第28話 詰んだ

 異世界に召喚されてから数カ月、色々な体験をしてきた。召喚からはじまった肉体的精神的苦痛、魔物との戦闘、盗賊狩り。


 そこそこハードな危険をくぐりぬけてきた自信があるが今回の事は正直言ってかなりやばかったと思う。


 アニメとかで仲間が敵に洗脳されて敵として出てくる。そして主人公達はやたらと苦戦しながら戦う事を余儀なくされる。しかし愛と友情の力で洗脳を打ち破りもう一度味方として一緒に戦う。


 美しい。


 非常に美しい流れだよ。


 でもさ。


 愛情が行き過ぎてもはや敵レベルになった奴ってどうやって対応したらいいの?


「どうしようか……」


「見てたけど……ひどいわね」


「キミヒト、女の敵」


 寝ているフラフィーを囲んで俺たちは作戦会議ならぬ、先行き不安会議をすることになってしまった。ここダンジョンの中だぞ。こんな危機感はいらないんだよ!


「言い訳になるけどさ、あそこでフラフィーを完全に落とすのは無しだと思うんだよね。どう考えても暴走してたし」


「そこで私たちを言い訳に使わないのは評価してあげる」


「キミヒト、首の皮一枚繋がった」


 え、何。ここで迂闊な発言したら俺死ぬの? いや迂闊な発言し続けたせいでこうなってるからもう手遅れって話もあるけど。


 とにかく今は色々な事をうやむやにしつつ戦略的撤退を繰り広げ棚に上げながら全員を言いくるめる作戦を考えないといけなくなった。


「クロエの魅了で記憶書きかえって……」


「するわけないでしょ、仲間なのに。それによくそんなことが言えるわね」


「キミヒト、最低」


 うん知ってるよ。俺が記憶の書き換えされて嫌な思いしたってのにこの発言は最低すぎるのは。しかしこの記憶を消す事はフラフィーの安全を守るうえでもそれなりに良いと思ったんだが。


 でもそうだな。人の気持ちをいじるなんて最低だな。誰だよフラフィーの心をもてあそんだ奴は。俺か。


「しゃあないな……。フラフィーの気持ちに応えるしかないか」


「は?」


「ゴミ」


 恐ろしいほどの殺気に俺はそれ以上動くことが出来なくなった。クロエとイリスがまじで見たことない顔でこっち見てくるんだけど。いやクロエはさっき見た。生きた心地がしなかった奴。


「あんた私たちのことあれだけ口説いておきながら最初にフラフィーに手を出そうっていうの?」


「クロエが最初ならいいの?」


「ば、違うわよ!」


「そう、最初は私」


 どうしたらいいのこれ。殺気は嫉妬の勘違いか? え、嫉妬って殺意に変換できるの怖すぎるんだけど。


 待て待て現実逃避してる場合じゃないだろう。どう考えてもこれは罠だろ。今ここで二人に手を出したとしよう。フラフィーの事まともに見られんわ。


 たとえ合意の上だとしてもそれはきつい。


 するならもっとこう穏やかな気持ちで行いたいし、ちゃんと気持ちを通じ合わせたいという気持ちしかない。こんな勢いでやるのは間違ってる。


「二人とも待ってくれ。フラフィーの気持ちに応えるって言っても付き合うとかそういう事をするってわけじゃない」


 なのでここは逃げの一手を放つしかない。なんで敵と遭遇した時よりこの休憩ポイントに来てから逃げ続けることになっているのか。


「じゃあどういう意味よ」


 腕組みして高圧的な態度を取って来るロリって可愛くない? 俺は大好きです。


「つまりはこうだ、フラフィーの事を大切だから意地悪したと言う。ほら、好きな子には意地悪したくなるって言うだろ?」


「言わない」


「好きな子大切に出来ないとか馬鹿でしょ」


 ……これが異世界ギャップか。


「なんていうか照れて上手く接せられないとか、いじった時の反応が良すぎてやめられなくなったとか、色んな表情見てみたいからわざといじっちゃうとか、こっちを見てほしいけど素直になれないというかなんというか」


