第18話 作ってもらうか

 ご飯を食べ終わった俺たちはダンジョンに潜る準備をしていた。旅の準備と大体似たような感じのものが必要だったが、フラフィーに関しては装備をパクられたせいで手ぶらだ。


 しかし武器屋と防具屋をのぞいてみたがフラフィーの望む装備は置いてなかった。というかどんな装備が目当てなのかよくわからないままとりあえず向かったのはまずかったかもしれない。


 というわけでどんな装備が望みか聞いてみる事にした。


「なあフラフィー、どんな装備を求めてるんだ? 背丈に合った装備とか結構あったような気がしたんだが」


「……出来ればですが、体が隠れるくらいの奴があればと思って。特注じゃないと無いんですかね」


 フラフィーの身長は百五十はある。え? どんな大盾装備する気なの。


「それは流石に無いんじゃないかっていうかどんな戦闘スタイルだよ。猫獣人なんだし身軽さを生かした戦い方じゃないのか?」


「普通はそうですが……私の特技は受け流しだけなんです。攻撃力はほとんどないのでもう開き直って盾をして受け流し特化として生きていく事に決めたんです」


「じゃああんたどうやって冒険者やってたのよ? 魔物の討伐とかやらなかったの?」


 もっともな質問だった。クロエが言うように冒険者の基本的な収入は魔物退治になる。俺みたいに街中の手伝いだけで生活していた冒険者はかなり稀なケースだった。勇者がクエスト受けると他の冒険者から嫌な顔されることあるからな……。


 なのでフラフィーもかつかつな生活をしていたなら魔物退治をするのが一般的だと思っていたんだがどうなんだろうか。


「受け流して、受け流して、相手が疲れ切った所に止めを刺していました。体力には自信があるのでひたすらに持久戦です。挑発しながら相手をひきつけ続けるのも楽しくなってきますよ」


「……」


 ソロで持久戦てマゾ過ぎない? それは確かに儲からないだろうし大変だろう。仲間がいれば相当優秀なんじゃなかろうか。


「今までの盾も大きいの使ってたの?」


「はい……といっても体の半分くらい隠せる程度だったのであまり使い勝手は良くなかったのですが。今のところは防具屋さんにあったやつが一番良かったですね」


「なるほどな。じゃああれだ、作ってもらうか」


「え!?」


 俺が提案すると驚いたような声を出したので俺が驚いた。


「いや仲間になるんだし自分にあった装備じゃないと危ないだろ。使いづらいもん使ってたら俺達だって危なくなるだろうし。というわけで鍛冶屋へごーだ」


 クロエとイリスにがっちりホールドさせフラフィーを鍛冶屋に連行することにする。戸惑っている様子だが作ってしまえば受け取らざるを得ないだろう。


「こんにちはー、おじさんやってるー?」


「誰じゃいお前は」


 顔見知りのように入ってみたが当然の対応だった。うん、ドワーフの職人気質って感じでとても良いおっさんだ。


「初めまして、冒険者から探索者になりましたキミヒトと言います。以後よろしくお願いいたします」


「かー、堅苦しいのはやめてくれ。わしが言ったことだがかしこまるな。だが丁寧なのは悪くねえな。わしはドワーフのゴンズじゃ。そんで何の用だ」


「この子用に盾を作ってほしくて」


 そう言ってフラフィーをドワーフの前に出すと怪訝な顔をされた。


「盾だぁ? 獣人なら普通身軽な装備を使うだろうが。まさかおめぇ奴隷に盾させようってんじゃねえだろうな?」


 ゴンズから殺気にも似た敵意が放たれる。おお、武器屋のおっちゃん結構強いんじゃないか? なんかやりなれてる感が凄い。


「ち、違うんです! 私が盾を使いたいんです! 相手の攻撃を受け流す事しか出来ないので何とかお願いできませんか!?」


 フラフィーが頭を下げてゴンズに説明する。するとゴンズはまじまじとフラフィーを観察する。


「お前、名前とスキルは?」


「フラフィーです。スキルは盾強化と盾軽量化、それと受け流しです……」


 ガチで盾特化だな。なるほど、でかい盾どうやって持ち運ぶのかと思ったけど便利なスキルがあるもんだな。


「なるほどな、ちょっとまってな」


 ゴンズはそれだけ言って店の奥に行ってしまった。


「フラフィーまじで盾特化なんだな。というかスキル三つも持ってるのか」


「え……? いやキミヒトさんもとても強いですしもっとありますよね?」


「いや俺二つしかないけど」


 俺がそう言うと全員が固まった。え、なんで?


