ひのかげノート ~叡泉女子大学文芸サークル活動日誌~

作者 村雲唯円

15

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★★★ Excellent!!!

往々にして、学園物は我々から懐かしさや思い出を引き出してくれる。

だがこの作品に至っては、どうだろうか。
こんな日常は自分の人生を思い出した時には見当たらなかった。見当たらなかったが、この作品はあまりにもノンファンタジー。

自分とは違う――しかし無さそうで何処かにはある優しい日常を、この作品は描いてくれている。

作品としては
「マイルドガールズラブストーリー」
とあるように、大学に通う女学生がメインの百合日常もの。

そしてこれは誤解無きように記載しておくと「自分の身に覚えが無いからこそ、彼女達が生きている」事を感じる事が出来る。

個性豊かな彼女達は、とてもありきたりなのだ。ありきたりで、気付いたら隣に居るようで、いつの間にか読者を作品の中に誘ってくれている。

ありきたりとは自然である事。自然である事とは、つまり心に沁みてきやすいという事。

気が付けば、ヒロインの一人 ミカゲ のように先を読む手が止まらなくなっていた。

文学を通して彼女達は交流する。感じる。考える。

そこには憧れと自己探求と、そしてちょっとした初恋のような心の疼き。

百合が好きでなくとも、この作品は好きなはず。
ぜひとも、ゆっくりと味わうように読んでみていただきたい。

★★★ Excellent!!!

 陰翳礼讃とは、谷崎潤一郎先生の代表的な随筆の一つです。曰く「日本人とは、影の面に惹かれる民族なのかもしれない」という話。なるほど、昔は日本家屋はどこか薄暗く、暮らしのそこかしこに影があった時代でしたね。

 本作品も、どこか影を引くような余韻がとても印象的です。それが、学生時代最後のモラトリアムである女子大生たちに、不思議としっくりくる。はしゃいでドタバタなラブコメじゃなく、どこかしっとり浸透してくるような、あるいは木陰の涼やかさのような…そんな物語を感じましたね。オススメです!