第19話 同士と新しい武器の話


俺はアイリスと一緒に、長い廊下を歩いていると『エンジニア室』と書かれた場所にに着く。

近づくと、自動ドアが機械音を鳴らしながら、開かれる。


中に入れば、鉄が叩く音や、何かを回す音が響く。

そして、ど真ん中に、どういう仕組みなのか、部屋の中央に、柱になるようにマグマが流れていて、その近くに武器を叩く人が何人かいた。

しかし、部屋の温度は暑くはなく、むしろ涼しかった。不思議に思い、【解析】しながら周りを見渡すと、ひし形の青い光石から、魔力の冷気が漏れ出ていて、クーラー代わりになっていた。


「よし、お前ら休憩だ!!」

「「「おおおおおおおおおおおお!」」」


その合図に、一斉に返事をする。

声の方へと向くと、そこには一人の無精ひげを生やした青年が立っていた。

サンクと同い年ぐらいだろうか?ボサボサの黒髪に、汗が染み込んだタンクトップ、機械仕掛けのゴーグルをつけていた。

そのまま、他の人達は休憩行く中で、一人で作業場であろうと場所に戻り、機械をいじり始める。


「こんにちはー?」


黒杉は男に挨拶をする。

挨拶に気づき、数秒経ってからか工具を下ろして、こっちに歩いてくる。


「おう!いらっしゃい!!」


第一印象としては、元気な人で、年齢が若く見えるのに、少しおっさん臭さを感じられる。

作業服には、黒いシミが付いていた。油だろうか?

男は片手にスパナを持って、改めて挨拶をする。


「おう!最初に会った時は挨拶ができなかったけど、改めて自己紹介するわい!俺の名前はハグレ=メダルだ!よろしくな!」

「あ、あぁ、よろしく!俺は黒杉だ!」

「黒杉だな!」


俺とハグレは互いに握手をした。

ハグレの喋り方は訛りが無く、月ノ城が言っていた、例の転生者だろうか?


「そういや、黒杉は日本人なのか?」

「あ、あぁ、そうだな、日本人を知ってるってことは・・・」

「おうさ!今は日本人じゃないが、今は転生者として、ここで働いてるぜ!」


ハグレはニカッっと笑い、「見て行ってくれよ!」と言って、手を振って招く。

周りを見渡せば、乗り物や武器、そして、兵器。

どれも、現代的なものばかりだった。

ファンタジーとはいったい・・・。


「じゃあ、バイクとか、例のカプセルの技術とかは」

「おう、この世界ではスキルがあるからな!前の世界(日本)で、出来なかったことを色々試しているのさ!」


ハグレは、前の世界の技術と記憶を引き継いで、転生したそうだ。

色々、聞かせて持った。

転生前は、101歳まで生きていて、お仕事を辞める前では主に設計のお仕事してたのこと。

その腕は、最後まで衰えず、死ぬまで現役で活躍してたとか。

本来は、老いと共に、技術は衰える筈なのだが、精神と気合で何とかなると言っている。つまりリアル人外だ。

今はこの世界で、月ノ城さんに拾われて、一緒に基地を作って

今に至るらしい。


「いやー、若い肉体って良いもんだな!体が軽いわい!!今のうちに、青春を謳歌しとけ!」

「あ、はい」


しかし、バイクといい、基地まで作るとか、この人は何者なんだ・・・?

