第102話 お礼参り

「やってるー?」


「……来たね。いらっしゃい」


 昨日の約束通り薬屋にもう一度やって来た。俺にしか教えないという謎のロマンあふれるワードに釣られて俺一人で突撃だ。


 しかし特別製の精力剤をもらいに来たわけだけど、どんな状態になるのか気になるところだな。俺は我慢出来るけど人格に多大な影響与えるような奴じゃないことを祈る。


 じゃないと誰にも使えないからね。使う機会があるかどうかは知らないけど。


「……まずこれが普通の精力剤。百本」


「多くね」


 なんかめちゃくちゃ大量に渡してきたんだけどどういうことだよ。そんなに素材あったっけってレベルの量なんだが。


「……本当に魔物の全身持ってきたから張り切ってしまった」


 どうやら募集には全身と書いてあったが、本来であれば魔物の体の全身から一部分を持ってくるのが普通らしい。例えば腕とか脚とか。紛らわしいけどそれが一般的な解釈だったのか。


 たしかにそれなら収納持ってなかったロンドの連中も持って帰る事が出来るわな。殺さずに切り取って持ち替えるというグロイ行動にはなるがそういう仕組みだったのか。


「とりあえずもらうけどいくらだ?」


「……持ち込み割引入れてこれくらい」


 提示された金額は思ったよりもずっと安い。それなら全部買って大半はロンドにくれてやろう。あいつらなら喜んで使ってくれるはずだし恩返ししとこう。こんな形なのはちょっと嫌だが。


「それで特別製ってなんなんだ?」


「……惚れ薬」


「ほう?」


 精力剤をどうにかすることで惚れ薬になるという事か? いややばいだろそれ。確かにそれは色んな人に教えたらいけないやつだわ。


 というかロリコン公言してる俺にこそ渡したらいけない代物だと思うんだがどうだろうか。自分で言うのもおかしな話ではあるけど。


「……これには特別な魔力が込められている。あとはロリコン戦士の体液を込めればあなたに惚れるようになる」


 体液とはまたずいぶんな事を言ってくれますね。それはあれですか、血液で良いんですよね? でも血を出すより簡単なものがあるんでそれでもいいですかね。


「なんでそれを俺に?」


「……あの子達が訳ありなのはすぐわかった。それでもあんなに懐いているのはあなたが良い人の証拠。魔物にでもなんにでも効くから、もし何かあれば使うと良い」


 いや何かおかしいだろ。それはあれか、魔物を手懐けるための最終手段として持っておけってそう言う事なのだろうか。でも魔物とするのは個人的には凄く難しいと思うんだ。


 体型が違うどころか体系が違うだろ。肉体を求められたところで応えられるわけもなく。


 というかこの人に対して何かしたわけでもないのに親切すぎるんだけど。怪しさ満点だけどロリ達に優しくしたからって言葉を信じておくとしようか。


「……この惚れ薬は好意を持つだけ。別に精力を増す効果はない」


「タイミング的に紛らわしすぎだろ」


「……それで、いる?」


「ありがたく」


 何があるか分からない世界だしテイマーっぽいことも出来るならありがたく頂戴しよう。人間にも使えるみたいだから最悪の場合強制的に言う事きかせることも出来るし。


 その場合はクロエがいるからあんまり意味はないかもしれないけど。でもこれがあればロリにこっそり使って実は好意を持っている有望な子を見つけたんだとか出来るな。みんなには黙っておこ。


「……それじゃまた」


「ああまたな。よくわからんけど大事に使わせてもらうよ」


「……ご利用は計画的に」


 この魔女子は何者なのだろうか。だいぶ怪しい感じがするしこんな薬を簡単に渡してくるとか普通にありえない気がする。なんだろう、この魔女子からは嫌な予感がひしひしと感じられる。


 だけど敵にならないなら特に今は気にしなくていいだろう。何故かロリ達の事を気にかけてくれていたから悪い人ではない。


 ロリに対して優しい気持ちになれる人が悪い人なわけがない。俺はそう思ってるよ。この世界にロリコンがどれだけいるか分からないが、ミカとこの魔女子はわかってくれるっぽい。


 でも可能性としてはエルフとかかな。もしかして知り合いだったとかだったら結構よくある流れだし薬に詳しいというのもいかにもエルフっぽい。


 魔女子エルフ、ありだと思います。


 ちなみに鑑定ははじかれた。エルフ関連のことでしかはじかれてないからすごい怪しいと思う。


 さて、何かしら怪しい儀式でもやらされるかと思っていたけどそうでもなかったから一瞬だったな。これならまた女神様にでもお礼参りに行ってくるか。


 なんかロリ達連れて行くのは恥ずかしいというか個人的にあんまりやりたくない。何故かと問われるとわからないけど相手が女性というところもありなんだか妙な気分になる。


 女神だから流石に何か起きるとは思わないけど。


 というわけで廃墟のようになっている教会にやってきた。フラフィーあたりでも連れてきて掃除しようかなここ。拝まなければ出てこないだろうしフラフィーは別扱いなので問題無し。あの子は掃除めちゃくちゃ上手いし。


「さてお祈りしますかね」


 拝啓女神様。


 穏やかな気候に見舞われこちらはとても過ごしやすくなっています。女神様におかれましてはお忙しい事とは思いますがいかがお過ごしでしょうか。


 このたびはもう一度女神様に感謝の念を送りたく馳せ参事ました。というのも私の生活はロリ達で彩られ楽しく過ごせるようになっただけでなく、女神様に出会った後にさらに嬉しい出来事がございました。


 あまり口で言うのは憚られる内容ではございますが、幸せを多く感じることが出来る時間を頂けました。女神様がいればこそこのような出来事に預かることが出来たのだと思います。


 おかげさまで仲間たちとの仲も良好で、少し引け目に感じていたところも本日解消いたしました。女神様にお会いしてから良い事が続いています。


 こちらからは感謝の気持ちを伝える事しか出来ないと言うのが大変もどかしく感じますが、それで女神様も喜んでくれると言うことなので出来る限りの感謝の気持ちを送ります。


 適度に休憩をとりご自愛くださいますようお祈り申し上げます。


 敬具。


「重い重い」


「こんにちは女神様」


 俺の祈りが届いたのか女神様がまた姿を現してくれた。あのだらーっとした寝そべったスタイルで登場してくれたのでかしこまらずに済むのはありがたい。

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