第17話 最低のロリコン野郎だな!

 受付嬢が騒いでしまったので他の探索者達の視線が集まって来る。しかしその視線は鋭い殺気がこもったようなものではなく温かい感じのものだった。


 普通冒険者ギルドだと絡まれそうなものなんだけどな。もしかしてこの受付嬢はいつもこんななんだろうか。


「あの受付さん。せっかくスキル隠したのにそんなに騒がれるとあまり意味ないというか」


「ええ!? でもこのステータスで隠せるんですか!? というか探索者じゃなくてもどこでもやっていけるんじゃないですか!? あ、もしかしてお尋ね者の方ですか!?」


 なんだろう目が輝いてるんだけど聞かれていることがとても的を射ていて嫌なんだが。後ろの二人はリーベンから狙われてる可能性もあるし、俺に至っては誘拐犯呼ばわりされてもおかしくないからね。


 ……リーベンの情報どこかで手に入れておかないと後々とても面倒なことになりそう。


「ああすいませんすいません。つい熱くなってしまいました。いえ、もしお尋ね者の方でも大丈夫ですよ。冒険者ギルドと違って探索者ギルドは本人の経歴を気にしません。能力が高ければ高いほどこの街に貢献してくれるってことですからね」


 なるほど、だからこんなに平和な視線なのか。いや出自や経歴を考えると平和じゃない連中が多い可能性が高いが。


「これでみなさんは登録完了です。こちらが皆さんの登録証です。無くした場合の再発行は料金を頂きますので無くさない様に気を付けてください」


 それぞれがタグみたいなものを受け取る。首からかけて行動の邪魔をしない様にかなり軽い素材で作られている。ただ、そのプレートには色がついていた。


 色によって探索者としての階級を表しているようで、俺達に配られたのは最低級の物だった。探索者のランクは、ダンジョンから持ち帰ったアイテムをどれだけ納品したかで決まるとの事だ。


 数多く納品してもいいし、レア度の高いものをガツンと納品するのもその人次第。ギルドの方で価値を決めてあるのでその点数によってランクが上がっていく。


「それではダンジョンについての説明を致します。基本的には探索者同士での殺し合いは禁止されている、という事だけ守っていただければ後は自由にしていただいて構いません」


 その後受付嬢の説明を小一時間ほど聞いて終わった。もう少し何かあるんじゃないかと思ったけど拍子抜けな感じだ。


「とりあえず宿探すか」


「そうね、私も体を拭きたいわ」


「眠い」


「じゃあ私ご飯買ってまいります!!」


 俺達が宿に向かおうとするとフラフィーは一人でパシリのような事をやろうとしだしたので思わず止める。


「待て待て待て。宿確保したら全員で食べに行くんだから買いに行く必要はないよ。ご飯付きの宿があればそれでいいし」


「ええ!? わ、私もご一緒していいんですか!?」


 襟首を捕まえて落ち着かせるとそんなことを言い出して来た。図々しいのか謙虚なのかはっきりしろよ。パーティに入りたいって言ってたのにどうして単独行動よ。


「巨乳、お前はペット。単独行動はだめ」


「イリスはその呼び方で固定するつもりなのか……? いやだがその通りではある。せっかくきたんだ、少し休んでからでいいだろう。フラフィーもあんまり休めてないだろう?」


「うぇぇみなさんやさしすぎですう……」


 フラフィーはまた泣きだしそうになってしまった。友達が欲しいっていうか親切にされたことが無いって感じだなこれは。ずっと一人で生きてきて獣人だから差別もされて過ごして来たら距離置くのが普通か。