疑問に思いつつも、ハグレから言わない限りは追及はしないでおくことにした。なんせ、第2の人生なんだから、もし辛い事があれば、思い出させないほうが良いと思うから。


ハグレは、背中を向いたまま、黒杉に質問する。


「所で、黒杉たちは何をしに来たんだ?」

「ああ、実は・・・」


黒杉は、シルクとの修業で起きた事を話す。

その為に何らかの対策はしなければならないと言うこと、その為に新しいスキルを開花させるために、エンジニア室で【解析】を指せてほしいと言う。

それを聞いた、ハグレは快く引き受けてくれた。


「おう!成る程なぁ!じゃあなにしたらいいんだ?」

「スキルの熟練度を上げたいから、解析が出来そうな、武器とか、装備を色々見せてほしいんだ。」

「おうさ!任せておけ!」


そういうと、一つの黒い扉まであんなされた。

扉には、三つのくぼみが三角になるように並んでいて、その間に、細い溝が点になるように引かれていた。

ハグレが触れると、溝から、光の玉が生成され、魔法陣なようなものが広がっていき、扉はゆっくりと横に開く。


「俺の秘密の貯蔵庫だ」

「そんな、簡単に教えてもいいのか?」

「まぁ!秘密って言っても皆興味ないからな!」

「あ、あぁなるほどな」

「しかし、防犯が凄そうな、扉だな」

「え?普通に魔力を込めるだけで開くぞ?なんせ、こっちのほうがかっこいいからな」


見かけ倒しかーい!!!と叫ぶ気持ちを抑えて、心の中に突っ込んだ。

どうやら、ハグレは厨二病気質はあるみたいで、今思えば、月ノ城の車が、ハグレがデザインしたと思えば、納得いく。

しかし、魔力を込めるだけ、こんなにも、かっこいいとは・・・。


そうして、俺達は扉の中に入る。

そこには、見た事のない、部品、武器、防具、素材、ありとあらゆるもの揃っていた。


「これは、本で見た・・・」


フィルネル王国で、少しでも知識を蓄えようとして、鉱物の勉強も少し齧ったこともあった。

そして、本でしか見たことない、伝説の鉱石のミスリルとオリハルコンもあった。


「こんなものまであるのか・・・」

「すごいだろ?大体、疾嘉さんとウサさんがお土産感覚で持ってくるんだよ。ったく、こっちは苦労して、探しているってのに。さて、これが俺の自慢の一品だ」


ハグレはそう言って、棚の奥から布に包まれた物を取り出してくる。

巻かれた布をとると。鞘に収まれた刀がが出てくる。

鞘は黒く、刀を抜けば、刃は黒く鈍く、鎬が紅く光る。

これは素人の目を見ても分かる、かなりの業物だということが。


「か、かっこいい!」

「だろぉ!?」


そう言って、俺とハグレは強く握手をする。

やはり、ロマンを感じる同士は惹かれあうものだ。


「良かったら、黒杉にやるよ!」

「良いのか、こんな、業物をもらっても?それに、刀は月ノ城さんが専門だろ」

「良いんだよ!ウサさんは既に【妖刀】を持ってるし、今の俺じゃ、あの刀には勝てないよ。それに、同じロマンを感じる同士だろ?」


そういって、指で鼻を擦り、ヘヘッって少年っぽい笑い方をする。

ハグレ・・・最初に変な名前だと思ってしまって悪かったな・・・。

お前は最高の同士だよ!。


そのあと時間を掛けて、色々鑑定をする。

その中に、異様な雰囲気を醸し出してる。一つの黒い鉄箱を見つけた。

どうも、その箱の中がすごく気になって仕方ない。


「黒杉、それが気になるのか?」

「ああ、なんだか・・・」


ハグレは見せるかどうかを迷っていた。

何か理由でもあるのであろうか?


「ああ、これはなだな・・・ウサさんが唯一使えなかった武器なんだ」

「あの人が?」

「ああ、他の人が触っても、電撃を放って、拒否されるんだ。」


なるほど・・・だからハグレは難しい顔をしてたのか。


「ハグレが作ったのか?」

「まぁ、そうだな、たまたまできた物だよ」


ハグレは何か言おうとするが、何かが詰まるように話すのをやめた。


「見せてくれないか?」

「本当にいいんだな?」


ハグレはの顔つきが少し変わる。


「あ、ああ」


そう言って、ハグレは黒い鍵を取り出して、鍵穴に差し込んで回す。

カチャリと音がし、開けると、そこには短刀と鞘が入っていた。

短刀の黒く、柄も刃も黒く、黒に統一されているが、その形は美しかった。


「綺麗だ・・・」

「うん・・・」


アイリスも、その短刀の美しさに思わず頷く。

見ていると、心を休まるが、その中に、無機質な物の筈なのに、悲しみと切なさを寂しさを感じさせるようだった。

そう、まるで生きているみたいにだ。

気になったので、まずは鑑定する。


『????』

・???????

???????


「ん?バグか?」


ノイズ交じりに、画面には、はてな以外には、何も表示されない。

次は、分析を試す。


『?????』

・???????????


これもダメだ


じゃあ!解析!

