第52話 【Side:ステラ】ハーフタイム終了。そして決戦の地へ!

「アノ人間ガ何デアロウト、ドウナロウト関係ナイ。」


 死神が珍しく口を開く。


「そうだな、考えても仕方がないし、今は我等の勝利を祝おうぞ!」


 巨人族の5370が酒を浴びるように飲み干す。5370はヴァンパイアハーフのジオのところに行き、ジオの背中をバシバシ叩きながら酒を勧める。


「どうした、顔色が悪いぞ?酒を飲め!祝おうぞー!!」


 だが、ジオはうつむいたままブツブツ呟いている。その気味の悪さに5370はその場を離れる。


「嗚呼、ステラは大丈夫だろうか?嗚呼、ステラ。あの神々しい御姿をまた刮目したい。ハァハァ……。」


 女性陣はジオからかなり距離を取る。


「ね、ゴールドは仮面を取らないの?」


 キリコがゴールドに問い掛ける。


「普段から常にペルソナを着けている。素顔は晒したくないのでな。」


「何でだ?スラッとして美人そうなのに。見せてよー。」


 ゴールドはそれ以上言葉を返さず、芳醇な果実酒を嗜んでいた。


「はぁ、ステラがいないとつまらないなぁー。どうしてるかなぁ?」


 かまってくれる相手がいなく退屈そうなキリコは、とりあえず食欲に走るのだった。


◇◇◇


 ハッ!と目を覚ますと周りを見回す。そして驚き固まるわたし!!


 寝ていたベッドの少し離れた隣のベッドにはゲシュタルトが横になっていた。後ろには近衛隊員2名が控えている。


「起きたか、人間。」


 ゲシュタルトは首に固定具を着け、仰向けのまま語る。首が回らないのだろう。しかし、声には明らかに不愉快で内に怒りを押し殺しているような印象であった。人間の小娘にやられた惨めな姿を、やった本人に晒しているのだからやるせない……内心は即殺したいと考えているに違いない。


「命拾いしたな。貴様は何者なのだ?『魔法少女』とは何だ?」


 言葉の内容から『魔法少女』のことは知らないようだ。魔獣王の側近である近衛隊長が知らされていないなんてあるんだろうか?魔獣王、いや、魔王の真意がやはり分からない。


「わたしの居たところでは魔法使いの少女のことを……『魔法少女』って言うんです。あの、さっきは、その……すみませんでした。」


「レッド・ヘルタートル様の御力のお陰と知れ。貴様の力ではない。」


 相変わらず嫌な言い方をするなぁーと呆れるが、とりあえずゲシュタルトの話しを受け流す。言われて気付いたが、例の赤い盾は外されていた。没収されたのだろう。むしろありがたい!


 ゲシュタルトが手を叩くと近衛隊が近寄り、ゲシュタルトは耳打ちをする。そのまま隊員は部屋を出て行く。


 沈黙の中、気まずい空気が漂う。沈黙に耐えられずゲシュタルトに話し掛けるステラ。


「お怪我の具合はどうですか?」


「貴様がやったものだ。」


「……ご自愛ください。」


 再び重い空気の沈黙が支配する。


「歌でも歌いましょうか?」


「黙れ。」


 却下された。


 20分ほどお地蔵様のように沈黙に耐え忍ぶと、ノックする音がする。


「どうぞ〜。」


 そう口にしてハッとして口を抑える!自分の部屋でも無いのに。近衛隊員が睨む。


「入れ!」


 ゲシュタルトが入室を許可すると扉が開いた。


 さっきの近衛隊員とヴェイロンが入ってくる。近衛隊員が衣服を渡し着るよう促す。寝ていたシーツの中、わたしは全裸であることに気付く!男性ばかりのところで服を着ろと言う神経を疑うが、今更この国の方々にデリカシーを求めるのは愚かだと反省した。


 シーツの中で服に着替えると、ヴェイロンが着いてくるよう促す。


 部屋を出る際、ゲシュタルトに声を掛ける。


「お大事にどうぞ。」


 ゲシュタルトの額に怒りマークが見えたような気がした。


 通路をヴェイロンの後を付いて行く。


「ヴェイロン……何も聞かないの?」


「お前が話したいなら話せばいい。だが、今は時間が無い。」


「他のみんなはどうしてるのかな?」


 キリコやゴールドさんはどうしてるかな?それよりもわたしのことをどう思っているのかが気になった。


「あぁ、解散して帰った。残ったのはステラお前だけだ。」


 あんなことになって、みんな呆れているんだろうなと思った。嫌われたよね……。


「ステラよ、着いたぞ。」


 思いにふけっていたわたしはヴェイロンの言葉に我に返る。


「ここはさっきの……」


「魔獣王がおられる。王はお前と1対1でお会いなるそうだ。心して行け。」


 心の準備もなく、ヴェイロンはその重い扉を開け放つ!


 魔獣王と1対1のガチバトル!?


 そうだ、ヴェイロンはこういうヤツだった!口数少ないけど何処か嫌味なカンジ。迂闊だった。


「いや、そういう大事なことは先に言ってよーーーっっ!!」

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