第33話 俺が楽しいからプラマイゼロ

「機嫌なおせって、本当に悪かったと思ってる」


「どうせ私なんてお荷物以下の存在ですよ。みんなの荷物は収納に入りますけど私は入りませんし本当のお荷物でごめんなさいね」


 フラフィーは完全にすねてしまった。狂気をはらんだメンヘラもかなりめんどくさいがこっちもこっちでめんどくさい。俺が百パーセント悪いのは間違いないが。


「フラフィーは荷物なんかじゃない。俺たちに必要な存在だよ。ここまで来るのにだって活躍してくれただろ? 盾でみんなを守ったじゃないか」


「……最初はキミヒトさんだけで余裕だったじゃないですか」


「あの時はな。でも罠とかが存在してるとどうしても初動が遅くなる。そんな時フラフィーがいなかったらどうなる? かなり苦戦を強いられる」


 実際はロリ二人はくそ強いから何も問題はないけどとりあえずよいしょしておく。俺達のパーティじゃなかったらある話を入れていくことでフラフィーのご機嫌をうかがう作戦だ。


「そうですかね? みなさんお強いですし。私だけ普通ですし」


 探索者ギルドで行われたステータスチェックの事をまだ根に持っているらしい。あれは仕方がない。スキルの問題もあるからな。


「たしかに俺たちのステータスは高い。でもな、盾役がいないとそのステータスは充分に発揮できないんだ。守ってくれる人がいるから安心して戦えるのはわかるだろ?」


 タンクというのはかなり重要だ。MMORPGではタンクが変わるだけで楽勝だったところが地獄に変わるなんてよくある話。


「……私、役に立ちます?」


「それはもうばっちり」


「……私、必要です?」


「ああ、いないと困る」


「……一緒にいてもいいんです?」


「ペット扱いだけどよろしく頼むな」


「なんでですか!?」


 元気になってきたのでからかう方向にチェンジ。猫耳としっぽを逆立ててめちゃくちゃ威嚇してくるけど可愛さしかない。


 俺は猫を構い続けて構い続けて嫌がられても構い続けて甘噛みがガチ噛みになるまで構うタイプだ。もちろんその後ごはんあげたり普通に遊んであげたりしっかりご機嫌もとる。


 そして油断したところをまた構うという無限ループが大好きだった。たぶん猫好きな人はわかってくれると思う。


 そしてフラフィー見てるとマジでペットみたいでそういう可愛がり方したくなって仕方がない。悪気しかないんだ、すまん。


「冗談だって、よろしく頼むぜ相棒」


「あ、相棒……。仕方ないですね! 次やったら本気で怒りますからね!」


 機嫌取るのもちょろくてとてもありがたい。というかとても付き合いやすい。性的な意味を完全になくしてもフラフィー大好きだわ。


「巨乳、実は危険……?」


 イリスが俺たちのやり取りをみて不穏な事をつぶやいていた。うん、嫉妬可愛い。大丈夫、俺はハーレムを守るために平穏を保っているだけだよ。


 性欲がはじけそうな時もペット構うと癒され過ぎて性欲どっか行くからね。性欲溜まりすぎたらフラフィーは構われ過ぎてやばいことになるかもしれんが。許してくれ。


「よしフラフィーが落ち着いたところで今後の方針も決めておくか」


「誰のせいですか誰の」


「フラフィー、ペットは床」


「ペットじゃないんですが!?」


 ごみに埋もれていたとはいえ一応家具一式が発掘された。たぶん前の持ち主が形だけでもそろえたんだろう。椅子の数は全部で五個あるから丁度いいな。スケルトンでも招いてお茶会でもしてたんかな。


 スケルトンのお茶会って気味悪いな。お茶も飲めないし食べ物も食べられない。そして喋ることも出来ないから終始無言。想像しただけで怖いんだが。


「方針って言ってもあかねが呪いを解除できるかどうかにかかってるのよね? もしできなかったらどうするの?」


「出来なかったら何もしない。みんなでいちゃいちゃして過ごそうぜ」


「それを真顔で言えるのほんとすごいです」


「キミヒト、へたれで大胆」


 うんまぁぶっちゃけ『解放』が意味なかったら終了なんだよね。そしたらこのケイブロットで探索者して過ごすのも良いなぁ。適度にダンジョン潜ってお金稼いでみんなで楽しく過ごす。