解析を行って、そこで変化が起きる。

画面が急に、チカチカと点滅するように、先程とは、違う文字が表示された。


『?????』

・私を調べるとはとはいい度胸だな。


そう書かれてた。

その瞬間、画面が紅くなり、それ以降は解析ができなくなる。

急な、ホラー展開の事で、冷や汗を掻く黒杉。


パソコンの画面が青くなるのは見たことがあるが、赤になるとここまで怖いとは。

それに、なんだ?私を調べる?


ハグレはやっぱりかって感じで話しかける。


「コイツを調べても無駄だぞ。何も分からないんだ。鑑定しても表示されないんだ。」

「ふむ・・・」


俺は短刀を触ろうとするとバチッと紅いスパークが光る。


「・・・ッ!?」


思わずの事で、びっくりする。

こんにゃろ・・・ちょっとムカついてきたぞ!

そっちがその気なら、俺にだって考えがある。

俺は再び、解析をしようとするが、しかし解析画面が開かない。


「だから、無駄だって・・・」

「うるせぇうるせぇ!この武器は俺に喧嘩を売りやがったんだ!意地でも解析してやるわ!」


俺は魔力を消費させ解析をひたすら行う。

解析!!鑑定!!分析!!解析!!鑑定!!分析!!解析!!鑑定!!分析!!を繰り返す。


しばらく30分程、解析をつづけると、変化が起きる。

解析画面が開いのだ。

画面はこう書かれていた。


『????』

・ピコピコうっさいわ!ボケェ!!私を一人にさせろ!ばーか!ばーか!


短刀が文字を通じて、先程とは、違う幼稚的な返事くる。

というか、明らかにキャラ崩壊してるだろ。

そんな、くだらない返事が返ったところで、思わず、声を出してしまった。


「うるせぇ!お前は反抗期の娘か!!」


大声に気づいたのか、アイリスとハグレが戻ってくる。

どうやら、アイリスはハグレと一緒に何かしてたそうだ。


「どうしたんだ、黒杉の旦那?」

「ヨウイチ?」


急に旦那呼ばわりとかどうしたんだ、ハグレ。

アイリスも不思議そうに見ている。


「ああ、この短刀は反抗期の娘みたいにダダをこねるんだ」

「はい?」


ハグレがなんだこいつ、解析できなさ過ぎておかしくなったのか?って目で見ている。

やめろ、俺にその目は効く。

すると、ピロリンと音が鳴り、解析画面が強制的に開く。


『????』

・反抗期じゃないですー!貴方がしつこいからですー!


そうメッセージが送られてきたのだった。

くっそ!むかつくなあ・・・いや、ここは大人の対応でだな・・・。


そう思っていると、そのメッセージを見た二人は驚いていた。


「なんと、旦那が言ってたこと、本当ったのか」

「・・・この短刀は意思があるの?」



『????』

・何よ!別に意思を持ってもいいでしょ!好きで生まれたわけじゃないのに!


どうやら、短刀は怒っているのだろうか?

何故、怒っているのか聞いてみるか。


「まあ、しつこくしたのは悪かった。でもなんでそんなに怒っているんだ?」


メッセージが送られてきた。


『????』

・怒るに決まっているでしょう!こんな窮屈な黒い箱に10年間ずっと、閉じ込められてたのよ?

その前は、変な名前を付けようとしてたし、しかも名前がださい!

私にだってちゃんと名前はあるわよ!


ダサいと言われて、ハグレは吐血した。

傷ついているようだ。いやまあ、月ノ城の車のネーミングセンスがあれなら・・・。


「ブラック・ロータスⅢ・・・何故そんな事いうんだ・・・・」


うん、やっぱり、月ノ城の車のネーミングセンスはこの人に、間違いはないようだ。


『????』

・そんな名前は嫌!!!却下!出て行って!!


メッセージを見たハグレは、そのまま涙を流しながら倒れる。

まぁ、ブラック・ロータスⅢはなぁ・・・てか、ブラック・ロータスって・・・なんだよ、何か馴染みある名前だな、おい。


「じゃあ、お前の名前はなんだ?」


『????』

・ふ、ふん!教えるわけないじゃない!


黒い短刀はいじけて教えてくれないようだ。

こんにゃろ・・・呼んでほしいのか、ほしくないのか・・どっちなんだコイツは・・・。


「・・・ったく、わがままな奴だ」


『????』

・わがままでいいし!べーだっ!


