【読切】『文系HERO』

作者 穂紬きみ

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★★★ Excellent!!!

 題名は、誰の言葉であったかは忘れました。私が学生だった頃、図書室の片隅で読んだ本に出て来た言葉です。

 だからでしょうか。

「文系ヒーロー」

 この題名に惹かれたのは。

 ただ自分を登場人物に仮託するには、私の感受性は低すぎたのですが、だからこそ、この物語に入り込む事ができました。

 様々な感情が渦巻く物語です。醜い劣情もありますし、好きな人の心を守るために自分の心を閉ざす優しさもあります。

 ドロドロした愛憎劇と見る事もできますが、私は然程、ドロドロだとは思いませんでした。

 私が思ったのは、「愛に貴賤はない」という事でした。

 歳の離れた兄妹の話です。ただし兄弟愛の話ではないので、ドロドロしたものになっていると感じる点もあります。

 しかし二人を見ていると、私は紹介文の一言に突き当たってしまうのです。

 二人は冒頭から幸せであった訳ではなく、また結末でも幸せとは言い難いと、私は感じました。

 しかし、だからこそ、これから幸せになっていくのだ――そう確信する結末でした。

 自分を仮託できなくてよかったです。もし仮託していたら、私はどうにかなっていたかも知れません。