第229話 もふもふは魅力的

 というわけでミカのお店を後にした。あかねの批評? 動きやすいようにミニスカート丈で、生地はデニムっぽい頑丈な感じ。前衛もこなすからそういう感じの服装になったのは仕方ないだろう。


 というか地味にミカのお店の洋服は良い素材使っているし、クロエとめぐの補助魔法があるから鉄の鎧とか着なくていいのは凄く便利。むしろ変に鎧とか着こむと機動性落ちるから俺達のパーティには向かない。


 みんな動いて敵を殺すガチガチのファイターだよ。盾持ちのはずのフラフィーももはや普通に腕とかで受けられるくらいのスキル手に入れちゃったしな。もはやこの世界の人間に対して負ける気がしない。


「ねぇキミヒト君、ほらほら、みんなで並ぶとすんごい可愛いでしょ?」


 あかねが史上最高にうざい。ダル絡みする奴はうちのパーティには俺しかいないと思っていたがあかねまでしてくるとは思わなかった。しかも俺がまんざらじゃないとわかっている所が余計たちが悪い。


 みんなお洒落してるみたいな感じだしテンション上がるのもわかるけどとりあえず落ち着いてほしい。じゃないと俺のテンションが暴走してあかんことになるだろうが。


 このあかねのテンションに俺が乗ってみ? どうなると思うよ。うちのロリたちは何だかんだで俺にしか手を出さないからあかねのダル絡みを止められない。つまり俺がはっちゃけてもあかねと一緒なら非常にやりづらいはず。


 あれ? もしかして誰か味方につけて遊びまくれば安全なのでは?


 それであかねの服だが、上はTシャツを着てその上に薄手のフード付きの上着を羽織っている。ぶっちゃけ彼女力としてはそこまで高くはない服装だが、一般的に見る彼女っぽい服で検索するとヒットするような感じ。


 そんなあかねが制服のロリ達と戯れていると近所のお姉さんが子どもたちの世話をしているみたいに見えるので非常に和む。こういうほのぼのとした光景遠くから眺めてるのとかほんと好き。


「キミヒト君ほんと正攻法に弱いよね」


「そろそろマジで勘弁してくれ」


 茶番を繰り広げて宿屋へ向かっていると丁度探索帰りっぽいパーティが宿屋に向かって歩いてきた。そして戦闘にいる魔導士っぽい恰好の女性が俺を見るなり声をかけてくる。


「リーダー! リーダーもこの街に来たのか! いやーやっぱ異世界は楽しい!」


 気さくに声をかけてくるが俺はこいつの顔を知っていても名前を知らない。聞いていないから当然ではあるが、こんなにリーダーって慕ってくれているのに名前を知らないのは正直申し訳ない気持ちしかない。


 一度会っておきたいとは思ったが、ヒビキから連絡網で連絡来た時に名前を教えてもらえたらなーと思っていた。だが会ってしまって知らないなら聞くしかないわな。顔だけ思い出せて名前覚えてない昔の友達とかちょっと気まずいよね。


 相手がこっちの名前で呼んでくるのにこっちは名前で呼べないとかあるある過ぎてやばい。ロリ以外の名前覚えるの苦手なんだよな。


「あー、五番だよな? すまん、名前教えてもらって良いか?」


「そっか、そういえばリーダーには名乗って無かったね。私の名前はルカ、スキルは見てたからわかると思うけど火属性の魔法ならなんでも任せて!」


 そう言ってルカは自分の周りに細い炎を生み出しくるくると回転させて消滅させる。かなり器用な使い方が出来るようになったようだな。王城ぶっ壊してからそんなに時間が経ってないのに凄い成長だ。


「そうか、よろしくなルカ。それにしてもずいぶんダンジョン攻略してるみたいだけどどのくらい攻略したんだ?」


「今のところは三つかな。と言っても二つ目のダンジョン攻略は商人たちにアイテム売りまくったせいで時間かかったけど」


 それか、ギルドマスターがすんごい疲れていた原因は。普通探索者はギルドを通して物を売らなければならないが、肉のダンジョンとかそう言ったダンジョン内で取引が行われる場合はその限りじゃない。