そう言って、メッセージを送って解析画面が閉じる。


「困ったもんだ」

「ヨウイチ・・・」


アイリスは裾をひっぱり、見つめる。

その顔は、悲しい顔をしていた。

何故なんだろうか?


「なんだ?」

「あの子、寂しがってる・・・」


アイリスはそう言った。

その言葉は力強く、どこか、確信があったような目をしたいた。


「・・・何故、そう思うんだ?」

「私が、そうだったから・・・」


アイリスは、あの時の事を思い出しいた。

暗い部屋で、長い年月の間、閉じ込められていた。

記憶もなく、何年たったのか分からずに、一人でだ。

きっと、アイリスは、自分と短刀を重ね合わせたのだろう。

その答えが、今言った、『寂しい』と言う言葉。


「・・・ったく、しょうがないな。アイリスはそこにいてくれ」

「うん・・・」


アイリスは心配しそうに見つめて、言われた通りにその場で待つ。

心配はいらない、俺はいつも通りに自分が出来る事をやるだけだ。


黒杉は面倒くさそうに、頭をくしゃくしゃ掻く。

そのまま、短刀に近づき、触れようとすると。


───バチィ!!


案の定、触れると紅いスパーク起きて、拒んだ。

そして、見た事のある、拒絶。

それは、アイリスの時を同じだ。


『????』

・触らないでよ!

「うるせえ!俺は諦めが悪いんだよ・・・だから、駄々こねるな」


近づいて、再び触れる。

バチィと音が響く。


『????』

・無駄よ。


突き放すような、メッセージが送られてくる。

しかし、そんなの無視して、触れる。

先程よりも、強い紅い電撃が、黒杉を襲う。


「・・・っぐ!」


視界がぐらつき、よろめく。

その様子を後ろで見ていた、アイリスが叫ぶ。


「ヨウイチ!!」

「待て、アイリス嬢ちゃん」


アイリスはヨウイチに駆け寄ろうするが、ハグレに止められる。


「どうして・・・!」

「分からないのかい?とりあえず見てなって」


ハグレはそう言って、アイリスをその場に止める。

流石、同士だ。俺はハグレに向けて、親指を立てた。

そして、ハグレも察して、笑いながら親指を立てる。


「旦那は、男を見せてるんだ。ここは静かに見守ってよう」


俺は近づき、触れる。しかし短刀は拒む。


『????』

・だから、無駄だって…。


触れる。手を払われるように拒んだ。


『????』

・やめてよ。


触れる。


『????』

・やめてよ・・・。


触れる。


『????』

・やめてってば!!!


その瞬間、紅い閃光は先ほどよりも強くなり、吹き飛ばされる。

しかし、黒杉は立ち上がって触れようとする。


『????』

・もうやめてよ・・・。

「うっさいわ」


触れると拒まれる。


『????』

・もうやめて、貴方が死んじゃう・・・。

「うるせぇ!俺は意地でもお前に触れてやるわ!」


黒杉は触れるが吹き飛ばさる。

立ち上がっては、近づく。


『????』

・駄目だよ!やめて!お願いだから!


黒杉の手は赤く染まっていた。

しかし、黒杉は止まることはなかった。

触れると拒む。


『????』

・どうして・・・!そこまでするの!なんでよ!やめてよ!やめてってば!!お願い・・・やめて・・・。

「うるせぇ!!そこまで辛そうにして、何がやめてだよ!」


黒杉は一喝する。


「そこまで、辛そうにするなら俺と来いよ!!」


黒杉は触れようとする。


「強がってんじゃねぇよ!これが呪いなら、俺が振り払ってやる!」


触れようとすると、紅いスパークが黒杉を襲う。

もう片方の手で、拒む右腕を抑えつける。


「何が、無駄だ、やめてだ!そんなの知ったこっちゃねえよ。辛そうな奴がいて、簡単に見捨てる程、俺は”人”が出来ているわけじゃねえからな!」


我ながら、馬鹿なことしていると思う。だけど、これが、見ぬ振りしたほうが、合理的なら、俺は馬鹿だって良い。

なんせ、こいつは助けを求めているからな。


『????』

・やめて!!それ以上やると貴方が消えて死んじゃう!

「上等だこのやろう!!!俺は諦めねえ!!だからよ・・・お前もすぐに諦めてんじゃねぇよ!!神も仏も仏陀も、救ってくれないなら、俺がその呪いをぶち壊してやらあ!!」


その瞬間、黒杉の脳内に記憶が流れてくる。

記憶は短刀の記憶だろうか?


