第41話 正直考えた事はある
あかねがよだれたらしそうなだらしない顔でイケメンたちの事を吟味し始めたので了承の意味と解釈する。良かったな、良い人達見つかって。
というわけで俺は彼らに一緒に行く事を伝えると、彼らはめちゃくちゃ喜んだ。
「助かったぜブラザー!」
「恩に着るぜブラザー!」
「これからよろしく頼むぜブラザー」
「よくわからんノリだが気に入ったぜブラザー」
俺はよくわからないなりに彼らとハイタッチする。こういうバカみたいなノリが出来るのは男子の特権な気がする。女の子たちはこういう悪ノリにノって来てくれないことが多いからな。
でも俺はそんな女の子たちの男子達馬鹿なの的な視線を頂戴して悦に浸るのが趣味だった。あの視線はたまらないんだようん。うちのパーティだとクロエがよくしてくれるから大好き。
あかねが加わった事でフラフィーにもその片鱗が見えて来てるから色々な期待が出来る。フラフィーはポテンシャル高いからな。いじって良し、いじられて良しとか中々存在しないと思うんだ。
「じゃあ何日潜る予定なんだ? ぶっちゃけ俺の収納めちゃんこ凄いから大船に乗ったつもりでいてくれていいぞ? 日にちによっては俺達も食料買いに行く必要あるし」
その場で疾風のロンドのメンバーと予定を話し合う俺達。とりあえず食材の買い出しは決定。その費用は全部持ってくれるらしい。ひゅー、太っ腹だぜ。流石有名冒険者。元々かなり多めに持っていたがお言葉に甘えて買いまくることにした。
そして話し合いをしている俺達をちらちらと他の冒険者たちが見ていく。中には屈強そうな戦士っぽい人もいる。その人たちでさえ彼らを意識しているのだから知名度が高いのも頷ける。
ってさっきあかねが呟いてたけどこいつらクエストもしてるんだったな。それなのにBランクで出世頭みたいな扱いだったら実力も相当だろう。あれ、もしかして想像以上に良い伝手なのでは。
その後かなりの食料を買い込んで俺たちはもう一度ダンジョン前に集合する。買い出しをしている時に例によってうちの子達は全身ローブの怪しい集団になったけどイケメンたちの注目度が凄かった。
おかげでこっちは気配を消すまでもなく眼中になかったよ。ってかまじで人気たけえな。でも俺の腰に手を回すのをやめろまじで。
「基本的には俺達が戦うから任せな」
「最新の階層情報までばっちりよ」
「でも警戒も忘れないでついてきてくれよな」
彼らはダンジョンに入る時の注意事項を俺達に伝えていく。基本的な事ばかりだが、だからこそ毎回確認するようにしているらしい。イケメンで真面目で気遣いもできるとか完璧かよ。
というわけでダンジョンに潜っていったわけだがこいつらまじで強いわ。一人一人だったら俺と同じくらいだけど、連携がヤバイ。
何も言わずに完璧な連携取ってるわ。たまにハンドサイン見たいの出してダンジョンの警戒もしてるし、さらにはこっちの方にも気を付けて移動するという超人ぶり。
この三人の連携があればめちゃくちゃチート性能でもない限りソロじゃ勝てないだろうな。洞窟の奥の方に行って強い奴が出た時の戦闘風景が俄然楽しみになってくる。
派手なアクションかっこいいよな。まじイケメンだわ。
俺がキラキラした童心に返ったような憧れの視線を向けてると女性陣からひそひそ話が聴こえてくる。
「あれ見てよ、男の戦い見て興奮してる」
「キミヒトさんが私たちに手を出さないのってそういう……」
「キミヒト、変わってしまった」
「あれはもうメス堕ち秒読みね」
こらこら君たち。特にクロエさん、あなたどこでそういう知識手に入れてきたの? もしあかねの影響だったらまじで許さねぇ。
そんな感じでサクサク十五階層まで来る。屑鉄のダンジョンに比べて一つ一つの階層が短いのと、このダンジョンは人が入り続けているためあまり構造が変わらないらしい。そのため最短コースをつっきっている感じだ。
たしかに中に物が入ってたら形変えるのも難しいのかもしれない。魔物がどんな扱いかは知らないが、人がいる間は構造の変化はあまりないらしい。
つまり逆に言うと階層を進めば進むほど人が減り、構造が変化していくという事だ。ここまではすんなり来れたが、これ以降は人が減り構造も変化することが多いらしい。
「今日はここで休息だ。パーティごとの休憩でいいよな」
「キミヒト達最初に休んでいいぞ」
「見張りは任せろ」
おいおい戦闘もして見張りも最初にやるとか流石に悪すぎるわ。というわけで彼らに先に休んでもらうように説得するが彼らはそれを頑なに拒んだ。
「いいかキミヒト、俺たちは慣れてるしここには何度もきてる」
「攻略するには下調べだって大事だ。だからここまでサクサク来れた」
「でも彼女らは違うだろう? 俺たちは頑丈だが、彼女たちには疲労がたまっているはずだ」
なんだこいつら。お人よしかよ。俺異世界転生してから王城の連中以外全部良い人引いてて感動するんだけど。あ、盗賊の連中は人じゃないのでノーカンで。
女性陣も自分たちも戦えるし先に休んで欲しいと訴えるが断固拒否。ここは慣れている俺達に任せて疲労を回復させてから見張りをしてくれととてもかっこいいことを言う。
そこまで言われたら流石に引き下がるしかなかったが、俺はこいつらと見張りをすることにした。
「俺は良いよな。頑丈だし、食料も俺がもってるんだぜ? お前たちだけ働かせるわけにはいかねぇよ」
「まじかよキミヒト。お前収納持ちのただのロリコンじゃなかったんだな」
「俺達男の友達すくないからよ、楽しいぜ」
「これからもたまに冒険付き合ってくれよ」
こうして女の子たちを休ませて俺たちは長く語り合っていた。別に昨日はぶられて一人で寝たのを根に持っていたわけじゃない。
女の子たちは女の子でよろしくやればいいんだ。俺は男たちの友情を深めるぞ。ちくしょうが!