「キミヒトは私たちの事大切にしてくれてたじゃない。呪いの影響下だったけどその気持ちはちゃんと感じてたから私たちもついてきたのよ?」


「キミヒト、安心する」


 ロリ達の言葉に感動するんだけど。泣きそうなんだけど。俺生きていて良いんだって本気で思えるんだけど。涙腺ゆるむわ。


「ええと、うん。ありがとう。二人の事は本当に大切だよ」


「わかればいいのよ。それでなんでフラフィーには冷たかったわけ?」


「キミヒト、鬼畜だった。とても愉快。巨乳ざまぁだった」


 ああそうか分かった。攻略ルートが見えたわ。攻略ルートというか脱出ルートに近い何かだけど。


 呪いのせいにしよう。


「俺の意志の弱さが原因だから言いたくなかったんだけど、呪いのせいだと思うんだ」


「聞きましょうか」


 相当怪しんでる目をしているが一応聞いてくれるらしい。


「呪いの影響で大切な事以外は割とどうでもよくなってたんだよな。感情の振れ幅が小さいというか。それで俺は生粋のロリコンだからその性癖の感情は消えなかったんだと思う。スキルもあったし」


「へぇ」


「だから二人の事を助けた時本当に責任を持ちたいと思ったし一緒にいたいと思ったんだ。でもフラフィーは違う。確かに可愛いとは思うけど性癖に刺さらなかった。だから適当にあしらってしまったんだよ」


 早口に捲し立てるとクロエもイリスもだんまりだった。判決を待つ被告人になった気持ちで俺は待機する。


 正直苦しすぎる言い訳だ。誠意の欠片もない。二人を大切だと持ち上げる事で誤魔化そうとしたこざかしさすら見える。しかし嘘はついていない。クロエは嘘を見破れるみたいだしどんな反応を返してくるだろうか。


「つまり、フラフィーには興味ないのに手を出そうとしたと」


「してませんよ!? どうしてそうなった!?」


「だって、胸、触ってたじゃない」


 あー! そういやそうだー! 全部見られてたー! いやでもあの流れだったらああしたら引くと思うじゃん! 俺のせいか! 俺のせいだよ!


「あれはああしたらフラフィーも引くと思ったからああしただけで下心はまったくありませんでした本当です信じてください」


「……」


 詰んだ。


 俺はこれから精神的に追い詰められて殺されるんだ。そのあと起きてきたフラフィーに刺されて肉体的にも死ぬんだ。バッドエンドだ。でもロリに殺されるなら本望だ。


 おれの死ぬまでに叶えたいランキングの最後の項目にロリに殺されるって項目があるんだ。性的な意味でも性的な意味でなくてもどっちでもいい。とりあえず最後に観るのがロリが良いんだ。


 この二人なら文句なしに最高だ。花まる満点だ。覚悟はできた。あとは首を差し出すだけだ。謝ろう、誠心誠意心を込めて土下座しよう。許されなくてもいい、俺に発言権は無いんだ。ロリの家畜として殺されよう。


「ふふ……」


 頭を下げているとクロエの笑い声がした。侮蔑の声というよりは少し暖かくなるような。


「キミヒト、やっぱりおもしろい」


「え……?」


 顔を上げてみればクロエもイリスも笑顔だった。底冷えするような笑顔じゃなく普通の笑顔。今の状況考えるとそれはそれで怖いけどなんとかなったの?


「いいわ、フラフィーの事は私に任せて。呪いのせいって事にしといてあげる」


「キミヒト、もっとまじめに生きる」


 俺が真面目になれると思ってる? 思ってない言い方だよね? 真面目になる気は全くないけど。


「ええと、二人ともすまん」


「別に気にしなくていいわよ。というか好きな子にいたずらしたいって気持ちはわかるもの」


「激しく同意」


 え、もしかして俺からかわれてたん?


「今回はこれで許してあげるけど、決める時はちゃんと決めなさいよ」


「キミヒト、セーフ」


「は、はは……」


 どうやら助かったみたいだけど心臓に悪かった。からかうのは好きだけどこんなからかわれ方は二度とされたくない。


 イリスとクロエを口説きまくったのが原因とは言えまさかこんなことになるとはな。もう少しまともに生きていかなければいけないと心に誓おう。


 まともにしっかりとフラグを立てすぎない様にからかおう。


 というか異世界ギャップは無くて安心したわ。即答されたから信じちゃったけどクロエも悪ノリしてくることある事に驚いたわ。


 みんなの新しい一面を見れたから、かなりギリギリだったけど結果オーライってところだな。


 ロリで小悪魔、大歓迎。

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