第95話 童貞殺しそうな服

「おいおいおいおいおいおいまじかよすげえええええ!」


 俺の興奮は収まらなかった。何件か回ってみたがクロエに似合いそうな服を置いているお店が中々見つからず諦めかけていたが、本気の本気で透視を行い街の中をくまなく探していたらものすごくよさそうなお店を見つけた。


「まじかよ大丈夫かあのお店みんな早く行こうぜ!」


「クロエさんごめんなさい私が間違ってました」


「いいのよフラフィー、もう手遅れだから」


「一蓮托生、全員爆死」


 逃げ腰になっているロリ達を無理やり引き連れそのお店を目指して歩いていく。お店の場所はかなり街の端っこのほう。この前外に出た時に通ったスラムみたいな場所とは違い、なかなかに綺麗な一角だ。


 なんていうか住宅街に近いけどお店ばっかり並んでいる場所って感じのところ。なんとか通りとか名前がついていそうだけど普通にお店が多い通りでいいと思う。


 そんな場所から少し外れ、人があまり寄り付かないような路地裏にそのお店はあった。そう、簡単に言うと大人のお店みたいな感じ。


 佇まいこそ普通の建物だが、よく見ると要所要所に日本人の性癖が見て取れるところがある。服関係のお店まであるとはなかなかにやりよるわ転生者。理性を失いながらも俺みたいに性癖が残ってるやつがいたんだろうな。


 素晴らしすぎる。


「こんにちはー」


「キミヒトが普通に挨拶してると嫌な予感しかしないわね……」


「あんなテンションあげてきて良い事あったら逆に怖いです」


「全て受け入れるしかない」


 俺たちが店内に入るとそこにはおしゃれな感じとは少しずれた感じのロリータファッションに身を包んだ店員がいた。


 なんだろうか、アイドルが着てそうな感じの洋服で普段着にするにはおしゃれすぎるけどアイドル衣装としてはちょっと物足りないが、とりあえず可愛い感じの童貞殺しそうな服だった。


 着てるのがマッチョって言うのが最悪だけどね。お洒落っつーか汚洒落っつーか。ふざけんな。


「あら~いらっしゃいボーイズたち~」


「帰ります」


「待てよお前が欲しいのはこういう服じゃないのか?」


 オカマ言葉から一転してめちゃくちゃイケメンボイスを発してきた。服装と見た目から物凄い違和感を感じさせるがそのおっさんが言うのは確かに俺が求めていたふりっふりの可愛い奴だ。


 このおっさん……わかっていやがる!


「すまないおっさん、俺が間違っていた。あんたがその服着てたのは着心地、いや着ている少女たちがどんな気持ちになれるかを想像するための大切な儀式だったんだな……。勘違いして……本当にすまねぇ……」


「ただの趣味だけど?」


「帰ります」


 あまりのお目汚しっぷりにビビり外に逃げようとするが扉は固く閉ざされている。透視すら出来ないためこれは魔術的に干渉していると思われる。閉じ込められたの?


「まあ待て兄さん。うちの店はそんじょそこらの店とはわけが違う。そもそも見つけることも難しいのにここに来たってことはどうしても欲しい衣装があるんだろう? ここはロマンと芸術の店だ。ゆっくりしていけ」


 ケイブロットに出没するロマンを語る人物は変態しかいないのだろうか? 絶対こいつロンドと知り合いだろ。


「キミヒトさんが押されてる……?」


「なかなか珍しい光景ね」


「だからこそこれからの展開が怖い」


 あまりの出来事に俺たちは警戒するしかなかったが奥からどたばたと誰かが駆け込んでくるような音が聴こえてきた。ロリ達の警戒が俺に向いてるのが嗜虐心をめちゃくちゃに刺激してくる。


「店長! そういう服で出歩かないでくださいっていつも言ってますよね!? お客さんが来たらどうする……っているうううう!」


 そこにはアイドルが着てそうな感じの洋服で普段着にするにはおしゃれすぎるけどアイドル衣装としてはちょっと物足りないが、とりあえず可愛い感じの童貞殺しそうな服を着ている少女がいた。


 つまりは店長とペアルック。なにここ地獄?


「うわあああだから嫌だったんですよおおお人に見られたあああ!」


「私は一向に構わん」


「うるさいですよおお!」


 少女は号泣し店長と呼ばれた男を奥に連れ去ろうとするがびくともしない。店長は変態なのか男前なのかはっきりしたほうがいいと思うんだ。


 というか俺たちの置いてけぼり感が半端じゃない。お客をほっといて店員同士で謎の漫才を繰り広げるのはお店として面白いとは思うけど俺はクロエを魔法少女にしに来たんだ。


 魔法少女は処女性が必要とかいう輩が沸いているが俺にはそんなの関係ない。なぜならクロエは俺だけの魔法少女だからだ。好きな子の魔法少女とか最高すぎて俺がマスコットになりたい。


「ミカちゃん、お客様の前よ。落ちついて」


「店長がそんな恰好してるから落ち着かないんですよ! 着替えてきてください!」


「こんなに可愛い洋服なのに何が不服なの?」


「店長がムキムキだからですよ! 筋肉抑えてくれればここまで言いませんよ!」


 テンパる少女と自由な店長。まるで俺とフラフィーの様だがこのミカと呼ばれた少女は本気で嫌そうにしているところが違うところだな。


 え? フラフィーも本気で嫌がってる? 本気だったら俺死んでるからまだいけるくらいだよ。たぶん。


 というか俺も女装してみたらこんな反応されるだろうか? 俺の女装に需要があるかどうかはともかく、この店長よりは似合うと思うよ。


 何張り合ってんだって感じだけど。あと筋肉って抑えられるもんなの?


「くぬぬ……もう諦めます。お客さんいらっしゃい……ってもしかして噂のロリコンの探索者さんでは?」


「はい、ロリコン戦士のキミヒトです」


「兄さん、いい趣味してるな。どうだ、今度行きつけの店で語らないか?」


「お断りします」


 こんな変態ファッションのおっさんと出かけたら即刻御用だろう。そもそも行きつけの店に幼女がいなかったら俺は絶対に行かないしティティのところがいい。


「そうか、俺が面倒見てる子ども達が運営してるお店だったんだがそれなら仕方ないな」


「お店閉まるの何時ですか? その後行きましょうって痛っ!」


 フラフィーが包丁……じゃない今回はクロエがファンシーステッキで小突いてきた。なんだよかわいいかよ。


「キミヒトには私たちがいるでしょ」


「ああそうだな、今夜のお誘いってことで良いかな?」


「違うわよ! いやどっちでもいいけど……」


 可愛い。そこで照れるのほんとずるいって。まじで頭おかしくなっちゃうんだけど。精力剤待たずして死んじゃうんじゃないだろうか。


「それでお客さん、どんな衣装をお求めですか?」


「兄さんよ、うちはオーダーメイドも承るぜ?」


 くそうこの店員たちの緩急が激しすぎて癖になりそうだ。新作のお洋服とか買いに来ちゃうよこれ。

 

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