「キミヒト、あんたまさかスキル獲得方法知らないとかある?」


「経験値を持っているスキルにぶち込むだけじゃないのか? 増やせるの?」


 王城では勇者のスキルは重要なので経験値を入手したら全部スキルの強化に使えと教えられていた。勇者達は全員その通りに自分のスキルを鍛え続けていたが、スキルの獲得方法なんて聞いたことがない。


「いい? 魔物を倒したりしたときに経験値が入るのはわかるわよね? レベルとかステータスとかも知ってるわよね? それと同じにスキルにも経験値が入るわよね?」


「あ、ああ」


 なんかクロエが凄いぐいぐい来るな。


「普通は通常スキルから勝手に派生するけど、欲しいスキルがあれば努力すれば手に入るのよ。スキルに経験値を振るんじゃなくて溜めておく必要があるけど、その分強くなっていくんだから冒険者はそうしているはずよ」


 なんだ? 普通はそうしているならどうして王城の人たちはスキル強化だけを教えていたんだ? いや待て、どうして俺はそれを鵜呑みにしていたんだ? ゲームならスキル獲得くらい考えるよな?


 何かがおかしい気がする。なんだこの違和感は。しかし召喚ボーナスでもらったスキルが強いから他のスキルがいらないというの納得できる気もする。強化と新スキル、どちらが優秀なのだろうか。


「そう、なのか」


 なんとか声を絞り出して答えるとクロエがまだ続けようとしていた。しかしそのタイミングでゴンズが戻ってきた。


「おう嬢ちゃん、これでどうだ。ちっと古いが使えるはずだ」


 ゴンズが持ってきたのはフラフィーの体の7割程度が隠れる盾だ。中腰になれば全身隠れるだろう。


「わー! 凄いです! かっこいい!!」


 無骨なデザインでありながらも盾の縁に沿って何かしら呪文のような物が掘られていておしゃれになっている。曰く付きのような、神々しいような、そんな雰囲気を感じさせる盾だった。


「だろう? だがこんな盾使う奴なんざもういねえからな。同じスキル持ちのよしみだ、くれてやるよ」


「い、いいんですか!? こんな素敵な盾を!」


「ああ、だがこれから武器を作る時は絶対俺んとこに持ってこいや。そいつが条件だ。見たとこあんたたち強そうだからな、レアな素材とか平然ともってきそうだ」


 ゴンズは良い笑顔で答えてくれた。ドワーフの身長と同じくらいの盾、元々ゴンズの装備だったんだろうか。冒険者を辞めたのには理由があるだろうが、厚意はありがたく受け取って置こう。


 というかこのおっさんの対応がイケメンすぎる。装備無くして困ってそうな探索者に同じスキル持ちだからって装備譲るか普通。もしかして盾系のスキル持ちって少ないのかな。


「キミヒト、盾系スキル持ちは結構いる。でも大盾装備する人は少ない。隙が大きいし、何より一人で戦えない。仲間を守るためだけの装備」


 なるほど、仲間を守る人たち特有の仲間意識ってやつかな。フラフィーはソロでそれやってたのは黙っておくか。というかイリス心読んだの? もしかして聞こえてるの?


 イリスにジト目を向けてみるが特に反応はない。気のせいにしてはあまりに的確な答えに若干ビビってる。イリスは不思議っ子すぎるだろ。


「おっけーおっちゃん、レア素材ガンガン持ってくるから魔剣とか作ってくれ」


「ゴンズさん! ありがとうございます、私も盾の良さを広めるためにも精一杯頑張りますね!」


「おう、兄ちゃんも悪かったな。ちゃんと獣人好みの装備探してやるなんて良い奴じゃねえか。じゃあまたこいよ」


 こうして俺たちはフラフィーの装備を手に入れた。

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