Auld lang syne. 3
「酷い雨だな」
店のドアが開く。
「いらっしゃいませ」
光が出迎えると、入ってきたのは陽一、弥生、神名の三人だった。
慌ててタオルを持っていく。
「あ、ありがとう……光さん」
「いえ。お久しぶりですね、今日はどうしたんですか先輩。大学の方は?」
三人にタオルを渡しながら、光は弥生に声をかけた。
みんな傘を持っていなかったらしく、かなり服が濡れていた。
「バス停から走ってきたんだけど、やっぱり濡れちゃったわね」
「弥生が走ろうって言うから。はぁ~、息、切れちゃった……」
「まあまあ、神名さん。光さん、悪いけど温かい紅茶をお願い」
陽一は頭を吹きながら、すまなそうに光に頼む。
カウンターに戻った光は晶、英美をたたき起こし、紅茶作りをさせた。
その隙にハーブティーを作る。
「やっとついたー。ふぅ」
ドアを開けてまた誰か入ってきた。
それは亜矢、美香、聖美、知見、祐介の五人だ。
「もうベタベタ。亜矢が無茶なことするからよ!」
美香はハンカチで顔を拭きながら怒鳴った。
聖美も知見も祐介も雨に濡れていた。
「やっぱ、傘一本に五人はきつかったか」
「当たり前だよ!」
怖い顔して亜矢を見る四人の目は冷たかった。
入口でにらっめこをしている五人に弥生は声をかけた。
「久しぶりね、みんな」
「あ、弥生先輩、神名さんもお久しぶりです」
五人はすぐ近くのテーブルに座っている弥生達三人に気付いた。
彼女らはその隣のテーブルに座った。
「ホント、みんなに会うのは何カ月ぶりかしらね。まるで同窓会」
「同窓会? 騒がしいと思ったらみんな来てたの?」
神名の言葉に釣られるようにして、奥の部屋から鈴と唯が出てきた。
鈴は紅美にトライフルを渡し、持って行かせた。
唯は少し呆れた顔でみんなを見て小さくため息を付く。
「ちゃんとお金払ってよ! うちは赤字で、火の車に放火するくらい大変なんだから……なんてね。まあ、紅茶は奢ってあげる、ケーキ代は自分達で払いなさい」
「らっきー、唯さん話せる! じゃ、せっかくみんな集まったからトライフル!」
亜矢は我先に、とばかりにそう言った。
それを聞いて鈴はイヤそうな顔をする。
「また? 最近なんでか知らないけど、トライフルの注文入るのよね。亜矢、お姉さん命令、それ以外にして」
「いーや、トライフル。あたいはあれが大好きなんだ。十人分くらいどーんと一つお願い! 二十歳のお・ネ・エ・サ・マ」
「失礼ね、まだ十九よ!」
「四捨五入すれば二十歳じゃん。あと一週間だろ」
鈴は『いーだ!』と言いながらプイッと奥の部屋へと入っていった。
美香は、後で亜矢が鈴に酷い目に遭うだろうなーと予想した。
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