第29話 一見害が無い様に見える

 何とかなりそうなのでかなり気が抜けた。ハーレムって怖すぎるんだが。テンプレ主人公たちのは重婚どんとこいのメンバー達だからいいけどヤンデレ混じってたら惨劇だよな。


 テンプレ主人公たちの小説にやべぇヤンデレぶちこんで同じ目に合わせてやりたいわ。


「キミヒト、お姉ちゃん。休んでていいよ」


「いやまだ全然休んでないだろイリス。フラフィー起きたら少し話してから交代するから寝とけ」


「そうよ、それにイリスに説得させたら状況悪化しそうだし」


「ちっ。わかったおやすみ」


 舌打ちした? ねぇこれ以上引っ掻き回す気だったの? ねえイリスさん俺本当に死ぬよ?


「キミヒトも休んでていいわよ? フラフィーが起きた時正気かもわからないし」


「いやダメだろ。俺はクロエと見張りしてるわけだし。それにフラフィー起きた時に俺寝てたらそれこそ誠意の欠片もないだろ」


「ふふ、優しいわね」


 危機が去ってめちゃくちゃ落ち着いたせいかクロエの可愛さが身に沁みるぜ。おかげでとても元気になったけど見えない様にしとかないとまずいわ。


 あんなこと言っておいてこれは恥ずかしい。


「でも起きたらほんと頼みます。俺ずっと土下座してるんで」


「まぁ任せておきなさい。キミヒトほどじゃないけど私も人をからかうのは好きだし気持ちはわかるわ。この子いじりがいがあるのよね……」


 俺とクロエは悪だくみが似合いそうな顔で微笑みあう。というかはたから見たら確実に悪だくみしている顔なのであまり人には見せられない。


「じゃあ任せた」


「おっけー」





 睡眠の魔法はかなり浅くかけたみたいだが、それなりの時間が経ってからフラフィーは目覚めた。実際に見張りの交代かなってくらいの時間だったから丁度良く、俺は土下座を決め込みクロエに命を託した。


 起きた直後のフラフィーはぶっちゃけ危ないの一言だったが、素直な性格だったため呪いの影響で最初はあんなだったことをすんなり信じた。ちょろい。


 一度宿屋でからかいまくったがそのことは多めに見てくれるという事で決着することが出来た。後遺症って事で上手く誤魔化してくれたクロエに感謝しかない。まじちょろい。


 エルフ姉妹にまじで頭あがらねぇ。イリスにはもてあそばれクロエにも頭があがらず。じゃあフラフィーいじるしかないじゃんって思考に陥ってしまうぞ。


 それでいいと思ってるけど。ちょろいし。


 というわけでイリスを起こして交代する。というかぶっちゃけ見張りなんてほとんどいらないんだよな。魔物は入ってこない結界張ってるし、人が来ないダンジョンだから狙われることもないし。


 というかここ前人未到の区域だから本当の意味で人来ないし。


 安心感からかテントに入ってもクロエが目に入るので眠れる気がしません。危機的状況なら少しでも寝なきゃいけないけど、色々ありすぎて何もかもが高ぶってらっしゃる。


 しかたないので寝るための強硬策を取りますか。


「なぁクロエ、抱きしめていいか?」


「死んどく?」


「それそれ」


 強めの蹴りを入れてもらって頭を冷やす。うんうん、蹴りもらうと落ち着くよね。これでちゃんと寝られるわおやすみ。




 仮眠を取って起きるとフラフィーはけだものを見る目で俺を見てきた。ええとあのどうしましたか?


「イリスさん? フラフィーになに吹き込んだのか教えてもらえます?」


「無いこといっぱい吹き込んだ」


「せめてある事吹き込んでもらえませんかねぇ!」


 クロエの説得により冷静さを取り戻していたフラフィーだったが、イリスが情報を混乱させるような事をつけ足したため何も信じられないようになっていた。


「巨乳にキミヒトは渡さない」


「あ、あぁそう」


 直接的に被害を出そうとしたフラフィーよりイリスを止めるべきだったのかもしれんと本気で思う。一見害が無い様に見えるから余計にたち悪いぞ。


 ただヤンデレっぽい雰囲気はかなり無くなったので結果オーライとしておこう。それにこういうことしたって事はイリスは俺の事相当好きなんだろう。


 照れるぜ。俺の方が好きだが。


「じゃあダンジョン探索再開でいいか?」


 全員から了承を得たので九階層の探索を始める事にする。なんだか長い時間留まっていた気がするけど実際の時間はそこまで長くはだろう。今日の探索が終わったらまた休んで一度戻る予定だからがっつり休む必要もない。


