第47話 私が先に約束したから
「ちょっとクロエさん!?」
フラフィーが慌ててこっちにすっ飛んでくる。俺としたことが驚いて素の反応を返してしまったことを後悔する。あそこはじゃあ俺もって言って抱きしめ返すシーンだったよなぁ!
「なにフラフィー?」
「いえあの! そういうのはよくないと思います!」
「じゃああなたにも」
「きゃー!」
クロエはフラフィーにもがぶっといった。めちゃくちゃ俊敏に取りついたから正直びびったけど女の子の絡みを見ることが出来てとても満足です。
それにしても噛まれたとこ全く痛くないな。それどころか快感が少し残ってるっていうね。魅了といい噛みつきといい快感与える行動に特化しすぎてるからクロエまじでエロいです。
「ふふ、良い子良い子」
「うええん、ひどいですぅ……」
フラフィーはクロエによしよしされながら泣いていたが、こちらも噛まれたところに血のあとはない。血を吸っても傷がつかないようにする何かがあるんだろうか。
「おねえちゃん、えっち」
「イリスもする?」
「や」
なんかクロエやけになってない? 可愛いし楽しいから全然いいけど。
「クロエ、イリス、体に問題はないのか?」
あの魔法を使った後クロエは平然としていたがイリスは倒れそうなほど疲弊していた。イリスはクロエを精霊の力で抑えてると言ったが、さっきのは限界ぎりぎりまで解き放ったのだろう。
そうなると二人の体への影響が気になるところだ。というかクロエが吸血衝動に襲われてるのはそのせいでは。
「もう平気。大丈夫」
「私も大丈夫よ。キミヒトの血おいしかったし」
「お、おう」
やばい照れる。いや照れる意味わかんないけど直視できないぞこれ。恥ずかしいと言うか初めてキスしたあととかそういう感じ。うわー、これ俺いじられる側なんじゃないのか?
「あらキミヒト、照れてるの?」
ほらきた。肉食獣の目してるもんこの子。フラフィーはうつぶせになってぶつぶつ言ってるし俺にも何かする気じゃないのか。エロ同人みたいに!
「照れてるよ。正直クロエに興奮した。今すぐにでも体を求めてしまいそうだよ」
だから俺は全つっぱする。恥ずかしいならすべてをさらけ出して相手を俺よりも恥ずかしい思いにさせる。これしかない。
俺も恥ずかしいが両方恥ずかしいなら勢いでごまかしきれる! いけ俺! ここで引いてなるものか!
「じゃあ宿に帰ったら呼んでくれる?」
「ええと……」
もうやだクロエさんとっても余裕なんですけど。俺の事手玉にとって嬉しいのでしょうか嬉しいんでしょうねこの顔みる限りは!
しかしそこで待ったがかかる。
「お姉ちゃん、それはだめ」
「イリス、どうして?」
イリスはクロエの前にたち俺をかばうように手を広げる。おお、どうしたどうした。俺を取り合って喧嘩するのはやめてくれって言えばいいだろうか。
「私が先に約束したから」
「ええと……」
あれか、朝のやつか。俺がふてくされてたからイリスが元気づけるために一緒に寝るっていってくれたやつか。え、まじでいいの? 確約した覚えもないけど!
そしてまじで俺をとりあって喧嘩するの? 限りなく冗談に近い冗談だったんだけど。そしてこのままだと二人に襲われる未来が見える。
最高じゃねえか。いやでも最初は一対一が良いと決めていたんだけどこれどうしたらいいんだろうか。
「それならイリスが先でいいわよ」
「さすおね。話がわかる」
あ、この子たちも同じ気持ちなの? いやなんか含みがあるような感じだから非常に怖いんですが君たち。
「わたしはー?」
「ひぇ」
いつの間にか復活していたフラフィーが俺の背後から何か硬いものを当ててきている。君それナイフじゃないよね? ねぇ、聞こえてるかな?
「また私だけ仲間はずれにしちゃうんですかー? いっつものけものにしようとしてません? ねぇ、なんでですか?」
フラフィーのフラグこんなに立てた記憶ないんですけど! あれか? 嫉妬深い種族なのか猫獣人。リアルの世界の猫は主人に他の猫の匂いついてるとめちゃくち拗ねたりするけどそういう感じ?
片手にナイフもってそんなことされても微塵も可愛くないんですけど? いやごめんうそですめちゃんこかわいいですはい。だからそれ刺すのやめてください。
「落ち着けフラフィー、冗談だ」
「そうですよね私の存在って冗談ですもんね知ってますよいつも私の事ほったらかしにして二人にばっかり構ってますもんねしかも私に構ったと思ったらいじめるかおちょくるか突っ込みさせるかのどれかくらいしか選択肢がありませんしどうしても私をペット扱いしますもんね私の事可愛いって言ったのもどうせ嘘なんですよねこのロリコン野郎が!」
早口怖い。そしてごめん何も反論できねえわ。全部事実だけどなんだ、フラフィーにも甘い言葉ささやけばいいのか? でもフラフィー相手だとオチ考えなきゃ! って謎の強迫観念に駆られるんだよな。
クロエとイリスにガチの行為を働かないようにするためにはどうしてもフラフィーには犠牲になってもらいたいのに! ごめんな!
「フラフィー、最初に抱いてほしいのか?」
「ち、違います! のけ者にしないでほしいって言ってるんです!」
あ、この反応微妙なところだ。押せば行ける、引けば冗談で済ませられる。だが言っていることも本当と。良いタイミングで放り込んでくるな。やはりフラフィーは便利ポジションから抜けられないな。
「フラフィーも好きだよ」
「ええと、だから」
「ペットとしてだけど」
「だから! そういうの!」
どすっと背中に重い感触。おおおおおい!? 刺さってます刺さってます! なんで!? なんで刺したのこの子!
「治さないわよキミヒト」
「というか止めて!?」
「やれ、巨乳」
「なんでみんな敵に!?」
俺がみんなと立ったフラグをごまかそうとしたのが見透かされたのだろうか。見透かされたんだろうなぁ。あまりにもフラフィーの扱いがひどすぎるのもあるかもしれないけど。
でもこのするかしないかの絶妙な境界線好きなんだよなぁ。好きな子と結ばれるエンドは決まってるけどそこに行くまでの過程がドキドキして楽しいみたいな。
恋をするのは楽しいけど、行くとこまで行っちゃうとこのドキドキがなくなりそうで怖いというかなんというか。ギャルゲーがエロゲーになって寂しくなる気持ちというか。違うか?
ちなみにあかねはずっと蔑んだ目でこっちを見続けていた。はい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます