第12話「 K/W :神様のつぶやき」
~~~神様~~~
お風呂で寝落ちしそうになって。
ご飯を食べながら寝そうになって。
母親に叱られながらもなんとか自室に辿り着いて。
ベッドに倒れ込んだ
「ああー……っ、今日はホントに濃いぃ日だったなあーっ……」
仰向けになって天井を眺めて……おそらくは今日一日を振り返っているのだろう。
「会長さん……じゃなかった。プロデューサーさんと部活動をしてーっ、一緒に帰ってーっ、背負ってもらってーっ」
よっぽど嬉しかったのだろう、目を閉じて、頭を左右に揺すって
「心残りは名字でも下の名前でも呼べなかったことだけっ」
(……)
「でもそれは今すぐでなくても、徐々にでいいもんねっ? ねえ、神様っ? これからいくらでも、その機会はあるもんねっ?」
(……え? ああー……そう……だね?)
恋ちゃんの高揚とは裏腹に、わたしの気持ちはひどく沈んでいた。
「ええーっ? ちょっとぉー、そんなに軽い感じなのーっ?」
望んでいた反応が得られなかったことに口を尖らせる恋ちゃん。
(ああ、ごめんね? わたしもちょっと眠くて……)
「えー、神様でも寝たりするんだ?」
さも意外という調子。
(それはそうよ。わたしだって……)
女の子なんだから、と言いかけてやめた。
アイドルがそうでないように、神様もまた、女の子ではない。
(わたしだってたまには……ね)
だからそんな風に、ごまかした。
「たまには……? ふうーん……?」
半信半疑といったようにうなずいた恋ちゃんは、やがてぐるぐると目を回し出した。
「そう……なん……Zzz……」
そうなんだあ、と言う途中で力尽きたのだろう。
恋ちゃんは微かな寝息をたて始めた。
中一の女の子らしい、どこまでもあどけない寝顔で。
(……)
ああ、幸せなんだろうなと、わたしは思った。
このコは幸せなんだろうと。
大好きな人と付き合えて、背負ってもらえて。
これからの人生には、きっと希望しかないのだろうと。
それ自体は悪いことではない。
むしろ喜ばしいことだ。
だけど──
だけどわたしにとっては──
(……恋ちゃん、寝ちゃった?)
恋ちゃんが寝ているのを確認すると、わたしは口を開いた。
(ごめんね? 眠いっていうのはウソなの。ホントはね……?)
ぽそり誰にも聞こえないような小さな声で、恨み言をつぶやいた。
(恋ちゃんがうらやましいなって、思ってたの)
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