第36話 【Side:ステラ】ステラは棍棒を手に入れた。ステラは赤い盾を手に入れた。
魔法の掛け合わせ。
俗に言う『複合魔法』をわたしは駆使し、初級魔法でも上のランクに近い威力や効果を引き出していた。これが特訓の最後にデネブが授けた策だった。
とは言え、通常は初級魔法→中級魔法→上級魔法の流れで習得し、複合魔法は上位の魔法に劣るため、複合魔法を魔法講義などで教わることはない。
まして、複合魔法は詠唱呪文が短く発動限界時間が長い初級魔法に適しているが、中級魔法以上を複合魔法として発動させるのは極めて困難であり、一握りの才能ある者しか到達できない領域だった。つまりは、中途半端な魔法であり、廃れた技術であった。
しかし、初級魔法しか使えないわたしにとっては容易に魔法効果を上げることができ、かつ、組み合わせは術者のイメージ次第なので、まさに『魔法のような魔法』だった。
わたしの基本戦術は、身体強化魔法で機動性を上げ、複合魔法で主に敵の動きを止め、あとは棍棒を叩き込む時に筋力強化で攻撃力を最大化した。
この棍棒、魔力付与こそ無いが軽い割に強度が高い材質で、金属鎧などの硬い相手にも打撃による衝撃を与えられるため、総合的な攻撃力は実は高いのかもしれない。
ちょこまかと飛び回っては、狙いを付けた敵を殴打し行動不能にしていった。とどめを刺すのが戦いの慣例であり、そうせずに生殺しにするカボチャの悪魔ステラの悪名が更に広まることとなったのは……不本意なんですケド〜。
わたしの装備は、武器として右手に棍棒。防具として左手に小型の赤い盾を装備していた。身体には金属鎧ではなく、軽装な革製の胸当てくらいであった。明らかにスピード重視を意識したものだった。
◇◇◇
「あれ?デネブ様の特訓って魔法でしたよね?ステラちゃん、魔法も使ってますけど、それ以上に戦士並みな戦い方してるンですけど!?」
「魔法使いらしく魔女のローブとハットを勧めたんだけど、動き難いからと断られたのは、こういう戦法だったからなのかぁ。」
デネブとモーリスは初めて見るその戦い方に唖然とする。いや、出場者と観客のほとんどが劣等種である人間の勇姿に唖然とし、『カボチャの悪魔』の異名が現実のものとなり白昼の元に晒された。
「済まないねぇヴェイロン。あの時の言葉は真実だったよ。いや、真実以上かな。」
デネブは一気に今までの不安が消え去り、強がりとも取れたステラの自信は確信だったことを思い知り、呟く。
「わたしたちはとんでもない『カボチャの悪魔』を産み落としたのかもしれないね。」
◇◇◇
大会開始直後、出場者は合図と共に武器庫から好きな武器を一つ得ることができた。当然、合図で出場者は我先にと良い武器を求めて全力で走る。
でもわたしは訳がわからず立ち尽くす。ルールというか流れを知らなかったのだ。
観客席で見ていたデネブとモーリスが大声で叫んでいたのに気付き……しまった!と思う。毎年のことで他の参加者には当たり前のことなのだろう。単にわたしが知らないだけだったのだ。運営~~~!!
用意された武器は本当にピンキリで、魔法の武器や殺傷力の高い武器、近距離〜中距離〜遠距離の武器、強力な魔力を内包する杖、なお、ハズレ武器もたくさんあった。
ビリで到着した時には、明らかに巨大な武器や重量級な武器やゴミみたいなモノを中心にろくな武器が残ってなかった。サイズや重さでわたしが持って苦にならないのはこの棍棒だけだった。
武器に次いで、防具の選択になる。
「ステラー、次は防具を貰うために、合図と共に防具庫にダッシュだよーーー!オーケィー?」
観客席から大声で叫ぶデネブ。応援するモーリス。
わたしは二人に向かって棍棒を振り上げ、了解のサインを送った。
合図と共に全員がダッシュしたわたしは100名中4番手で防具庫に着く。先に着いた者は魔力付与されたレアな防具を選ぶ。わたしも魔力付与され、かつ、自分が持って戦える防具を探す。結果、軽く強い魔力を秘めた小型の赤い盾を手にした。
◇◇◇
ステラの姿を見たモーリスは呟く。
「デネブ様……ステラちゃんのあの盾って確か。」
そう言われたデネブはステラの盾をマジマジと見る。
「あー、ありゃ『レッド・ヘルタートル』の甲羅でできた盾かな?」
「です……よね。あらあら~。うふふ。」
二人の脳裏に波乱の予感がよぎる。
◇◇◇あとがき◇◇◇
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
バッタのように飛び跳ねながら出会うものを棍棒でぶん殴り続けるステラ。野蛮人かな?これが我がヒロインのひとりとは……センス無いね。(lll-ω-)ズーン
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毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)
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