 消耗戦をしていたなら話は別だが、ダンジョン内では毎日外と同じ生活をするよりも安全マージンを取る方が効果的だ。


 それに完全に安心できない場所での睡眠はあまり精神が回復しない。なので休む時間は長めにとるよりも最低限の休息の方が好ましい。


「敵もだいぶ弱いな……」


「そうですね、なんだか階層が逆転しているみたいな……」


 魔物はスケルトンとゾンビの混成だったり、ゾンビだけだったりと対処がとても簡単だ。スケルトンが奇襲を得意とするが、ゾンビはまだ筋肉が残っているため不意をつく攻撃をしてこない。


 一般的な対人戦闘に少し毛が生えた程度の戦いで充分戦える。これだけだったら初心者冒険者でも問題なく処理できる。ゴブリンと同じ程度で知能が無いと言えば弱さが伝わると思う。


「だが、変な所があるな」


「というと」


「罠が配置されている」


 屑鉄のダンジョンに入った時からずっと思っていたがこのダンジョンには罠の類は存在しなかった。そういうダンジョンなのだろうと気にしてなかったが、ここにきていくつか罠が見受けられる。


 即死というほどじゃないが、魔物と同時にくるとちょっとうざったいかも程度だと思うが。試しにちょっと起動してみるか? 


「みんな一旦ストップ」


 俺は透視で全部見えているため罠の種類もわかる。スイッチがどの罠に連動しているかも見えるため俺が罠にかかることは無い。


 というわけで矢が飛んでくる罠を起動させる。


「うお、思ったよりはええ」


 俺の目の前を凄い勢いで矢が通過していった。そして壁に刺さり、辺りは静まり返る。


「キミヒト、どうして起動した?」


「ちょっと気になってな」


 罠には何種類かある。それは足止めだったり引き返させるためのものだったり。もしくは殺すためだけだったり。


 配置的には足止めに近い感じがするが、魔物とセットでこの速度の矢を連射されると結構な脅威になるだろう。


 それにこの矢、鑑定をかけると結構やばそうだった。


『毒矢:致死性の毒の矢』


 簡潔だけどとても分かりやすくて良いですね。物騒極まりないけど。


 となるとこのダンジョンは殺しに来てる可能性が高い。ダンジョンにおいて侵入者を拒むのは本能だと考えられている。


 この世界では構造が切り替わる事からダンジョンそのものも魔物だと伝えられている。メモのあった隠し部屋みたいにダンジョンの構造に影響を受けない部屋もいくつかあるが。


 例えばボス部屋だったり階層の切り替わりの安全地帯だ。人を誘い込もうとしているのか、追い出そうとしているのかはいまだ議論が尽きていない。


 そして今回のはたぶん、殺すか追い返すかだ。足止めだったら何かでかい罠を仕掛けてもっとわかりづらい道にすればいいだけだからな。


 あ、ドラゴンゾンビってもしかしてそれ筆頭だったんじゃ……。それでそれ以降の魔物が弱くなってるとか……。


「キミヒト、何か分かった?」


 俺が罠の位置や矢を調べているとイリスが声をかけてきた。思考のループに入りかけていたので現実に戻される。


「あぁ、たぶん終わりが近いかなと」


「本当?」


「敵が弱くなってるのは上で出し尽くしたからって感じかしら?」


「と思う。勘違いでこの罠ゾーンがひたすら続いてたりしない限りは」


 クロエもずっと考えていたようだ。ダンジョンは奥に行けば行くほど強いのがセオリーだからな。こんな設定されると勘ぐってしまうのも無理ないだろう。


「というわけでさくさくいくぞ」


「はい!」


 俺の透視で罠を全てよけ、その間に出てきた敵はフラフィーが止めロリ達が片付ける。このダンジョン入って初めて連携らしい連携してる。感動する。


 みんな荷物無くなって身軽になったのもでかいなたぶん。


 そして十層に着くとそこは別世界だった。いや異世界とかそういう意味じゃなくて雰囲気ががらっと変わった的な意味で。


「ここは……」


 広い荒野に花がぽつぽつ咲いている芝生。そして小屋があった。俺たちは慎重になりながらその小屋を目指していく。


 ちなみに透視をして中をのぞこうと思ったが、魔力がめぐらされているためのぞくことは出来ない。人の服と同じ原理だと思うのでスキルにより力を込めてのぞき込んでみる。


 が、中に一人誰かいるという事しかわからなかった。姿かたちは見えないが、こっちには気付いていると思っていいだろう。


 みんなを下がらせて俺は声をかける事にした。


 三回ノックして、こんにちはー。


「のんきね……」


 うんまぁ。敵意感じないし。人相手なら不意打ち食らう事も無いだろうし。


「だれ……?」


 扉の中から声が聞こえてきた。しかも耳慣れた言葉だった。

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