 なにせ命に係わる問題もあるし、それが成立しなかった場合商人たちの利益が少なくなる。危険は増えるが利益があるから商人たちは集まる、そしてその集まった商人にものを売るために探索者がさらに増える。


 そもそも戦える商人がいた場合、いちいち納品なんてしてたら丸損だろう。


 そうやって好循環を作ってこの街は栄えてきたみたいだし、食料の供給とかは安全に行われるようになった。やりすぎるとギルドから注意があるだろうが、そこまであくどい商人はなかなかいないみたいだしな。


「キミヒトさん、この人たちって……」


「ああ、勇者達だよ」


 俺の気さくなやり取りと、五番の尋常じゃない実力を見てフラフィーが俺に声をかけてくる。その声は驚いているようでもあり、嬉しそうな響きを持っていた。


「良かったですね」


「あぁ……」


 前の世界でフラフィーだけは最後まで一緒に事情を聞いていたからその感動もわかってくれるだろう。というか世界を救うための第一歩みたいなもんだからな。自分のことのように喜んでいるフラフィーは本当にいい子だよ。


 よしよししてやろう。


「あ、あの!」


「ん?」


 俺がフラフィーをよしよししているとルカの後ろにいた女の子が声をかけてくる。この子は第二グループにいた子だからそこまでの強さは持っていなかったはず。しかしダンジョン二つ攻略したことでかなりの実力を付けたことは間違いないだろう。


 そしてその目には羨望の光が宿っていた。視線の先にはフラフィー。


「そ、その女性、ねこの獣人さんなんですか……?」


 その視線は羨望だけかと思ったが強い欲望の光が見て取れる。どうしてもフラフィーと友達になりたいという気持ちの他に、猫をめちゃくちゃに可愛がりたいのに今までいなかったからその感情を持て余してるみたいな。


「は、はいそうですけど……」


「お、お友達になってください!」


 その少女は勢いよくフラフィーの前に手を差し出し頭を下げる。わかるよ、猫好きだとこのフラフィーの耳と揺れる尻尾をみたら完全に心奪われるよな。


 フラフィーはというと、こういう反応をされたことが無いからかどうしたものかと少女と俺を交互に見ている。慌ててるフラフィー久しぶりに見たからめちゃんこ和む。なので軽くフラフィーの背中を押してやる。


 フラフィーは意を決して少女の手を握る。すると少女は物凄く嬉しそうにフラフィーを抱き締める。いや、ちょっとなにやってんのこの子。いや分かるけども。


「あっ、え? あの? んー!」


「はぁはぁ……モフモフ……柔らかい……!」


 少女はフラフィーのあらゆるところをもふもふしだしその表情は怪しくなっていった。そして手つきが確実にこういうことをし慣れてるプロの手つきだった。ふーん、やっぱりそう言うパーティなんだ。


 あとこいつはあれだ、猫をめちゃくちゃに可愛がってそらもう相手が嫌がるまでひたすらに構いまくって猫が切れてそろそろ本気出しそうってくらいまで可愛がって引っかかれて喜ぶタイプ。つまり俺と一緒。


「キミヒトさん!? みんなも見てないで助けて下さい!」


「良かったわねフラフィー。お友達が出来て。欲しいって言ってたものね」


「巨乳、おめでとう」


 エルフ姉妹はフラフィーの方向から微妙に目をそらして応える。その気持ちはわからんでもないな、普通に直視するには少女の表情が放送禁止過ぎる。正面から手を握ってもふもふしてたのにいつの間にか背後に回って色々まさぐっている。


 往来でやるなよ。宿屋に入れば良いってわけでもないけど。


「うーん、やっぱりフラフィーちゃんのもふもふは魅力的だよね」


「迷える猫娘は女の子に好かれる宿命です」


「めぐが言うなら間違いないな」


 前の世界でクロエにめちゃくちゃ可愛がられてたもんな。血を吸われていたとはいえクロエとイリスの二人がかりでもどうしようもなかったみたいだし、俺の時も本当に死ぬほど疲れた。


 もしかしたらこの少女ならフラフィーを大人しくさせられるのでは? それができたら本当に勇者として称えてあげよう。

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