフェイトの命を救うことができ、人間を不当に襲っていた者を捌くことができた功績が認められたから。


 オルテはステラに命を救われたことから、今後人間の扱いを改めることを約束した。手始めに、人間達の住まいや生活をそれこそ人並みなものに改築・改善するよう働き掛けてくれた。


 ミッシェルとフェイト、そしてパパス達は、わたしが騎士団小隊長の役であることを知ると急に畏まり、いままでの無礼を詫びるのだった。しかし、それはそれで良い勉強になったから気にしないでと言い、これからも今まで通りに接して欲しいとお願いしたのだった。


 ミッシェルとフェイトはわたしに奴隷として永遠の忠誠を誓うことを改めて申し出た。


 でも、奴隷契約はこの時点で破棄すると皆の前で宣言した。


 その代わり、2人にはわたしの友達になって欲しいとお願いした。

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