「それでキミヒト、ハーレムしてるみたいだが誰が本命なんだ?」
イチロウかジロウかサブロウが俺に聞いてくる。こいつら全員イケメンで同じ顔してるから区別つかん。
「じつはまだ誰にも手を出してない」
「まじかよブラザー。あんな可愛い子達に慕われて手を出してないとか聖人君子か何かかよ」
「もしくは熟女好きとかだったりするのか?」
「または俺達みたいな男色家か?」
不穏な単語が聴こえたが記憶から完全に消す事にしたい。あかね、残念だがこいつらはだめみたいだぞ。そしてこいつらと一晩共にするのめちゃくちゃ怖くなってきたわ。
もしかして男友達少ないってのはみんな恋人とかそういう話か?
「安心しろブラザー。俺たちはノーマルには手は出さない」
「俺達が求めるのはロマンと楽園だ」
「嫌がる相手に無理やりすることなんてしないさ」
その腰に手を回してくるのをやめてくれないと何も安心できないんだが? ロマンて言葉が一気に汚染された気がするからこいつらどうにかしてくれないだろうか。
「じゃああの中で誰が一番気に入ってるんだよ」
ホモホモしい会話になりかけたが話の流れは戻った。どうやらまじにノンケに手を出す気は無いようだな。少し安心したわ。安心させてからのーだったらまじでこいつら許さないが。
「そうだな……付き合いの長さで言えば、クロエとイリスだな」
「おう、あのちっこい二人か。いつから一緒にいるんだ」
なんかむず痒いわ。自分の恋愛話を男友達に語る時のこのむず痒さ、女の子とイチャイチャするのとはまた違ったベクトルの幸せを感じるわ。
出会ったころのこととかを当たり障りのない様に話す。盗賊から助けたとかそのあたりを。
「最高の出会いじゃねえか。お互いもう好き合ってんならゴールしとけよ」
「いやロリ二人だけだったらしてたかもしれないよ。でもフラフィーもいるし、誰にも寂しい思いさせたくないだろ」
ロリに先に手を出したらフラフィーは居づらくなるだろう。かといってフラフィーに手を出せばロリっ子たちが居づらくなる。そんな話をした。
「あーそれはあるかもしれないが、じゃあ全員同時にすればいいじゃん」
「は?」
「だから、一人一人じゃなくて全員同時にすれば誰も寂しくないじゃん」
「うーん……」
「俺達が初めて目覚めた時なんか凄かったぜ?」
「聞きたくないわ」
なんで男たちの交わりの話を聞かねばならんのか。仲良くなっていく過程を聞くのも恋愛話を聞くのも大好きだが、男の交わりの話は完全に専門外だ。
だが全員同時か……。正直考えた事はあるけど、俺は最初するならタイマン派なんだよな。ちゃんとお互いに気持ちを通じ合いたいという気持ちが強すぎる。
自分の全部、相手の全部をお互いに晒しあって気持ちを深めていくような。そんな行為をロリとしたい人生だった。
恋愛談議に花を咲かせながら俺たちは交友を深めていき親友のようになっていった。
その頃女性陣は作戦会議をしていた。
「キミヒト君楽しそうね」
「はしゃいでる、珍しい」
「そうですね、あんなキミヒトさん初めてです」
「キミヒトだって友達が欲しかったとかあるとは思うけど、あれは違うわね」
「うん」
「そうなんですか? 今日ずっとキラキラした目してましたけど」
「ねー。キミヒト君も男の子だなーって思っちゃった」
「確かにそう。でも今は違う」
「ええ。あれは昨日のことを根に持ってるだけね」
「そうなんですか……?」
「キミヒトはあんなだけど寂しがりやだからね」
「おー、クロエちゃん語るねぇ。お姉さんに色々教えてごらん。キミヒト君のどこが好きなの? ん?」
「……スリープ」
「すやぁ」
「流石お姉ちゃん。汚い」
「スリープ」
「すやぁ」
「で、フラフィーは何か言いたいことある?」
「ありません」
「スリープ」
「すやぁ」
「まったくキミヒトは。素直にこっちくればいいのに……」
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