 この街では差別とか無いようだし、王都はもしかしたら腐っているんだろうか? でも王城の人たちは良い人ばっかりだったし、ココが特殊なのかもしれない。


 とにかくフラフィーの情緒不安定なのはもしかしたら空元気なのかもしれないし、少し優しくしてやるくらいは良いかもしれないな。


 しかし宿について問題が発生した。


「一部屋しか飽きがない……?」


「ええ、最近人が増えてましてありがたい話ではあるのですが」


 四人部屋が一つだけか。うん、どうしようねコレ。


 俺が迷っているのを確認して宿屋の主人は付け足した。


「ついでに他の宿屋も同じような状況だと思いますよ。むしろ空いてるだけ珍しいくらいです」


「別にいいじゃない。みんな一緒でも」


「私も、かまわない」


「み、みなさんに従います!」


「じゃあ借ります」


「お兄さん迷った振りしてたんじゃない!?」


 みんなの意見を聞いた瞬間食い気味に即答した俺に宿屋の主人がツッコミを入れる。うん、気に入ったよこの宿。


「キミヒトさん決意はやすぎません!? えと、私はその……」


「大丈夫、フラフィーには興味はないよ」


「なんでですか!?」


 もじもじとしているフラフィーだったが俺の発言にびっくりしたようだ。たしかにフラフィーはかわいいが自分でそのツッコミはどうなのよ。


「巨乳、キミヒトはロリコン。貧乳好き。だからお前に手を出す事はまず無い」


 うん、イリス。そんな情報を宿屋の主人の前で普通の声量で言うのはやめようね。すごい目で見られるから。


「ついでに言うと無暗に手を出す奴でもないわ。ちゃんと気遣ってくれるし。表面上は」


 うん、クロエもその通りだけどそれフォローとしてはどうなのかな。


「そ、そうなんですか」


 うん、引くよね。俺もこの二人の連係プレイに引き気味だわ。


「じゃあ鍵はこちらで。料金は前払いになっています。銀貨十枚頂きます」


「ありがとうございます」


 平静を装って鍵を受け取りその場を後にする。四人部屋で少々割高だが、ロリと同部屋は最高なのでトータルプラスだな。


 宿屋は食事処とくっついている所を選んだので、荷物を置いたらみんなで食事をすることにする。簡単な食事を注文している間にどのダンジョンに行こうか考えていると、クロエも同じ考えだったらしく俺に聞いてきた。


「ねえキミヒト、ダンジョン行くのは良いんだけどどこにするの?」


「そうだなぁ。あまり人が寄り付かなさそうなところで俺達がどんだけ出来るか確認したいな」


 俺たちの能力は周りに人がいると目立ちかねない。高火力魔法使い、優秀なヒーラー、敵の攻撃を文字通りすり抜けて攻撃する剣士と見る人が見れば明らかに変わったパーティだ。


 特にイリスの火力はどう考えてもおかしい。色んな魔法使いを見てきたであろう武器屋の親父を驚かせていたし、魔法の強弱を自在に操るのも見たことがない。


 王城で修行している時もあんな強力な魔法を使う現地の人はいなかった。勇者たちの中にはいたが、強弱の訓練をしていることは無かったしな。


「じゃあ、ここは?」


「ん、屑鉄のダンジョン? こんなところもあったのか」


 探索者ギルドからダンジョン一覧と場所についての説明を受けた。ダンジョンの場所の描かれた地図を購入して、どんなアイテムがドロップするとか、人気のダンジョン等も教えてもらっていたがここは気づかなかった。


 街のはじっこにぽつんと存在し、ぱっと見ただけでは本当にダンジョンなのか分からないサイズで小さく描かれていた。


「受付の人もここには触れていませんでしたね? 何か問題がある場所なんでしょうか?」


 みんなであれこれ話していると料理が運ばれてくる。俺達が屑鉄のダンジョンについて話しているのが気になったのか、給仕の女の子が話に入って来る。


「お姉ちゃんたち、そこはやめといたほうがいいよ」


「知ってるんですか?」


「うん。そこは本当に屑鉄しか取れないから今は誰も行ってないの。敵も無駄に強いのに経験値も少ないし、鉄とか金属が欲しいならこっちの鉱石ダンジョンがおすすめかな」


 それだけ言って女の子は次の給仕に向かって行った。


「じゃあ屑鉄に行くか」


「人の話聞いてました!?」


 俺がそう結論付けて皆に言うと女の子がすっ飛んできた。ツッコミするのが趣味なのだろうかここの人たちは。楽しい。


「あのですね、この場所は本当に敵が強いんです! 優秀な探索者パーティが調べて五階層まで行ったんですがそこまでずっと屑鉄しか落ちなくて探索を中止したんです! ダンジョンのドロップを調べる仕事も兼ねていたそうですがあまりの実入りの悪さに収支が合わないって事でギルドからも見放された場所ですよ! そんな所に行くのは物好きだけです! 絶対に辞めといた方が良いです! ダメ! 絶対!」


「そこまで言うなら行くしかないな」


「なんで!?」


「そんな熱烈に言われてしまったらどうしても確認したくなるからね。俺たちの事を心配してくれているのはとても嬉しい。ちょっと覗いたらすぐ帰るよ」


「ちょっとでも本当に危ないんですって! ほら、人も少なくて安全なダンジョンは他にもありますよ!? 薬草のダンジョンとか水のダンジョンとか! 初心者のみなさんも安心安全に楽しめるアトラクションのダンジョンだってあるんですよ!?」


「アトラクションのダンジョンって何!? いやそれはまた今度でいいよ。とにかく屑鉄に行く事は決まってしまった。俺の決意は固いぜお嬢ちゃん。無事に帰ってきたらまたここに来させてもらうよ」


「不吉な事言わないでください!」


 給仕の女の子は心配そうにしながらもやや怒った顔でもう知りません! と言って行ってしまった。


「キミヒトさん……。別に彼女の言う通りにしてもよかったのでは」


「いやなに、簡単な事だよ」


 真面目な顔をしてフラフィーを見つめると、フラフィーも居住まいを正して緊張した雰囲気を醸しだした。そして俺はこう言った。


「あの子の焦った顔可愛かったから押し続けただけ」


「最低のロリコン野郎だな!」


 フラフィーはうちのツッコミ要因として大切にしていきたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます