第94話 満を持して

 素材をそろえて依頼人の住所にやってきたわけだが、ここ薬屋だわ。栄養剤買ったときにカウンターに直置きしていたのはもしかして素材として残しておきたかったからなのか?


「やってるー?」


「……ロリコン戦士キミヒト」


 ロリコン戦士か、なにも間違っちゃいねえな。剣もってるから戦士とも言えるしロリコンとして戦っているからロリコン戦士と言っても二重の意味で何も間違っちゃいないな。


 誰が言い始めたのかは知らないが良いあだ名をありがとう。


「キミヒトさん、普通は褒め言葉じゃないですよそれ」


「仮にそうだとしても俺にとってはこの上ない褒め言葉だ。全く問題ない」


 自信満々で応えるとイリス以外からは呆れの表情で見られる。最高だね。


 そんなことはとりあえず置いといて素材を提出して精力剤を手に入れなければならない。大量にあるからいくつか作れるだろうし頼み込めばやってくれると信じてるよ。


「というわけでこのクエストの素材集めてきた。これで足りるか?」


「……足りる。これだけあるってことはもしかしてほしかったりするの?」


 どうやら精力剤を欲しいと言う気持ちがもろばれしていたらしい。ちょっとワクワクしていたからその辺の気持ちを見透かされたのだろう。あと後ろのロリ達がちょっと恥ずかしそうにしてたのも関係してそう。


 ロンドも手に入れていたことあるみたいだしそれなりに需要があるのだろう。だが察してくれたのならその流れに乗るしかないな。


「その通りだ。後ろのロリ達が満足できるくらい強力なやつを頼むよ」


「ちょっとキミヒトそういうこと言わないの!」


 クロエが必死に俺の事を止めようとするが身長的に全然足りないのでじゃれついてるだけに見える。腰回りに幼女侍らせてると幸せしか感じられなくなるから困るな。


「……特別性も作れる」


「なんだって!? ちなみにどんな効果に……?」


「……秘密の技術だから教えられない。でも一人だけならいい」


 魔女子はそう言って俺の目をじっと見つめる。え、なんか凄い期待してる風に見えるんだけどこれ自分がやりたいだけとかそういう感じなんじゃない? 若干危険なにおいがする。


 だが大丈夫だろう。特別性の精力剤が気になるだけとも言うけど危ないとかそんなことはないよね?


「わかった、俺が責任を持って実験材料になろうじゃないか」


「キミヒト、なんだか楽しそう」


 イリスよ、男の子っていうのは秘密の技術とか聞くとテンションあがっちゃう生き物なんだよ。それがどんなに危険なものでもロマンを追及するこの衝動に抗う方法はなかなか見つからないんだ。


 特別性の精力剤が嫌いな男子なんていません。


「……普通のも作るから、明日同じ時間に一人で来て」


「ああわかった」


 そうして俺は素材を一式渡し翌日に会う約束をした。


 ちなみに魔女子はロリじゃない。俺より年上でお姉さん的な感じの見た目だけど店内の暗い雰囲気と合わさって蠱惑的な雰囲気を持っている。


 怪しいか怪しくないかで言ったら当然怪しい見た目だけど話した感じは特に気になるところはない。至って普通の薬屋だと思う。ちょっと怪しいでかいツボに薬品入れてぐつぐつ煮てる雰囲気が似合うだけの。


「さてこの後何するか」


 想像以上に時間がかからなかったことと、鉱石のダンジョンに行かなかったことでだいぶ予定が空いてしまった。あまりにも暇すぎるしみんなでどこか行くのもありかもしれない。


「キミヒトさん、私アトラクションのダンジョン行ってみたいです!」


「あそこ俺とイリス出禁だから」


「何したんですか!?」


 前に説明したはずだがどうやらフラフィーは本気だと思っていなかったようだ。それなのでまた説明して俺がガチで死にかけた話をしてやった。


「あれ本当の話だったんですか……。本当っぽい嘘の話かと思っていました」


 確かに流れ的にはふざけていたのが丸わかりな応答だったしかなり楽観的に話していた。イリスがわざと嫉妬心煽るような言いかたしてたのもそれに拍車をかけていたと思う。


 でも実際にあれは本当に死にかけていたしもう二度と行かないと誓ったのでまじで無理。乗り物恐怖症になりそうだったよ。


「楽しかった。また行きたい」


「絶叫系以外ならそうだな……」


 イリスがとても嬉しそうにしているがこの子はSっ気に目覚めてしまったのだろうか。いつも無表情なイリスがとても生き生きした目をしてるのは嬉しいけど本当の意味で身が持たないです。


「じゃあフラフィー一人でいってらっしゃい」


「なんでのけ者にしようとするんですか! 一人じゃ楽しくないですよ!」


 可愛らしい猫パンチが飛んでくる。最初からこれだったらもっと優しくしてたと思うのにもったいないことをしたなこいつは。こっちの事情的にはとてもありがたいことではあったが。


 仕方ないな、それなら全員で楽しめてやりたいやりたいと思っていたあそこに行くしかないだろうな。これから平和を享受するためにも全力で挑まなくてはならない。


 そう、満を持してクロエの魔法少女化計画、本始動だ。


「ねぇキミヒト、嫌な予感がするんだけど気のせいかしら?」


 俺がギラギラした目をしだしたのでクロエがいち早く察知する。その嫌そうな目ほんとそそる。めちゃくちゃにしてやりたい。


「俺にはわくわくしかないから気のせいだな。ふりふりのやつがいいよなわかるわかる」


「何もわからないんだけど!? え、今から!?」


 俺がクロエの手をつかみ逃げられないようにすると反対側にはフラフィーが陣取る。俺の反対側の手はイリスなので四人で横一列になる形だ。


「私もクロエさんの可愛いところみたいですね」


「よく言ったフラフィー。お前にもコスプレ衣装を買ってやろう」


「いらないですよ!? せめて普通の服にしてくださいよ!」


 クロエが魔法少女だろ? そしたらフラフィーは露出多めの武闘家っぽい衣装……いやここはあえてただ着せたい服を選ぶという手段でも良いな。


 となると童貞を殺す系の服を着させよう。ロングスカートに上は胸を強調する感じの清楚なブラウスとかああいう感じのやつ。ああ肩紐は無しのタイプがいいか?


 ぱっと見普通だから普通と言い張って着せてしまおうそうしよう。


 イリスは……魔法少女だと被るけど双子コーデって言葉があるくらいだしそれもありなんだよな。でもここはあえて違う服……やべぇスモッグとかないかな。


 いや着てくれるかわからないしそもそも俺にそういう性癖はないと信じたい。ならばこれは確認するためにも買うか作るかしてもらう必要がありますね!


 よしその手でいこう。


 俺だけ物凄いウキウキしながら仕立て屋を何件か回り始めることにした。

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