そこには、暗い暗い闇の中に一人の少女が佇んで、身体を震わせていた。

泣いてる。

なんで、泣いているんだ?

周りを見る、誰かが見下すような目や罵倒する声が聞こえてた。


そうか、やっぱり一人だったんだな。

俺は少女に近づいて、声を掛ける。


「なーに、泣いてるんだよ」


少女は泣いたまま、顔を見せずに話す。


「ひっく・・・私は化け物だって・・・皆に、皆に・・・」


そっか、こいつは・・・。


「顔を上げろ」

「でも・・・」

「いいから!」


そういうと少女は顔をあげる、整えられてて綺麗な顔だ。

真夏の日差しの強い青空のような深く青い瞳に、腰まで伸びた、カラスの羽のような、艶のある綺麗な黒髪。

そんな、少女の柔らかそうな頬を引っ張る。


「いひゃいいひゃい!!!?」

「ほら、そんな風に、ずっと泣いていると変な顔になっちゃうぞ」


うん、おかしな顔だ。

俺は引っ張るのをやめる。


「う、うぅー・・・」

「ほら、こっちをみろ」


俺は変顔を披露した。

皮肉にも変顔は得意分野でな、にらめっこでは負けたことないんだ。


少女はキョトンとした、顔で俺の顔を見る。

しばらくすると、ップと笑い始める。


「アハハハハ!!!変な顔ー!!」

「うっせ、うっせ!!」


少女はフフって笑い続ける。

うんうん、やっぱり笑った顔の方がいいよな


「やっと笑ったな」

「・・・おかげでね」


黒杉は目線を合わせるようにしゃがむ。

その状態で、少女の手を触り、見つめた。


「そういや、お前の名前なんだっけ?」

「私は、私ね!―――――――」


少女は笑って消えて行った。

良い名前じゃん。


「だから来いよ!!そんなところで、ずっと一人だと、つまらないだろ?そうだろう、なあ!黒姫ノ紅(くろひめのくれな)!」


その瞬間、パキンと音硬い鎖が折れた音が聞こえた気がした。


俺を気づけば、黒い短刀を手にして、倒れた。

そのまま、鑑定する。


『黒姫ノ紅』

・伝説級

闇の呪縛に開放され、真の姿に戻る。


黒い短刀の刃が紅く光った気がした。

同時に声が聞こえた。


『ばーか、無茶し過ぎよ。』

「(うっせ!俺は疲れたから寝る!)」


黒杉はそのまま、目覚めたばかりなのに、再び気絶した。


――――――『ふふ、ありがと。私の名前を呼んでくれて。』


確かにそう聞こえたのだった。



―――その次の日


俺は起きると、白い天井が見えた。

また、俺の部屋だ・・・。


てか、なんだ?めちゃくちゃ重いぞ?

取り合えず、片腕は動かす事できるな。


俺は布団を捲ると。

そこにはアイリスがいた。相変わらずの全裸だけど。

まあ、いつも通りだな。


さて問題は・・・。

左の壁側に、黒髪の和服を着た、少女が気持ちよさそうに寝ていた。

誰だよ・・・。


「おーい、どちら様ですかー・・・」


俺は二人を揺さぶって起こす。

先に起きたのはアイリスだった。


「ヨウイチ・・・・おはよう。」

「あ、ああ、おはよう。」


次に起きたのが黒髪の少女だった。


「んにゃ・・・ご主人様、起きたの?」


そう言って腕に抱き着く。

それに負けじとアイリスも腕にしがみつく

アイリス・・・対抗する所なのか?


「てか、君は誰?」

「誰って、もう忘れたの?」


そう言って、瞳が潤む。

すまん、黒髪の少女は流石に覚えていないぞ。


「私よ!黒姫ノ紅よ!!」

「はぁ!?」


いやいや、だって短刀じゃん、お前・・・。


「あ!信じてないな!じゃあ証拠見せてあげる!」


そう言って、少女は変化していく

そして、あの短剣の姿になったのだった。


「まじかよ・・・」


そう言った後に、黒姫ノ紅は人の姿に戻る。

そして再び腕に抱き着き頬ずりをする。

アイリスも負けじとしがみつく。


「ご主人様、これからよろしくね」


そんな、黒姫ノ紅は素敵な笑顔だった。

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