 全然それでいいよ。


 といってもあかねがどんな性格かわからないし、他の勇者たちの呪いを解けるなら助けたほうがすっきりするのは間違いないわけで。


 そしてすっきりすればいちゃいちゃしたときの心の安心感がかなり変わる。後のためにも勇者問題は解決したいなぁ。


「方針としては、勇者を助けるか放置するか。この二つになるわけだけど、助けるだけなら最悪あかねの手を使わない方法もあると言えばある」


「なんですか?」


「王都潰す」


「王国民全てが敵になるわね」


「キミヒト、無慈悲」


 そう、勇者を助けるだけだったら王城の兵士達を殺しまわって脅せばたぶん解呪できる。ただしそれをやると人道的にも反するし指名手配間違いなしだろう。


 あそこは王城の中はどうあれ、王都の方に関してはそれなりに平和に暮らしている人たちがいる。圧政を強いてるわけでもなく、むしろ国的には優秀な政治をしていると言って良い。


 だから王城をつぶす方針は可能だけど実質不可能ということになる。


「やらないけどな。めんどくさいし」


「やろうと思えば出来るんですか!?」


「どうかな。やれるとは思うけど勇者が邪魔してくるようなら無理かな」


 王城を攻略するなら勇者が旅立った後になる。流石に勇者たちと戦って勝てる自信はない。しかし勇者たちは魔王を討伐するという任務で城からいなくなるからその時にやることになるだろう。やらないが。


 それに呪いの解除の時に勇者の近くで行わないといけないとかだったら詰みだし。


「だから実質のところ助ける方向で動ける可能性はあかね次第。あかねがやりたくない場合もそれで終了。でも勇者を助ける方向なら結構大変になると思う」


 勇者を助けようと思うのはこの子達には関係ない。来るなと言っても来るだろうから覚悟だけはしておいてもらおう。


「戦闘にならないと願いたいがもしかしたら戦闘になるかも知れない。みんなにはあかねが助ける方針を選んだ時覚悟だけはしておいてほしい。やつらは正直規格外だ」


 第一グループに分けられた勇者たち。その実力は俺の比じゃない。純粋なステータスの伸び方すら違うし、持っているスキルもどれもが攻撃的なものばかりだった。


「私はキミヒトについていくわ。それに私とイリスを捕えたってやつにも会えるんでしょう? やられたらやり返さないとね」


「服脱がせば勝ち。わかりやすい」


 野球拳懐かしいね。今ってやってんのかな。


「わ、私も……あんまりお力になれませんけどついていって良いですか……?」


 フラフィーはおずおずと発言する。うん、正直勇者との戦いについていける自信がないのはわかる。でも置いてけぼりなんてことはしないよ。


「ああ。もちろん来てくれ」


「ありがとうございます!」


 だってフラフィーいなかったら俺このロリ二人と逃避行しそうなんだもん。いやその時はあかねがいるから大丈夫か?


 じゃあフラフィーいなくてもいいじゃん。


「あれ? キミヒトさん? なんですかその目は。もしかしてやっぱりいらないとか言うつもりじゃないでしょうね! やめてくださいよ! 私だって傷つくんですよ!? ひどいこと言うとまた刺しますからね!?」


 気配を察したのか先手を打ってくる。いじられる前に反論すればいじられることはないと考えたのか。やるじゃないか。


「振り?」


「違います!」


「じゃあ本気で言えばいいかな?」


「そういう意味じゃないです!」


 フラフィーがヒートアップしてきた。打てば響くやりとりって楽しいよなぁ。本人としてはたまったもんじゃないだろうけど俺が楽しいからプラマイゼロだな。


 結局今後の方針はあかね次第という結論に落ち着き俺たちはあかねが起きるまで待つことにした。


 

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